虫蟲アドベンチャー ~君の冒険物語~

箕面四季

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第八話 七色に輝く本 その1

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 何の変哲もない図書室のドアを開けた瞬間、自分が異世界にでもタイムスリップしたような気がして直太は固まった。

 やけにでっかい夕日が図書室の窓ごしにオレンジ色の光を投げかけている。
 そこはかとなく哀愁漂う光を受けて、小さな埃がキラキラと図書室全体に舞っていた。

「って、夕日ぃ?」

 さっきまで真っ昼間並みの明るさだったはず。
 今はセミも鳴きだす梅雨明けの初夏。
 日はだいぶ長くなっている。
 夕日が出るのは六時過ぎだったような。

(ま、まさかこれって、前に春斗が言ってたオカルト現象じゃ……)

『夕日が出る時間帯はタソガレ時って言ってだな、あっちとこっちの世界が繋がりやすいのだよ。で、オカルト現象に遭遇した人たちは、直前に不自然な夕日を目撃するとかしないとか』
 いやどっちだよ。じゃなくて。

「いやいやいやいや」
 引き攣った笑みを浮かべ「ないないない」と直太はもげそうなくらいブンブン首を振る。
 フツーに夕日の時刻だっただけだ。
 だってもうすぐ五時だし。
 五時って夕方だし。
 夕方っていや……夕日だし。

 チカッ、チカチカ。ジーッ。

「ぬわっ!?」
 いきなり直太の周りが点滅して、パチッと暗くなった。

「ひゃいっ」と変な声が出た。
 チカ

 周囲に明るさが戻る。
 恐る恐る頭上を見上げた直太は、ホッと胸をなでおろす。
 どうやら直太の真上を照らしていた蛍光灯が切れかかって点滅しただけのようだ。

「んだよ。びっくりさせんなって」
 ホッと胸をなでおろしたのも束の間、直太の頭にクエスチョンマークがピコンと飛び出した。

「……図書室の電気って、こんな古かったっけ?」

 これじゃまるで第二体育館裏にある桜野公民館の電気みたいだ。
 主にお年寄りの催しや習い事に使われる桜野公民館は、昭和とか平成の初めを思わせる(もちろん直太は昭和も平成初期も知らないが)黄ばんだ畳とか両端が黒ずんだ蛍光灯をそのまま使っていて、春斗と言わず、子どもたちの間では「出る」スポットとして有名だった。

 直太の真上を照らしているのは、まさに桜野公民館と同じ細長で端が黒ずんだ蛍光灯に見える。
 でも小学校の電気は全てLEDのはず。

「だから、その、あれだ、その……寿命間際の、LED電球なんだ」

 そうだ。そうに違いない。
 LEDだって寿命はある、よな。
 図書室の電気とかあんま取り換えなさそうだし、きっと寿命ギリギリまで使ってたんだ。
 エコ的なアレで。

「オレ、放課後に図書室来るとか初めてだしな。だからちょっと……いつもと違う感じがするんだ。うん。そうだ」
 いつも朝読の本は昼休みに和樹たちと借りるからな。
 うん、そうそう。

「きょ、教室も、午前中と午後でなんか雰囲気変わるもんな。学校ってそういうもんだよな。うん、そう」

 直太がこくこく自分の言葉に頷いていたら、今度はカチ、カチ、カチっと、時計の秒針の音が大きく耳に届いてきた。

 バッと顔をあげる。
 音の正体は、受付カウンターの後ろの壁にかかった丸時計。
 よし、大丈夫。あの秒針が跳ねる音で。

「は?」
 むむっと目をこする。

 何故か文字盤の数字が二重にも三重にも重なって、時間がまるで読み取れない。
 カチ、カチと回る秒針だけはやけに鮮やかで、だけど短針も長針もブレまくって見えるのだ。

 またぞくっと体に寒気が走って「と、とりま、早く本借りよっと」と、大きな独り言を呟きながら、直太はできるだけ周りを見ないように窓際の棚へ足早に向かった。

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