73 / 84
【スピンオフ 秋山柚葉、家出する】
【漂う夢の中で ず~っと前からの約束】
しおりを挟む
ガタタン。
身体が揺れて、動物園のレストランのテーブルに座っていた。
向かいに座るお兄ちゃんが心配そうにこっちを見ている。
『子供が寒い時期にソフトクリーム食って、腹壊さないよな……』
『なんで? レストランの中あったかいよ』
『そうだけど』
『あ、あそこでカピバラがお風呂入ってる!』
ガラス窓の奥を指さそうとしたら『あぶねっ』と、慌ててお兄ちゃんが手首を掴む。そうだった。あたしソフトクリーム持ってたんだ。
『ソフトクリーム見ながら動物見るの難しいね。結ちゃんがレストラン楽しいけど大変って言ってたのはこれかー』
くくっ、とお兄ちゃんが笑う。
『柚葉が楽しそうでよかったよ』
お兄ちゃんが笑うとあたしもすっごく楽しい!
あのね、あのね。えっとね、お兄ちゃん。
あのね、日曜日がとってもとっても長かったんだよ。幼稚園のお迎えの時、お母さんに『明日は日曜日?』って、毎日聞いたんだよ。だけど、いつ聞いても『まだよ』って言われちゃうの。日曜日が全然来ないの。本当に楽しみだったの。
お兄ちゃんにいっぱい言いたいことがあるけど、ソフトクリームもある。真っ白いソフトクリームを舐めながら、あたしはお兄ちゃんに力を込めて言った。
『だって動物園、ず~~~~~~~~~~~っと前から約束してたもんね。やっと来れたね!』
そしたら、お兄ちゃんがびっくりした顔になった。どうしたのかな。
(あ、そうだった!)
慌ててソフトクリームを持っていない方の指で『しぃー』とする。レストランでは静かにしなきゃ。
『あ、ああ。そうだぞ、しぃーだぞ』
あたしの頭を撫でながら、お兄ちゃんが眩しそうに目を細める。たまーに、お兄ちゃんはこういう顔をする。最初にびっくりして、そのあとに眩しくなるのよね。
なんでかはわかんないけど、そういう時、お兄ちゃんはあたしの目をじぃっと見てくる。きっとお兄ちゃんは、あたしのことが大好きだからだな、って思うんだ。
身体が揺れて、動物園のレストランのテーブルに座っていた。
向かいに座るお兄ちゃんが心配そうにこっちを見ている。
『子供が寒い時期にソフトクリーム食って、腹壊さないよな……』
『なんで? レストランの中あったかいよ』
『そうだけど』
『あ、あそこでカピバラがお風呂入ってる!』
ガラス窓の奥を指さそうとしたら『あぶねっ』と、慌ててお兄ちゃんが手首を掴む。そうだった。あたしソフトクリーム持ってたんだ。
『ソフトクリーム見ながら動物見るの難しいね。結ちゃんがレストラン楽しいけど大変って言ってたのはこれかー』
くくっ、とお兄ちゃんが笑う。
『柚葉が楽しそうでよかったよ』
お兄ちゃんが笑うとあたしもすっごく楽しい!
あのね、あのね。えっとね、お兄ちゃん。
あのね、日曜日がとってもとっても長かったんだよ。幼稚園のお迎えの時、お母さんに『明日は日曜日?』って、毎日聞いたんだよ。だけど、いつ聞いても『まだよ』って言われちゃうの。日曜日が全然来ないの。本当に楽しみだったの。
お兄ちゃんにいっぱい言いたいことがあるけど、ソフトクリームもある。真っ白いソフトクリームを舐めながら、あたしはお兄ちゃんに力を込めて言った。
『だって動物園、ず~~~~~~~~~~~っと前から約束してたもんね。やっと来れたね!』
そしたら、お兄ちゃんがびっくりした顔になった。どうしたのかな。
(あ、そうだった!)
慌ててソフトクリームを持っていない方の指で『しぃー』とする。レストランでは静かにしなきゃ。
『あ、ああ。そうだぞ、しぃーだぞ』
あたしの頭を撫でながら、お兄ちゃんが眩しそうに目を細める。たまーに、お兄ちゃんはこういう顔をする。最初にびっくりして、そのあとに眩しくなるのよね。
なんでかはわかんないけど、そういう時、お兄ちゃんはあたしの目をじぃっと見てくる。きっとお兄ちゃんは、あたしのことが大好きだからだな、って思うんだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】雨上がり、後悔を抱く
私雨
ライト文芸
夏休みの最終週、海外から日本へ帰国した田仲雄己(たなか ゆうき)。彼は雨之島(あまのじま)という離島に住んでいる。
雄己を真っ先に出迎えてくれたのは彼の幼馴染、山口夏海(やまぐち なつみ)だった。彼女が確実におかしくなっていることに、誰も気づいていない。
雨之島では、とある迷信が昔から吹聴されている。それは、雨に濡れたら狂ってしまうということ。
『信じる』彼と『信じない』彼女――
果たして、誰が正しいのだろうか……?
これは、『しなかったこと』を後悔する人たちの切ない物語。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Bo★ccia!!―アィラビュー×コザィラビュー*
gaction9969
ライト文芸
ゴッドオブスポーツ=ボッチャ!!
ボッチャとはッ!! 白き的球を狙いて自らの手球を投擲し、相手よりも近づけた方が勝利を得るというッ!! 年齢人種性別、そして障害者/健常者の区別なく、この地球の重力を背負いし人間すべてに平等たる、完全なる球技なのであるッ!!
そしてこの物語はッ!! 人智を超えた究極競技「デフィニティボッチャ」に青春を捧げた、五人の青年のッ!! 愛と希望のヒューマンドラマであるッ!!
かあさん、東京は怖いところです。
木村
ライト文芸
桜川朱莉(さくらがわ あかり)は高校入学のために単身上京し、今まで一度も会ったことのないおじさん、五言時絶海(ごごんじ ぜっかい)の家に居候することになる。しかしそこで彼が五言時組の組長だったことや、桜川家は警察一族(影では桜川組と呼ばれるほどの武闘派揃い)と知る。
「知らないわよ、そんなの!」
東京を舞台に佐渡島出身の女子高生があれやこれやする青春コメディー。
【9】やりなおしの歌【完結】
ホズミロザスケ
ライト文芸
雑貨店で店長として働く木村は、ある日道案内した男性から、お礼として「黄色いフリージア」というバンドのライブチケットをもらう。
そのステージで、かつて思いを寄せていた同級生・金田(通称・ダダ)の姿を見つける。
終演後の楽屋で再会を果たすも、その後連絡を取り合うこともなく、それで終わりだと思っていた。しかし、突然、金田が勤務先に現れ……。
「いずれ、キミに繋がる物語」シリーズ9作目。(登場する人物が共通しています)。単品でも問題なく読んでいただけます。
※当作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる