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ほたるの記憶 ~小学生編~
修学旅行ナイト
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「でもさー、ほんっとに篤君すごいよね。有言実行? 生徒会長になって修学旅行の班割りを学年ごちゃ混ぜにしちゃうんだもん。ほたるっちは愛されてていいなぁ」
左隣の布団でももちゃんが言って、その向かいの布団で「ほたるちゃんと篤君って、つきあってるの?」と紗良が驚く。
「だから違うってば。ももちゃん、紗良本気にするじゃん!」
「もう照れちゃって~。いいなぁ、あたしも恋したいなぁ。食欲の秋、読書の秋、修学旅行の秋、そして恋の秋。女心と秋の空。恋したいよねえ、さなえっち」
「あ~、あたし彼氏いるから」
『ウソ!』
「あれ、言ってなかったっけ?」
「言ってないよっ、さなえっちのダーリンって誰? いつから?」
「大地、去年から」
「大地君って二組の?」
大地君は紗良のことが好きだと篤から聞いていたほたるはびっくり。
さなえちゃんと紗良を見比べる。
……似ても似つかない。
「大地君って、どんな人?」と、何も知らない紗良はのほほんと尋ねている。
「アイツとは幼馴染みなんだ。家族ぐるみでキャンプ行ったりしててさ、昔は甘えん坊の泣き虫で、弟的な位置づけだったんだけどね」
幼稚園の頃、篤が助けた泣き虫の男の子が大地君だったのか。
「なんていうか、大地があたし以外を好きになるのは許せないと思ったんだ。たとえそれがあたしの友達だったとしても、男でも女でも、誰であっても。だからあたしから告白して、大地にあたしの存在を認識させた」
「きゃっ、さなえっちったら、だ・い・た・ん」
茶化すももちゃんの顔面に、ぼふっとさなえちゃんが白い枕を投げた。
「このー」と、ももちゃんが投げ返して、修学旅行恒例枕投げ開始。
「やったなぁ~」
「それっ」と、ほたるも参戦。
「紗良っちにもえいっ」
ももちゃんが投げた真っ白な枕が、ばふんと紗良に命中。
うっと声を上げた紗良が「負けないぞ」と笑顔で投げた枕は、剛速球でももちゃんを直撃。
「ぐぇ。紗良っち、強……い」
「ごぉらっ、お前たちもか! 全く、女子はどこもかしこも枕投げで、男子はどこもかしこも脱走。寝ろ!」
堺先生がバンっと扉を開けて、バンっと閉めて去っていった。
『……』
「ふふっ」
布団に潜りながらみんなでひそひそ笑う。
笑い声はだんだん静まって、最初の寝息を立てたのは、ももちゃんだった。
次に紗良らしい上品な寝息が聞こえてきた。
「ほたる」と、さなえちゃんが小さく呼んだので「ん?」と小声で応える。
少しの間があって、さなえちゃんは、言った。
「あんたも後悔しないようにね」
「え」
「おやすみ」
……たぶん、篤のことだろうな、と思った。
ほたるは、紗良の布団に目を向けた。美少女紗良を好きな男子はいっぱいいる。
大地君が紗良になびいたように、いつか篤が紗良になびく日が来るかもしれない。
さなえちゃんの言葉は名言で、いつも心に突き刺さるな、と思っていた。
左隣の布団でももちゃんが言って、その向かいの布団で「ほたるちゃんと篤君って、つきあってるの?」と紗良が驚く。
「だから違うってば。ももちゃん、紗良本気にするじゃん!」
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「あ~、あたし彼氏いるから」
『ウソ!』
「あれ、言ってなかったっけ?」
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「大地君って二組の?」
大地君は紗良のことが好きだと篤から聞いていたほたるはびっくり。
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……似ても似つかない。
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幼稚園の頃、篤が助けた泣き虫の男の子が大地君だったのか。
「なんていうか、大地があたし以外を好きになるのは許せないと思ったんだ。たとえそれがあたしの友達だったとしても、男でも女でも、誰であっても。だからあたしから告白して、大地にあたしの存在を認識させた」
「きゃっ、さなえっちったら、だ・い・た・ん」
茶化すももちゃんの顔面に、ぼふっとさなえちゃんが白い枕を投げた。
「このー」と、ももちゃんが投げ返して、修学旅行恒例枕投げ開始。
「やったなぁ~」
「それっ」と、ほたるも参戦。
「紗良っちにもえいっ」
ももちゃんが投げた真っ白な枕が、ばふんと紗良に命中。
うっと声を上げた紗良が「負けないぞ」と笑顔で投げた枕は、剛速球でももちゃんを直撃。
「ぐぇ。紗良っち、強……い」
「ごぉらっ、お前たちもか! 全く、女子はどこもかしこも枕投げで、男子はどこもかしこも脱走。寝ろ!」
堺先生がバンっと扉を開けて、バンっと閉めて去っていった。
『……』
「ふふっ」
布団に潜りながらみんなでひそひそ笑う。
笑い声はだんだん静まって、最初の寝息を立てたのは、ももちゃんだった。
次に紗良らしい上品な寝息が聞こえてきた。
「ほたる」と、さなえちゃんが小さく呼んだので「ん?」と小声で応える。
少しの間があって、さなえちゃんは、言った。
「あんたも後悔しないようにね」
「え」
「おやすみ」
……たぶん、篤のことだろうな、と思った。
ほたるは、紗良の布団に目を向けた。美少女紗良を好きな男子はいっぱいいる。
大地君が紗良になびいたように、いつか篤が紗良になびく日が来るかもしれない。
さなえちゃんの言葉は名言で、いつも心に突き刺さるな、と思っていた。
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