ようこそ、むし屋へ  ~深山ほたるの初恋物語~

箕面四季

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ほたるの記憶 ~中学生編~

私も嫌な奴

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 翌日の昼休み、ももちゃんが開けてくれた調理室で、ほたるは紗良に篤が好きなことを伝えた。

「ウソついてごめん」
 おもいっきり頭を下げたほたるをすり抜けて、紗良は調理室の窓を開く。
 途端に生徒のころころした笑い声と冷たい風が入ってきて、紗良のストレートヘアを揺らす。

 無言の紗良。
 怒ってるよね。当たり前だよね。嫌われても仕方ないよね。

「紗良が篤のこと好きなのも本当は知ってた。なのに、わざと紗良の前で篤と仲がいいところを見せつけたりした。昨日は応援するって言ったけど、やっぱり無理。本当嫌な奴だと自分でも思う。だけど……ごめん」

 紗良がふうと、小さく息を吐く。

「あのね、ほたるちゃん。私も嫌な奴なの。私もクラスでの篤君の様子、わざとほたるちゃんに話してたの。放課後とか、ほたるちゃんがうちのクラスに来るタイミングで、あえて篤君に話しかけたりもした。それでね、これからもきっと、ううん、絶対すると思う」
「え」

「だって、ライバルを蹴落としたいって思うくらい、私も篤君のことが好きだから。ほたるちゃんも同じでしょ」
 紗良はいたずらっぽくウィンクをして「私たち、恋の三角関係だね。負けないぞ」と何故か嬉しそうに笑った。

 やっぱり、紗良はとてもいい子だ。
 大切な友達。
 だけど。

「あたしも負けない。いっぱい卑怯なことしてやる」とほたるも笑った。
 予鈴が鳴って、調理室の扉からももちゃんがひょっこり顔を覗かせた。

「おわった~?」
 うん、と二人は晴れやかな笑顔で頷きあったのだった。
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