虫蟲アドベンチャー ～君の冒険物語～

第十九話 現実とフィクション

　本から顔を上げて、直太は首を傾げた。
「やっぱりこの岩山のくだり、なんか既視感が……」
　似たような光景を、直太はよく知っている気がした。

「あ、そうか。うちの小学校に似てるんだ」
　直太の小学校も黄色っぽい黄土色で、横が長い長方形の形をしている。その長方形の真ん中ににょきっと飛び出た部分があって、そこに丸い掛け時計が付いているのだ。

　半吉がムシムッシーと思ったのは、形からして掛け時計な気がする。
　そういえば春斗が、あのにょきっと飛び出た部分には封印された理科室があって、異様にでっかい夕日が校舎を照らす時だけ、封印が解かれて姿を現すとか言ってたような。
　この物語でも、ちょうどその部分が青白く光ってる。

「まさか！」
　直太は、小学校の方角に目を凝らした。
　すぐ近くにあるはずの小学校は、自由気ままに鬱蒼と伸び続ける鳥居公園の木々に阻まれてよく見えない。

「つか、あるわけないよな」
　これ、物語だから。
　フィクションだから。
　ついでに春斗のオカルト話も、信じるか信じないかはあなた次第の胡散臭い噂話だから。

「つか、うちの小学校って、ザ・学校！　みたいな形してるし、たぶん似たような形の小学校はいっぱいあるよな。読者にわかりやすいように、あえてそういう形の小学校にしてるのかも」

　きっとそうだなと、一人納得した直太は「続き続きっと」と、再び緑色のイモムシが這う文章に目を戻した。