上 下
17 / 60

第十三話 巨大コガネムッシー

しおりを挟む
 タマ様を探して半吉はブーンと羽音をさせながら一心不乱に飛んでいた。

 気が付けば神社のお社をカラフルにしたような、不思議な建物がいっぱい並んだ景色の上を飛んでいた。
 どの建物も超巨大だ。
 ヒトの棲む世界に着いたのだろうか。

 建物群は灰色の小川の両側にずらーっと並んでいる。
 灰色の小川は幅広になったり細くなったりしながら複雑に四方八方に、無数に入り組んで流れていた。
 小川の両端には、葉っぱのない、つるっとした灰色の木もたくさん生えていた。

「あの灰色の木は何の木だミョウ? みんな葉っぱがないから枯れてるのかミョウ?」
 カシでも、ナラでも、松や杉の木でもない灰色の幹は、節がなくすべすべで、一番上に真っ黒な蔦のようなものが木と木を結ぶように絡まってどこまでもつながって続いている。
 黒い蔓の上には、ずらりと鳥が止まっていた。

「なんか変な森だミョウ」
 灰色とはいえ、こんなにたくさん小川が流れているのに、青々と茂る樹木や緑の草花なんかはほとんど見当たらない。
 たまに灰色の木の根元でタンポポがぱやっと黄色い花をつけているくらいだ。

「不思議なんだミョウ」
 半吉は気になって、タンポポの生える灰色の木と小川に近づいてみた。
 すると驚くことに小川だと思っていたのは、硬い岩のような石のようなものだったのだ。
 灰色の木も同じような石のようなものでできている。

「こんなに長くて、すべすべの石、初めて見るんだミョウ」
 タンポポは灰色の石の小川と灰色の石の木の間の割れ目から生えていた。

「この灰色の木、獣臭いミョウ。ここは何かの獣の縄張りなのかミョウ」
 灰色の小川は小川で、つーん、と、嗅いだことのない目に染みる嫌な匂いが漂っている。
 半吉は息を止めた。

「どぐ(毒)のぼがわ(小川)がもじれないミョウ」

 ボォロロロロロ。

 突然、大きな地響きがし始めた。

「ごんどば(今度は)じじん(地震か)がミョウ?」

 地響きは凄まじい勢いで大きくなっていく。
 ブロロロロロロロ。

 どうやら、何かがこちらにやってくるようだ。
 イノシシかミョウ?
 いや違うミョウ、もっと大きな、クマかミョウ?
 いやいや、もっと大きい気がするミョウ。

 半吉が目に捉えたのは、ギラリと桃色に光る、ころりとしたフォルムの超超超超巨大コガネムッシーのような生き物だった。
 普通のコガネムッシーの百倍、いや千倍、いやもっともっと大きい。

 超超超超巨大コガネムッシーは、灰色の川を猛スピードで流れるようにこっちに走ってくる。
 森では『駿足の半吉』と異名を持ち(お師匠様がつけてくれた)自慢の長い脚でまあまあ長い距離を瞬間移動並みの速さで走り抜けることができる半吉だが、超超超超巨大コガネムッシーは、丸くて黒い四つの脚を転がして、目の回るスピードで爆走を続けている。

 しかも他には目もくれず、一直線に半吉の方へやって来るではないか!
 まずい! 絶対に半吉を食べるつもりだミョウ!!

「ぎゃわわわわわあ~。半吉なんか食べても腹の足しにならないミョウ」
 必死に飛んで逃げるが間に合わない。

(お師匠様、ごめんなさいだミョウ。半吉、死す、だミョウ)

 万事休すと頭を抱えた半吉が短い人生を振り返っている間に、ブロロロロローと、超超超超巨大コガネムッシーは、灰色のくさいおならを振りまきながら……去っていった。

「た、助かったのかミョウ?」
 ふう、と危機を脱した半吉。

「下は危ないんだミョウ」
 ぶわんと、空へ浮かび上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ニャーニャーニャー! 野良猫探検隊!

もう書かないって言ったよね?
児童書・童話
小さな男の子ケンちゃんは、野良猫図鑑を読んで小さな猫博士になった。 暮らしている児童養護施設から出ると、早速図鑑の野良猫を近所に探しに出かけた。 目標は野良猫100匹見つける事だ。 白猫、黒猫、三毛猫と順調にケンちゃんは見つけていく。 最後の目標はレアな野良猫のヒョウ柄猫と灰色猫を見つける事だ。 だって、ヒョウ柄と灰色猫は元々飼い猫だった猫だ。野良猫じゃなくて、本当は捨て猫だからだ。

僕だけの箱庭

田古みゆう
児童書・童話
箱庭の崩壊を防ぎ、正しく導くには…… 「あなた。ちょっと、そこのあなた」  室内に響いた先生の声に顔を上げると、僕を見ている先生の視線と僕の視線がぶつかった。  先生の視線を受けつつ、僕は自分の鼻先をさし、自身が呼ばれているのかをジェスチャーで確認する。僕のそのしぐさに、先生は大きく頷くと手招きをしてみせた。 「そう。あなた、あなたです。私に付いていらっしゃい」  先生に連れられてやってきた部屋。自分の名前と同じ呼び名で呼ばれているその部屋で、僕は箱庭の世話をすることになった。

ぼくと、猫のいたずら ―きゃっちみー・いふゆーにゃん!🐾―

蒼生光希
児童書・童話
大事なものを猫にとられちゃった!追いかけようとしたぼくに、とんでもないことがおきたにゃん!

アンデル選 ウソップ物語

ぴろりろ
児童書・童話
古今東西の有名な昔話・童話・寓話を現代風&ギャグタッチに改編してみました!予想できない展開・結末になるように心がけてます! ※「小説家になろう」「カクヨム」「エブリスタ」「マグネット」でも同時連載してます。

クマのおじさん

天仕事屋(てしごとや)
絵本
みくりが池にクマのおじさんが 釣りをしています。 そこを通りかかった動物達は 側に腰をかけて話し始めます。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

バケセンとぼくらの街の怪談

猫屋ちゃき
児童書・童話
小学4年のユーマのクラスに、病気で入院することになった担任の先生の代わりに新しい先生がやってきた。 その名も化野堅治(あだしの・けんじ)。 大きなクマみたいで、声も大きくて、ユーマは少し苦手。 でもみんなは、〝バケセン〟と呼んで慕っている。 前の担任を恋しがるユーマだったが、友達のレンと幼馴染のミーの三人で学校の怪談について調べたり噂を確かめたりするF・K(不思議・怖い)調査隊の活動をしていくうちに、バケセンと親しくなる。 霊感ゼロのバケセンは幽霊を見るための道具を自作してまで、怪奇現象に遭遇しようとしていたのだ。 「先生、オバケ……幽霊に会いたいんだよ」 これは、バケセンとぼくらの、怖い話をめぐる物語。

フラワーウォーズ ~もふもふなパートナーとともにラビリンスから抜け出せ!~

神所いぶき
児童書・童話
 自然が豊かな場所、花守市。そこでは、昔から度々行方不明事件が発生していた。だが、この花守市で行方不明になった人たちは、数日以内に無傷で戻ってくる。――行方不明になっている間の記憶を失った状態で。  花が好きという気持ちを抱えながら、それを隠して生きる少年『一色 カズキ』は、中学生になった日に花守市の行方不明事件に巻き込まれることになる。  見知らぬ場所に迷い込んだ後、突如現れたカイブツに襲われて絶体絶命の状態になった時、同級生である『二宮 ニナ』がカズキの前に現れてこう言った。「好きなものを認めてください」と。直後、カズキの体は炎に包まれる。そして、彼らの前にピンクの柴犬の姿をした花の精――『フラワースピリット』の『シバ』が現れた。  やがて、カズキは知る。いつの間にか迷い込んでしまった見知らぬ場所――『ラビリンス』から脱出するためには、学友、そしてフラワースピリットの力を借り、襲い掛かってくる『バグスピリット』の正体をあばくしかないと。  これは、行方不明事件の謎を追いながら、見失った『自分』を取り戻すために戦う少年たちの物語。

処理中です...