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見習いほたるの初仕事
黒鉄器3号
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外の白いガーデンテーブルに、持ってきたものを全ておく。
目に映る360度のアマチャ畑のパノラマは、まるで天国の景色のようだった。細かな湿気を含んだ梅雨の季節の空気の中で、アマチャの花々が一面に、鮮やかに咲き誇っていた。
アキアカネさんは、No.252-13-Tのアマチャ瓶の蓋をぱかりと開いて、木のスプーンで茶葉をすくい、黒鉄器3号の中にさらさらと入れた。
「お水はどうするんですか? ここ、水道ないみたいですけど」
「大丈夫。ポットの中を見ててごらん」
蓋を取り外した黒鉄器3号の中身を覗き込む。ぽこぽこっと小さな水音が聞こえる。
「水が溜まっていってる!!」
信じられないことに、鉄器の底から水がぷくぷくと気泡を立てながら湧きだして、中を満たしていっている。
「このアマチャ専用ポットは、むし屋が管理している神授の森の洞窟で採掘された、特殊な鉱物でできているんだ。鉱物は洞窟内に染み出たクリスタル水を大量に内包している。アマチャの茶葉をポットに入れることで、化学反応が起こりクリスタル水があふれ出す仕組みなのさ。蓋をすれば、沸き始める」
アキアカネさんがポットに蓋をすると、ほどなくして、黒鉄器3号の内側から、ボコボコと、お湯が沸騰する音が聞こえ始めた。
「僕としたことが、カップを持ってきていなかったな。取ってくるから、座って待っていて」
「あ、はい」
一旦、ログハウスへ戻ったアキアカネさんの燃えるようなオレンジ色のフード付きロングジャケットを見送ったほたるは、ガーデンチェアに座り、ほうっとため息を吐いた。
目に映るアマチャ畑の花々が、極上のペルシャ絨毯のように、どこまでも広がっている。
しっとりとした空気の満ちる静かな世界。時折、優しい風が吹いて頬をなでていく。
ハンモックでお昼寝とかしたら、絶対気持ちいいだろうな。
こんな素敵な場所が、実在するなんて。
(でもここって、あたしの暮らす現実世界には、ないんだよね)
てことは、実在しないのかなぁと考えながら、ぼこぼこ、かんかん、シューと、黒鉄器3号が湯を沸かす音を聞く。
まったり、まったり。
いつまででも、こうしていられそう。
目に映る360度のアマチャ畑のパノラマは、まるで天国の景色のようだった。細かな湿気を含んだ梅雨の季節の空気の中で、アマチャの花々が一面に、鮮やかに咲き誇っていた。
アキアカネさんは、No.252-13-Tのアマチャ瓶の蓋をぱかりと開いて、木のスプーンで茶葉をすくい、黒鉄器3号の中にさらさらと入れた。
「お水はどうするんですか? ここ、水道ないみたいですけど」
「大丈夫。ポットの中を見ててごらん」
蓋を取り外した黒鉄器3号の中身を覗き込む。ぽこぽこっと小さな水音が聞こえる。
「水が溜まっていってる!!」
信じられないことに、鉄器の底から水がぷくぷくと気泡を立てながら湧きだして、中を満たしていっている。
「このアマチャ専用ポットは、むし屋が管理している神授の森の洞窟で採掘された、特殊な鉱物でできているんだ。鉱物は洞窟内に染み出たクリスタル水を大量に内包している。アマチャの茶葉をポットに入れることで、化学反応が起こりクリスタル水があふれ出す仕組みなのさ。蓋をすれば、沸き始める」
アキアカネさんがポットに蓋をすると、ほどなくして、黒鉄器3号の内側から、ボコボコと、お湯が沸騰する音が聞こえ始めた。
「僕としたことが、カップを持ってきていなかったな。取ってくるから、座って待っていて」
「あ、はい」
一旦、ログハウスへ戻ったアキアカネさんの燃えるようなオレンジ色のフード付きロングジャケットを見送ったほたるは、ガーデンチェアに座り、ほうっとため息を吐いた。
目に映るアマチャ畑の花々が、極上のペルシャ絨毯のように、どこまでも広がっている。
しっとりとした空気の満ちる静かな世界。時折、優しい風が吹いて頬をなでていく。
ハンモックでお昼寝とかしたら、絶対気持ちいいだろうな。
こんな素敵な場所が、実在するなんて。
(でもここって、あたしの暮らす現実世界には、ないんだよね)
てことは、実在しないのかなぁと考えながら、ぼこぼこ、かんかん、シューと、黒鉄器3号が湯を沸かす音を聞く。
まったり、まったり。
いつまででも、こうしていられそう。
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