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空蝉の声
嬉しい言葉
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「つきあって」と彼女が言った。
初めてこのセリフを心底嬉しいと思った。
泣きたいくらい染谷さんから聞きたかった言葉で、僕が言いたかった言葉だった。
「ありがとう」と微笑んだ。
それから、僕は言った。
「残念だけど、僕はアセクシュアルなんだ。恋愛感情欠落男子。もし誤解させてしまったのなら……」
――ごめん。
凛々しくもとろりとした目が、驚きに見開かれている。
「そ、か。そうだったんだね」
染谷さんが同情して、共感して、納得するには十分な理由だった。
「そっか、そっか」と呟く染谷さんの残念そうな表情には、安堵が滲んでいた。
弱かった光がほんの少しだけ盛り返している。
僕は、染谷さんに聞いた。
「あのさ、これからも友人として、今まで通り接してくれるかな」
いつも告白後に言われた言葉だった。
彼女たちもこんな気持ちだったのだろうか。
少しの希望とせつなさが、さざ波のように、打ち寄せては引いてを繰り返す。
染谷さんは「もちろんだよ」と微笑んだ。
嬉しいのに、胸がぎゅっと痛い。
「ありがとう。私、友達がいないからすごく嬉しいよ」
言葉通りとても嬉しそうに笑った。
花開くような笑顔にドキリとして、自分からチャンスを捨てた後悔が怒涛のように押し寄せてきた。
ちくしょー。
だからどさくさに紛れて言ってやる。
「僕は染谷さんのことが大好きだよ……もちろん友人として」
「私も」と、染谷さんは晴れやかに笑った。
初めてこのセリフを心底嬉しいと思った。
泣きたいくらい染谷さんから聞きたかった言葉で、僕が言いたかった言葉だった。
「ありがとう」と微笑んだ。
それから、僕は言った。
「残念だけど、僕はアセクシュアルなんだ。恋愛感情欠落男子。もし誤解させてしまったのなら……」
――ごめん。
凛々しくもとろりとした目が、驚きに見開かれている。
「そ、か。そうだったんだね」
染谷さんが同情して、共感して、納得するには十分な理由だった。
「そっか、そっか」と呟く染谷さんの残念そうな表情には、安堵が滲んでいた。
弱かった光がほんの少しだけ盛り返している。
僕は、染谷さんに聞いた。
「あのさ、これからも友人として、今まで通り接してくれるかな」
いつも告白後に言われた言葉だった。
彼女たちもこんな気持ちだったのだろうか。
少しの希望とせつなさが、さざ波のように、打ち寄せては引いてを繰り返す。
染谷さんは「もちろんだよ」と微笑んだ。
嬉しいのに、胸がぎゅっと痛い。
「ありがとう。私、友達がいないからすごく嬉しいよ」
言葉通りとても嬉しそうに笑った。
花開くような笑顔にドキリとして、自分からチャンスを捨てた後悔が怒涛のように押し寄せてきた。
ちくしょー。
だからどさくさに紛れて言ってやる。
「僕は染谷さんのことが大好きだよ……もちろん友人として」
「私も」と、染谷さんは晴れやかに笑った。
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