45 / 69
むし屋
奇妙な神社とキラキラの虫
しおりを挟む
「ほえ~。本当にトンボだらけ」
手水舎の水が流れるところもトンボの顔、狛犬の代わりに二匹のトンボの石像、神社の鈴の上部にも金色のトンボがついている。
拝殿の中には黄金の玉に乗った黄金のトンボが鎮座していた。
「SNS映えしそう! こんなとこ、地元にあったなんて知らなかったなー。あ、これ、和歌かな?」
太い柱に貼られたセピア色の札の文章を、ほたるはそれっぽく読み上げる。
「秋津羽の~、姿の国に~跡垂るる~、神の守りや~、我が君のため~……あ!!!」
『アキツハノスガタノクニニアトタルルカミノマモリヤワガキミノタメ』
これってひいじいじのまじないだ! と、気づいた瞬間、ふいに異様な感じの風がざわざわと吹いて、神社の木々を揺らした。
「え」
ドキリとして周囲を見回し、首を捻る。
なんだろう。
違和感があるんだけど。
ブーーーン
考え込むほたるの耳元で羽音がして、何かが地面にポトリと落ちてきた。
「?」
そっと近寄ると小さな虫だった。
体が赤、青、緑にキラキラ輝いている。
妙にピカピカした虫。
「綺麗~。宝石みたい」
もっとよく見ようと近寄った途端、虫はブンとほたるから離れるように前へ飛んで、またちょっと先にポトリと降り立った。
そして動かなくなる。
「?」
ほたるがまたそうっと近づくと、虫はまた数メートル先へブンと飛んで着地し、止まった。ほたるが動かないと、何故か虫も動く気配を見せない。
またそうっと近づいた。
キラキラの虫は、ブンと飛んで少し先に着地する。
また近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度。ブン。もう一度。ブン。もう一度……
夢中で追い続け、さすがに腰が痛くなって、かがんでいた身体を伸ばしたら、錆色の煤竹で囲われた和モダンなお店が目に飛び込んできた。
高級料亭を思わせるようなしっくりと落ち着いた佇まい。
手水舎の水が流れるところもトンボの顔、狛犬の代わりに二匹のトンボの石像、神社の鈴の上部にも金色のトンボがついている。
拝殿の中には黄金の玉に乗った黄金のトンボが鎮座していた。
「SNS映えしそう! こんなとこ、地元にあったなんて知らなかったなー。あ、これ、和歌かな?」
太い柱に貼られたセピア色の札の文章を、ほたるはそれっぽく読み上げる。
「秋津羽の~、姿の国に~跡垂るる~、神の守りや~、我が君のため~……あ!!!」
『アキツハノスガタノクニニアトタルルカミノマモリヤワガキミノタメ』
これってひいじいじのまじないだ! と、気づいた瞬間、ふいに異様な感じの風がざわざわと吹いて、神社の木々を揺らした。
「え」
ドキリとして周囲を見回し、首を捻る。
なんだろう。
違和感があるんだけど。
ブーーーン
考え込むほたるの耳元で羽音がして、何かが地面にポトリと落ちてきた。
「?」
そっと近寄ると小さな虫だった。
体が赤、青、緑にキラキラ輝いている。
妙にピカピカした虫。
「綺麗~。宝石みたい」
もっとよく見ようと近寄った途端、虫はブンとほたるから離れるように前へ飛んで、またちょっと先にポトリと降り立った。
そして動かなくなる。
「?」
ほたるがまたそうっと近づくと、虫はまた数メートル先へブンと飛んで着地し、止まった。ほたるが動かないと、何故か虫も動く気配を見せない。
またそうっと近づいた。
キラキラの虫は、ブンと飛んで少し先に着地する。
また近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度近づく。ブンと飛んで着地。
もう一度。ブン。もう一度。ブン。もう一度……
夢中で追い続け、さすがに腰が痛くなって、かがんでいた身体を伸ばしたら、錆色の煤竹で囲われた和モダンなお店が目に飛び込んできた。
高級料亭を思わせるようなしっくりと落ち着いた佇まい。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
紅屋のフジコちゃん ― 鬼退治、始めました。 ―
木原あざみ
キャラ文芸
この世界で最も安定し、そして最も危険な職業--それが鬼狩り(特殊公務員)である。
……か、どうかは定かではありませんが、あたしこと藤子奈々は今春から鬼狩り見習いとして政府公認特A事務所「紅屋」で働くことになりました。
小さい頃から憧れていた「鬼狩り」になるため、誠心誠意がんばります! のはずだったのですが、その事務所にいたのは、癖のある上司ばかりで!? どうなる、あたし。みたいな話です。
お仕事小説&ラブコメ(最終的には)の予定でもあります。
第5回キャラ文芸大賞 奨励賞ありがとうございました。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる