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第二十三話 クリスタルキーのありか

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 直太は、半吉の乗った見開きのページから、続きを読んでいく。
「えっと、確か、半吉が葉っぱと一緒にすべすべしたものに落下してきたあたり……ここだ」

『ぽとり。
 何かすべすべしたものの上に、半吉は葉っぱごと着地したのだった。

「うわっ!!」
 何かが、ぽとり、と、開いたページの上に落ちてくる。
 反射的に本をぶん投げそうになった直太だが、落ちてきたのがただの葉っぱだとわかり、ふうっと、胸をさすった。』

「え? オレ?」
 直太は目を丸くする。

 なんと、直太のことが本の登場人物として書かれている。
 話の続きは、突然本に落ちてきた半吉を直太がどうしようかと悩んでいる場面だった。
 行動だけでなく、直太が頭の中で考えたことまで全部、忠実に文章になっていた。

「てことは、オレがもし頭の中で変なコトを想像したら、それも物語になっちゃうってことか? やっべー、気をつけよ」
 この前の国語のテストが50点で、机の引き出しの奥の奥に丸めてつっこんで隠してることとか、席替えで隣になってから、蓮野さんのことがちょっと気になってるとか、考えないようにしないと。
 と、思いながら、半吉を潰さないようにページをめくって続きを読む。

『「てことは、オレがもし頭の中で変なコトを想像したら、それも物語になっちゃうってことか? やっべー、気をつけよ」
 この前の国語のテストが50点で、机の引き出しの奥の奥に丸めてつっこんで隠してることとか、席替えで隣になってから、蓮野さんのことがちょっと気になってるとか、考えないようにしないと。
 と、思いながら、半吉を潰さないようにページをめくって続きを読む。』

「うわ! さっき考えたことが文章になってる」

『「うわ! さっき考えたことが文章になってる」』

 つい口走った会話まできっちり、書き込まれていた。

(と、とりま、この辺までが今の話だから、もう二、三ページ先を見てみよう) 

 直太は極力何も考えないようにしながら数ページ先をちょっとめくり、半吉を潰さないように、顔を横に傾けて覗き込んだ。
 相変わらず、緑色のイモムシが這っているような文字が並ぶ。

「あれ? 読めない」
 横になった顔を元に戻して、半吉の乗ったページの文字を確かめる。

『(と、とりま、この辺までが今の話だから、もう二、三ページ先を見てみよう) 
 直太は極力何も考えないようにしながら数ページ先をちょっとめくり、半吉を潰さないように、顔を横に傾けて覗き込んだ。』

 同じように緑のイモムシが這ったような文字なのに、こちらは読めば意味が分かる。
 もう一度、弱った半吉を傷つけないように、数ページ先を開いて覗き込んでみる。
 やっぱり読めなかった。

「つまり、未来の話は読めないってことか」
―うう、潰される、ミョウ。

「あ、悪ぃ」
 考え込んでいるうちに、ついついページを開きすぎていた。
 直太は半吉の乗っているところにページを戻した。

―み、水。水に、飛び込まないと、だミョウ
「やばい、また半吉がうなされ始めた」

―水、、水に飛び込まない、と。

―聖なる、水が、必要だ、ミョウ。

―ぼーふーらーの楽園へ。

「ぼーふーらーって何だ? って、そうじゃなくてクリスタルキーだった。鍵、鍵っぽいものは……」

 そういや、今朝、母さんに、もしかしたら帰りが遅くなるかもしれないから、と家の合鍵を渡されたっけ。
 なんでも、スーパーとホームセンターとドラッグストアの特売日が重なって、店をはしごするんだとか。

「失くさないようにちゃんとランドセルの中にしまいなさいよ。絶対にポケットに入れないでね」と念を押され「わかったー」と生返事をしながらポケットに突っ込んだ。

 直太は、半吉の乗った本を左手に持ちかえて、右手で右ポケットを探った。
 今日もごちゃごちゃといろんなものが入っている。

 何でもポケットに入れる癖がある直太。
 和樹たちからも「お前のポケットは四次元ポケットか!」と、よく突っ込まれている。
 毎日小学校から帰る頃にはズボンの両ポケットはパンパンだ。

「今日もオレのポケットはカオスだな」
 ごそごそとまさぐって、指先の感覚を頼りに家の合鍵を引っ張りだすと、さっそく、どす黒い紫色のドアノブの鍵穴に差し込んでみた。
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