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神明山の遊歩道

オセロ

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 小学4年生と大学1年生のオセロ勝負。
 ここは大学生のお姉さんとして、接戦に見せかけて最後にわざと負けて花を持たせてあげよう。とか、思っていたのに。

「またオレの勝ちぃ!!」
「くぅ~、また負けた~」

 3戦3敗。
 ほたるは、情けない事態に陥っていた。

「優太君、もうひと勝負!!」
「ええ~? まだやんの? ダメほたる弱すぎで、飽きてきたんだけど」

(ダメほたる?)
 いやいや、今は呼び名などどうでもいい!
 パチンと手を合わせて懇願。

「お願い、最後の勝負!!」
「しょうがねえなぁ」
 これでは、どっちが年上だかわからない。
 とにかく、1勝くらいしないと、女子大生としての威厳が損なわれてしまう。

 余裕しゃくしゃくの優太君は、中央のマス目に黒いコマを2つ並べ「ダメほたるは白でいいよ」と偉そうに言った。

「黒でも白でも同じでしょ?」
「知らねえの? AI対戦の結果から、オセロは後攻の白の方が圧倒的に有利と判明してるんだよ。だからハンデ」

(なんて、生意気な)

 これで負けたら、大変なことになるぞ。
 ほたるは気を引き締め、オセロ版に全集中する。

 ぱちん。といい音を立てて、先攻の優太君が黒いコマを置いた。

(えっと、一回目の対戦の時、ここに白を置いて負けたわけだから……)

 ここは一手目から慎重に、と、熟考するほたるに優太君がしゃべりかけてくる。

「なあ、ダメほたるの通ってた田舎の小学校って、どんなとこ?」
「ダメほたるって、失礼だぞ」

「細かいこと気にすんなって。んで、どんな小学校だった?」
「細かくないんですけど。どんなって、そうだなー。ひと学年に二クラスしかない小学校で、校舎も古くて……この辺の小学校に比べると、校庭がやたら広かったかな。でも遊具は鉄棒と、うんていくらいしかなくて、休み時間、あたしは友達と鉄棒してたなー」

 スカート周りとか。
 そんで、篤はサッカーをしていて。

『ほたる、今日日直なの覚えてる?』
 ぽんと、頭に置かれた篤の手の感触を思い出して、あの頃の小さなときめきが胸に灯る。

 まだ恋かどうかすら曖昧だった、淡いときめき。
 あれから、あたしはどんどん篤を好きになっていって……。

「学校の周りに畑とかあった?」
 優太君の声でハッと我に返る。
 せっかくフローライトのネックレスまで封印したのに、なんでこう、些細なことで篤を思い出してしまうんだろう。
 てゆーか、ネックレスを封印したら、逆に思い出す頻度が増したような。

「畑も田んぼもあるよー」
 おしゃべり三割、オセロ七割と、思考の振り分けを決めながら、ほたるは、ぱちん、と白いコマをマス目の一つに置いた。

 ぱちん、ぱちんと、お互いにコマを打って、白から黒へ、黒から白へと、マス目の色を変化させながら、おしゃべりは続く。
 
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