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神明山の遊歩道
キャラ変!?
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「くっはー。疲れたぁ。肩凝ったー」
首をグルグル回しながら「つか、ザマス、ザマスって、昭和アニメの金持ちかよ。おまけに偏見まみれの学力至上主義だしさー。どういう人生送るとあんな風になるのか謎だぜ」と優太君が吐き捨てた。
(大家さんがいなくなったと思ったら、今度は優太君が変!)
「あのー、優太君。さっきとキャラが」
「ま、この家に来ると神明三家の貰いもんのお菓子が食べられるし? うちのマンションの周りより自然が多くて散策楽しいから遊びに来てっけどさー。ザマスさま、マジうぜぇ」
「ザマスさま……」
「話くどいんだよなー。クソつまんねー神明三家の悪口と身内自慢しかしねーし。ま、勉強するって言ってりゃ機嫌いいから扱いやすいんだけどさ。あ、ちなみに塾で散歩するっつー話、嘘だから」
「……いろいろついていけてないんだけど、そうなの?」
「うちの進学塾、5階建てビルの3階の1室にあるんだぜ。他は別のテナントが入ってるのに、生徒がゾロゾロ廊下とか階段歩き回ってたら苦情来るわ」
「確かに」
「塾の方針でーとか言っときゃ、ザマスさま『あら、そうザマスの』って簡単に信じるからな。にっこり笑って、オレのフィールドワークを送り出してくれるって寸法」
「……さすが弁護士の息子。弁が立つというか、ずる賢いというか……。てゆーか、優太君。さっきとキャラが全然違うけど……大丈夫なんだよね?」
(心の病気的なやつとか)
「ああこれ、世の中を上手く渡るコツだぜ。なんだかんだ言ってオレはまだ小学生で、ザマスさまはオレの祖母だろ? 祖母と孫の関係じゃ、実質、ザマスさまの方が決定権があるわけよ。そんでもって、どんなに嫌いでウマが合わなくても、子どもの間は頼らなきゃなんないことも多い。どうせ一緒にいなきゃなんないなら、反発して締め付けが厳しくなってしたいことができなくなるより、表面的にザマスさまの望む賢ーい孫を演じつつ、自分の欲望を通す方がお得っしょ」
「な、なるほど」
にやり、と、つり目を細めて笑う優太君は、悪ガキだ。顔が悪ガキになっている。
普通より頭がいい分、悪ガキ度高めかも。
とりあえず、こっちの二重人格は故意だとわかって、ちょっと安心。
だけど、大家さんのアレは……
「ねえ、優太君。大家さん、ちょっと変じゃない? 時々、ザマスが取れて、人が変わったみたいに優しくなるよね」
透明な細い糸みたいなことは、とりあえず黙っておく。
「ああ」と、優太君は興味なさげに頷いた。
「最近、たまに、ああなるんだよな。ボケてきたのかねぇ」
「それ、ヤバいんじゃない? 病院で診てもらったほうがいいんじゃ」
「大丈夫っしょ。あの人、動悸がする気がするザマスとか、ちょっと風邪っぽい気がするザマスとか言って、毎日のように花岡医院に通ってるんだぜ。勤務医目当てにさ。毎日が健康診断なわけ」
「なら、大丈夫か……」
「それより心配なのは」
優太君が難しそうな顔になる。
「?」
「なんでもねー。なあ、ほたるってさー、漢字どう書くの?」
「ひらがなだけど」
「なーんだ、虫の蛍じゃないんだ。じゃあ、苗字の、みやまは?」
「なーんだって、失礼な。深山は、深い山って書いて深山だよ」
「おっ、そっちはミヤマクワガタとかミヤマカラスアゲハの深山じゃん! いい苗字だな」
「まあねー。よくわかんないけど」
激変した優太君は、よく喋る。
おしゃべりなところは遺伝?
椅子からぴょんっと飛び降りた優太君が、リビングの周りをウロウロし始めた。
「なんかねーかなぁ。そうだ! ほたるって将棋か、囲碁か、オセロできる? この家、それくらいしか遊ぶもんないんだよ」
「オセロならできるよ」
「よっしゃ。やろうぜ」
優太君がテレビ台の引き出しから、年季の入ったオセロをずりずり引っ張り出してきた。
「いいけど、あたし強いよー」
ふふん。と、ほたるは鼻を鳴らす。
実はオセロは、ほたるが唯一得意なゲームだ。
何を隠そう、あの賢い篤にだって勝ったことがある。
小学校低学年の時に。
「ふうん。じゃあお手並み拝見といきますか」
上から目線の優太君。
まあ、小学生だし、広い心で肩を貸してやろう。
「負けて泣いても知らないぞー」
ほたるは食べ終わったお皿をキッチンに片付け、テーブルにスペースを作った。
首をグルグル回しながら「つか、ザマス、ザマスって、昭和アニメの金持ちかよ。おまけに偏見まみれの学力至上主義だしさー。どういう人生送るとあんな風になるのか謎だぜ」と優太君が吐き捨てた。
(大家さんがいなくなったと思ったら、今度は優太君が変!)
「あのー、優太君。さっきとキャラが」
「ま、この家に来ると神明三家の貰いもんのお菓子が食べられるし? うちのマンションの周りより自然が多くて散策楽しいから遊びに来てっけどさー。ザマスさま、マジうぜぇ」
「ザマスさま……」
「話くどいんだよなー。クソつまんねー神明三家の悪口と身内自慢しかしねーし。ま、勉強するって言ってりゃ機嫌いいから扱いやすいんだけどさ。あ、ちなみに塾で散歩するっつー話、嘘だから」
「……いろいろついていけてないんだけど、そうなの?」
「うちの進学塾、5階建てビルの3階の1室にあるんだぜ。他は別のテナントが入ってるのに、生徒がゾロゾロ廊下とか階段歩き回ってたら苦情来るわ」
「確かに」
「塾の方針でーとか言っときゃ、ザマスさま『あら、そうザマスの』って簡単に信じるからな。にっこり笑って、オレのフィールドワークを送り出してくれるって寸法」
「……さすが弁護士の息子。弁が立つというか、ずる賢いというか……。てゆーか、優太君。さっきとキャラが全然違うけど……大丈夫なんだよね?」
(心の病気的なやつとか)
「ああこれ、世の中を上手く渡るコツだぜ。なんだかんだ言ってオレはまだ小学生で、ザマスさまはオレの祖母だろ? 祖母と孫の関係じゃ、実質、ザマスさまの方が決定権があるわけよ。そんでもって、どんなに嫌いでウマが合わなくても、子どもの間は頼らなきゃなんないことも多い。どうせ一緒にいなきゃなんないなら、反発して締め付けが厳しくなってしたいことができなくなるより、表面的にザマスさまの望む賢ーい孫を演じつつ、自分の欲望を通す方がお得っしょ」
「な、なるほど」
にやり、と、つり目を細めて笑う優太君は、悪ガキだ。顔が悪ガキになっている。
普通より頭がいい分、悪ガキ度高めかも。
とりあえず、こっちの二重人格は故意だとわかって、ちょっと安心。
だけど、大家さんのアレは……
「ねえ、優太君。大家さん、ちょっと変じゃない? 時々、ザマスが取れて、人が変わったみたいに優しくなるよね」
透明な細い糸みたいなことは、とりあえず黙っておく。
「ああ」と、優太君は興味なさげに頷いた。
「最近、たまに、ああなるんだよな。ボケてきたのかねぇ」
「それ、ヤバいんじゃない? 病院で診てもらったほうがいいんじゃ」
「大丈夫っしょ。あの人、動悸がする気がするザマスとか、ちょっと風邪っぽい気がするザマスとか言って、毎日のように花岡医院に通ってるんだぜ。勤務医目当てにさ。毎日が健康診断なわけ」
「なら、大丈夫か……」
「それより心配なのは」
優太君が難しそうな顔になる。
「?」
「なんでもねー。なあ、ほたるってさー、漢字どう書くの?」
「ひらがなだけど」
「なーんだ、虫の蛍じゃないんだ。じゃあ、苗字の、みやまは?」
「なーんだって、失礼な。深山は、深い山って書いて深山だよ」
「おっ、そっちはミヤマクワガタとかミヤマカラスアゲハの深山じゃん! いい苗字だな」
「まあねー。よくわかんないけど」
激変した優太君は、よく喋る。
おしゃべりなところは遺伝?
椅子からぴょんっと飛び降りた優太君が、リビングの周りをウロウロし始めた。
「なんかねーかなぁ。そうだ! ほたるって将棋か、囲碁か、オセロできる? この家、それくらいしか遊ぶもんないんだよ」
「オセロならできるよ」
「よっしゃ。やろうぜ」
優太君がテレビ台の引き出しから、年季の入ったオセロをずりずり引っ張り出してきた。
「いいけど、あたし強いよー」
ふふん。と、ほたるは鼻を鳴らす。
実はオセロは、ほたるが唯一得意なゲームだ。
何を隠そう、あの賢い篤にだって勝ったことがある。
小学校低学年の時に。
「ふうん。じゃあお手並み拝見といきますか」
上から目線の優太君。
まあ、小学生だし、広い心で肩を貸してやろう。
「負けて泣いても知らないぞー」
ほたるは食べ終わったお皿をキッチンに片付け、テーブルにスペースを作った。
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