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第三話 名カマ『カマタリ2』 その2
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『十分に距離を縮めたら、まずはカマとカマを合わせて、カイファンラと言うアル。これは我がカマ一族に伝わるカマソルジャーの礼節アルヨ』
(カイファンラ、だミョウ)
グリーンモンスターに気づかれないように、半吉はそっと心の中で唱えた。
礼節を終えたら次はいよいよ狩りだ。
『デカい相手を狩るには一撃必殺アルヨ。デカい相手は力も強い。仕留め損ねれば手痛いしっぺ返しをくらうアルからな。一撃必殺技として有効なのは、我が一族に伝わる秘儀『カマ鉄砲』アル。これは近くの葉や草のバネの力を利用して瞬発力を最大限まで高めて、ビヨンっと一気に相手まで到達し、ザクリと急所を一撃で仕留める技アル。コツは足のスパイクを草や葉の凹凸に引っかけてしっかりと固定し、ググっと力を溜めて、びょんっと一気に解き放つことネ。こうすることで獲物に強烈な一撃を放つことができるアル。この時、忘れてはならないのが』
(忘れてはならないのは……何だったかミョウ?)
忘れてはならないことを忘れるのは、半吉の癖だった。
うーんと考えても絶対に思い出せない。
忘れてはならないと言われれば言われるほど、何故か思い出せなくなるのだ。
(ま、いっか。もうやっちゃえだミョウ)
半吉は近くに生えていた草葉の中から、表面に白い毛のようなものがびっしり生えている濃い緑色の葉っぱを見つけ、そっと飛び移った。
この白い毛に足のスパイクをしっかりと引っかければ、ジャンプのときにすべらないはず。
ググっと力を込めて。
(今だミョウ!)
葉っぱごとビヨンっとグリーンモンスターに襲い掛かる。
「くらえ~、お師匠様直伝、カマ鉄砲だミョウ~!」
広げた両のカマを獲物の頭目掛けて振りかざした。
突然の不意打ちに、超特大グリーンモンスターはぴたりと固まって動けない。
なすすべナシ。
あとは、このカマタリ2をグサッと頭にさせば。
すかっ。
「ありゃ?」
半吉の両のカマは、グリーンモンスターに全然届かなかった。
(ど、どういうことだミョウ?)
「ハッ!」
忘れていたことを後になって思い出すのも、半吉の癖である。
『この時、忘れてはならないのが自分の腕のリーチを計算に入れておくことネ。我が一族は本気で腕を伸ばせば遠くからでも獲物にも届く長いリーチがあるアル。自分の腕の長さの最大値を知っていればこそ、遠く離れた場所から一発のジャンプで相手を仕留められるアルヨ。つまるところ、腕の伸びない半吉には向かない先方アルな。はっはっは』
「そうだったミョウ。半吉はお師匠様と違って腕が伸びないからカマ鉄砲はダメだったんだミョウ~」
振り子の原理で半吉のとまっている葉っぱの茎が、超特大グリーンモンスターとは反対の方向へぐいんっと引っ張られていく。
『ちなみに、グリーンモンスターを仕留め損ねた時は』と、頭の中のお師匠様が言っている。
そうだったミョウ。仕留め損ねた時のことも教えてもらったんだミョウ。ええっと、どうするんだったミョウ?
(早く思い出すんだミョウ)
あせあせしていたら超特大グリーンモンスターがおもむろに長細い頭を後ろに引っ張って「カア~」と、口を開いた。
半吉に狙いを定めている。
「な、なんかヤバイ気がするミョウ」
早く、早く思い出して……
「ペッ!!」
超特大グリーンモンスターが茶色い液体の玉を半吉に向かって吐き出した。ぶしゃっ、でろーんと、体にかかったのは、ねばねばの重たい液体。
「くさっ……ぎゃわわわ~」
悪臭を放つねばねば液体の重さで、身体が葉っぱから離れ真っ逆さまに地面に落ちていく。
背中の羽は、ねばねばがくっついて全然開かない。
『万が一、グリーンモンスターを仕留め損ねた時は素早く飛んで逃げるアル。グリーンモンスターの中には、稀に茶色いねばねばの液体を出すタイプがいるアルヨ。それをくらったが最後、ねばねばによって身体の自由を奪われ飛べないネ。特に、腹に十字の傷のあるグリーンモンスターには気を付けるアル。きゃつは私が唯一仕留め損ねたグリーンモンスターでな、きゃつの吐き出すねばねば玉は超絶ねばねばアル』
「思い出したミョウ~! コイツ、お師匠様の言ってたグリーンモンスターだったミョウ~。でももう遅いミョウ~」
下は大きな泥の沼。
ぼちゃん、と、手から滑り落ちたカマタリ2がブクブクと沼の底に沈んでいった。
次は半吉の番。
万事休す。ジ・エンド。
半吉がその半生を振り返り「短い人生だったミョウ」と諦めた時、ぶわんと身体が宙に浮いた。
(カイファンラ、だミョウ)
グリーンモンスターに気づかれないように、半吉はそっと心の中で唱えた。
礼節を終えたら次はいよいよ狩りだ。
『デカい相手を狩るには一撃必殺アルヨ。デカい相手は力も強い。仕留め損ねれば手痛いしっぺ返しをくらうアルからな。一撃必殺技として有効なのは、我が一族に伝わる秘儀『カマ鉄砲』アル。これは近くの葉や草のバネの力を利用して瞬発力を最大限まで高めて、ビヨンっと一気に相手まで到達し、ザクリと急所を一撃で仕留める技アル。コツは足のスパイクを草や葉の凹凸に引っかけてしっかりと固定し、ググっと力を溜めて、びょんっと一気に解き放つことネ。こうすることで獲物に強烈な一撃を放つことができるアル。この時、忘れてはならないのが』
(忘れてはならないのは……何だったかミョウ?)
忘れてはならないことを忘れるのは、半吉の癖だった。
うーんと考えても絶対に思い出せない。
忘れてはならないと言われれば言われるほど、何故か思い出せなくなるのだ。
(ま、いっか。もうやっちゃえだミョウ)
半吉は近くに生えていた草葉の中から、表面に白い毛のようなものがびっしり生えている濃い緑色の葉っぱを見つけ、そっと飛び移った。
この白い毛に足のスパイクをしっかりと引っかければ、ジャンプのときにすべらないはず。
ググっと力を込めて。
(今だミョウ!)
葉っぱごとビヨンっとグリーンモンスターに襲い掛かる。
「くらえ~、お師匠様直伝、カマ鉄砲だミョウ~!」
広げた両のカマを獲物の頭目掛けて振りかざした。
突然の不意打ちに、超特大グリーンモンスターはぴたりと固まって動けない。
なすすべナシ。
あとは、このカマタリ2をグサッと頭にさせば。
すかっ。
「ありゃ?」
半吉の両のカマは、グリーンモンスターに全然届かなかった。
(ど、どういうことだミョウ?)
「ハッ!」
忘れていたことを後になって思い出すのも、半吉の癖である。
『この時、忘れてはならないのが自分の腕のリーチを計算に入れておくことネ。我が一族は本気で腕を伸ばせば遠くからでも獲物にも届く長いリーチがあるアル。自分の腕の長さの最大値を知っていればこそ、遠く離れた場所から一発のジャンプで相手を仕留められるアルヨ。つまるところ、腕の伸びない半吉には向かない先方アルな。はっはっは』
「そうだったミョウ。半吉はお師匠様と違って腕が伸びないからカマ鉄砲はダメだったんだミョウ~」
振り子の原理で半吉のとまっている葉っぱの茎が、超特大グリーンモンスターとは反対の方向へぐいんっと引っ張られていく。
『ちなみに、グリーンモンスターを仕留め損ねた時は』と、頭の中のお師匠様が言っている。
そうだったミョウ。仕留め損ねた時のことも教えてもらったんだミョウ。ええっと、どうするんだったミョウ?
(早く思い出すんだミョウ)
あせあせしていたら超特大グリーンモンスターがおもむろに長細い頭を後ろに引っ張って「カア~」と、口を開いた。
半吉に狙いを定めている。
「な、なんかヤバイ気がするミョウ」
早く、早く思い出して……
「ペッ!!」
超特大グリーンモンスターが茶色い液体の玉を半吉に向かって吐き出した。ぶしゃっ、でろーんと、体にかかったのは、ねばねばの重たい液体。
「くさっ……ぎゃわわわ~」
悪臭を放つねばねば液体の重さで、身体が葉っぱから離れ真っ逆さまに地面に落ちていく。
背中の羽は、ねばねばがくっついて全然開かない。
『万が一、グリーンモンスターを仕留め損ねた時は素早く飛んで逃げるアル。グリーンモンスターの中には、稀に茶色いねばねばの液体を出すタイプがいるアルヨ。それをくらったが最後、ねばねばによって身体の自由を奪われ飛べないネ。特に、腹に十字の傷のあるグリーンモンスターには気を付けるアル。きゃつは私が唯一仕留め損ねたグリーンモンスターでな、きゃつの吐き出すねばねば玉は超絶ねばねばアル』
「思い出したミョウ~! コイツ、お師匠様の言ってたグリーンモンスターだったミョウ~。でももう遅いミョウ~」
下は大きな泥の沼。
ぼちゃん、と、手から滑り落ちたカマタリ2がブクブクと沼の底に沈んでいった。
次は半吉の番。
万事休す。ジ・エンド。
半吉がその半生を振り返り「短い人生だったミョウ」と諦めた時、ぶわんと身体が宙に浮いた。
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