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第六話 桐山直太と鳥居公園 その3
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社の奥にもう一つ、松の葉色の小さな鳥居が立っていた。
その先にミニチュアの石のくだりの階段が続いている。
春斗に続いて石段を降りると、中二階のような、曖昧な高さのところに噴水広場があった。
「これが不可解な水音の正体。六角柱の噴水であーる」
春斗の説明のとおり、六角形の石の柱でできた噴水が、ザーーーとまあまあの勢いで水を流している。
「この噴水は、あえて鬼門の方角に設置しているという噂でね」
ふふふん。と、春斗が鼻息荒く説明する。
「陰陽五行では偶数は陰の性質、奇数は陽の性質があるとされているんだ。六角柱の六の数字を二つに分けると三と三の奇数になるだろ。つまり、六は陽の性質を二つ併せて陰の性質を作っていて、大変バランスがいいとされているんですな。そんでもって、風水では六は調和と安定という意味がある。噴水の水は生命の源であり浄化を意味するのだよ。この六角柱の噴水をあえて鬼門の方角に置くことによって、あっちとこっちの世界が交わるこの神社の安定と調和と浄化を行っているってわけなのだよ」
(……言ってる意味がわからん)
直太と和樹と祥太は顔を見合わせ、首を捻った。
「君らには難しいだろうなぁ、この手の話は」
偉そうに言いながら、春斗は噴水広場の奥の松の葉色の鳥居を潜る。
鳥居の先は、同じくミニチュアの石のくだり階段。
そこを下りきると、直太の小学校とは学区外の街につながっていた。
「なんか、迷路みたいなつくりだな」
和樹の感心の横で「オレ、ちょっと酔った」と祥太がうぇっと口元を抑える。
「この変てこな構造こそが、この神社があっちの世界とこっちの世界を行き来する鬼門である証拠なのだよ。ちなみに鬼門ってのは鬼だけじゃなく、人間にとって摩訶不思議に思えるクリチャー、あ、生き物の事な、が人間界に来るための門なんですわ」
この場所は、空間に歪みやねじれが生じていて、ヒトならざるモノの住処になっていたりもするとかなんとか、戻る途中、くどくど春斗は説明を続け、あっちへこっちへ話が脱線して、最初に潜り抜けた松の葉色の鳥居を潜る頃には、小学校の七不思議にまで話は変わっていた。
「うちの小学校のさ、校舎の真ん中の、丸時計がついてるにょきっと突き出た部分あるだろ? あそこには封印された理科室があって、異様にでっかい夕日が校舎を照らす時だけ、封印が解かれて姿を現すらしいんだな」
「んなわけあるか」
「うちの学校、七不思議出る程の歴史ないっしょ」
「そうそう。去年で創立十周年じゃん」
「わかってないなー、君たちは。学校の七不思議に創立は関係ないのだよ。その土地の持つ不思議な引力に怪というものは引き寄せられるのであってだな」
「つか話変わるけどさ、明日の朝読だりぃよな。せめてマンガも入れてくんないかなぁ。オレ、活字読むのマジで苦手なんだけど」
和樹が切実なため息を吐いた瞬間、「げっ! 忘れてた」と、直太はようやく明日の朝読の本を借りていなかったことに気がついた。
「そーいや、今日の昼休み、直太は宿題忘れて漢字ドリルやらされてたもんな」
祥太がニヤニヤする。
そうだった。
いつもなら朝読の前の日の昼休みは、この四人で連れ図書するのだが、今日はできなかった。
「オレ、家に小説マジでないんだけど、誰か貸してくんない?」
「オレら持ってないから連れ図書組みなんだろ」と和樹。
「オカルトブックオッケーならいくらでも貸せるんすけどねぇ」
「つか、五時まで図書室開いてるし、走れば間に合うんじゃね?」
祥太に言われて「それだ!」と、直太は叫ぶ。
帰りの会が終わったのが三時四十分くらいで、そっから帰り道に寄り道して鳥居公園の探検したってことは、今は四時半、いや四時四十分くらい?
「オレ、言ってくる!」
ダダっと駆け出した直太に「頑張れよー」「グッドラック」「行け、若人よ」と三人が手を振った。
その先にミニチュアの石のくだりの階段が続いている。
春斗に続いて石段を降りると、中二階のような、曖昧な高さのところに噴水広場があった。
「これが不可解な水音の正体。六角柱の噴水であーる」
春斗の説明のとおり、六角形の石の柱でできた噴水が、ザーーーとまあまあの勢いで水を流している。
「この噴水は、あえて鬼門の方角に設置しているという噂でね」
ふふふん。と、春斗が鼻息荒く説明する。
「陰陽五行では偶数は陰の性質、奇数は陽の性質があるとされているんだ。六角柱の六の数字を二つに分けると三と三の奇数になるだろ。つまり、六は陽の性質を二つ併せて陰の性質を作っていて、大変バランスがいいとされているんですな。そんでもって、風水では六は調和と安定という意味がある。噴水の水は生命の源であり浄化を意味するのだよ。この六角柱の噴水をあえて鬼門の方角に置くことによって、あっちとこっちの世界が交わるこの神社の安定と調和と浄化を行っているってわけなのだよ」
(……言ってる意味がわからん)
直太と和樹と祥太は顔を見合わせ、首を捻った。
「君らには難しいだろうなぁ、この手の話は」
偉そうに言いながら、春斗は噴水広場の奥の松の葉色の鳥居を潜る。
鳥居の先は、同じくミニチュアの石のくだり階段。
そこを下りきると、直太の小学校とは学区外の街につながっていた。
「なんか、迷路みたいなつくりだな」
和樹の感心の横で「オレ、ちょっと酔った」と祥太がうぇっと口元を抑える。
「この変てこな構造こそが、この神社があっちの世界とこっちの世界を行き来する鬼門である証拠なのだよ。ちなみに鬼門ってのは鬼だけじゃなく、人間にとって摩訶不思議に思えるクリチャー、あ、生き物の事な、が人間界に来るための門なんですわ」
この場所は、空間に歪みやねじれが生じていて、ヒトならざるモノの住処になっていたりもするとかなんとか、戻る途中、くどくど春斗は説明を続け、あっちへこっちへ話が脱線して、最初に潜り抜けた松の葉色の鳥居を潜る頃には、小学校の七不思議にまで話は変わっていた。
「うちの小学校のさ、校舎の真ん中の、丸時計がついてるにょきっと突き出た部分あるだろ? あそこには封印された理科室があって、異様にでっかい夕日が校舎を照らす時だけ、封印が解かれて姿を現すらしいんだな」
「んなわけあるか」
「うちの学校、七不思議出る程の歴史ないっしょ」
「そうそう。去年で創立十周年じゃん」
「わかってないなー、君たちは。学校の七不思議に創立は関係ないのだよ。その土地の持つ不思議な引力に怪というものは引き寄せられるのであってだな」
「つか話変わるけどさ、明日の朝読だりぃよな。せめてマンガも入れてくんないかなぁ。オレ、活字読むのマジで苦手なんだけど」
和樹が切実なため息を吐いた瞬間、「げっ! 忘れてた」と、直太はようやく明日の朝読の本を借りていなかったことに気がついた。
「そーいや、今日の昼休み、直太は宿題忘れて漢字ドリルやらされてたもんな」
祥太がニヤニヤする。
そうだった。
いつもなら朝読の前の日の昼休みは、この四人で連れ図書するのだが、今日はできなかった。
「オレ、家に小説マジでないんだけど、誰か貸してくんない?」
「オレら持ってないから連れ図書組みなんだろ」と和樹。
「オカルトブックオッケーならいくらでも貸せるんすけどねぇ」
「つか、五時まで図書室開いてるし、走れば間に合うんじゃね?」
祥太に言われて「それだ!」と、直太は叫ぶ。
帰りの会が終わったのが三時四十分くらいで、そっから帰り道に寄り道して鳥居公園の探検したってことは、今は四時半、いや四時四十分くらい?
「オレ、言ってくる!」
ダダっと駆け出した直太に「頑張れよー」「グッドラック」「行け、若人よ」と三人が手を振った。
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