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空蝉の声
セミの声
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家に帰って、黒モルモットをケージに移すためにおでかけ用バッグを開けた途端、ぴよんっと黒モルモットが僕の膝に乗ってきた。
キュキュと鳴いて、僕の手にずんぐりした頭をすりつけてくる。
こんなこと初めてだ。
「もしかして、慰めてくれてる?」
きゅ。と鳴いた。
『ナツ、よくやったわね。それでこそ私の飼い主よ。でもね、ナツ』
キュ、キュ、キュイ。
「そうだな。落ち込んでる暇はないよな」
僕は黒モルモットを膝に乗せたまま、AR仮想ディスプレイを起動させる。
『モルちゃんの家族を見つけてハッピーに。モルモットマッチングサイト アオハル』
「会えるかな、ギズモに」
言いながら、思っていた。
絶対に会える。
強調と断定。
さっそくアカウントを作って黒モルモットの写真を貼り付け、モルちゃんプロフィールの必要事項記入に取り掛かった。
『モルちゃんのお名前』
「そういえば、まだ決めてなかった」
僕は黒モルモットを見つめた。
『おいで』
あの日の染谷さんの声が聞こえた。
彼女は黒毛玉に話しかけている。
それは、頭に二つ飛び出た三角の耳がなければ、生き物かどうかわからないような何かだった。
「決めた」
仮想キーボードを叩く。
『ミミ』と打ち込んだ。
キュイン。
『あら、いいじゃない』と、ミミが鳴いた時、僕の耳にジュワジュワと夜に鳴くセミの声が届いたのだった。
完
キュキュと鳴いて、僕の手にずんぐりした頭をすりつけてくる。
こんなこと初めてだ。
「もしかして、慰めてくれてる?」
きゅ。と鳴いた。
『ナツ、よくやったわね。それでこそ私の飼い主よ。でもね、ナツ』
キュ、キュ、キュイ。
「そうだな。落ち込んでる暇はないよな」
僕は黒モルモットを膝に乗せたまま、AR仮想ディスプレイを起動させる。
『モルちゃんの家族を見つけてハッピーに。モルモットマッチングサイト アオハル』
「会えるかな、ギズモに」
言いながら、思っていた。
絶対に会える。
強調と断定。
さっそくアカウントを作って黒モルモットの写真を貼り付け、モルちゃんプロフィールの必要事項記入に取り掛かった。
『モルちゃんのお名前』
「そういえば、まだ決めてなかった」
僕は黒モルモットを見つめた。
『おいで』
あの日の染谷さんの声が聞こえた。
彼女は黒毛玉に話しかけている。
それは、頭に二つ飛び出た三角の耳がなければ、生き物かどうかわからないような何かだった。
「決めた」
仮想キーボードを叩く。
『ミミ』と打ち込んだ。
キュイン。
『あら、いいじゃない』と、ミミが鳴いた時、僕の耳にジュワジュワと夜に鳴くセミの声が届いたのだった。
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