タチバナ

箕面四季

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空蝉の声

堂々巡り

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 黒モルモットは一向に売れなかった。

 せっかく入り口間際にあるというのに、ペットコーナーに来る客は、まるでケージごと見えていないかのように素通りしていく。
 時折、値段の安さに立ち止まる人もいたが、中のモルモットをしばらく眺め、残念そうな顔で去っていく。

 あの黒いモルモットは賢い目をしているのに、何がいけないのか。
 どうして買い手がつかないのか。
 不思議すぎて気になった。

 調べてみると、ペットショップのペットは大人になると価値が下がることがわかった。
 あのモルモットは大人だったのか。
 どうりで他のモルモットより大きいはずだ。

 そういえば小さなモルモットのケージは値段と一緒に出生日が書かれていた。
 しかし黒モルモットにはそれがなかった。
 あえて書いていないのだろう。

 大人になった動物は価値が下がる。
 それでも買い手のつかなかった小動物は殺処分される場合があるらしい。

 僕が買うか。いや、それはやはり無理だ。
 愛情不足で殺しかねない。
 それでは殺処分と同じだ。

 黒モルモットについても堂々巡りだった。
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