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空蝉の声
新しいスタッフ
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水曜日の夕方、僕はいつものようにペットコーナーの奥にある昆虫コーナーに向かおうとして、誰かに話しかけられた気がした。
振り返ってみると僕と同じくらいの二十代と思しき女性スタッフが小動物用のケージの前で首をかしげていた。
「どうして君の魅力にみんな気づかないんだろう」
なんだ、動物に話しかけていたのか。
納得したあと、ふと興味を惹かれた。
女性スタッフのつぶやきから、どうやらケージの中にいるのは売れ残っている動物のようだ。
あのケージは犬、ネコではない。
小動物。
小動物と言えば、ウサギやハムスターなど見た目の愛らしさがウリのはず。
そんな中で売れ残るというのは、一体どんな生き物なのか。
「おいで」
ケージの扉を開けながら女性スタッフが優しく呼びかけている。
慈しむように。愛おしそうに。
彼女はこれまで見たことのないスタッフだった。
新卒入社にしては時期がズレている。中途採用? アルバイト? もしくはホームセンターの違うコーナーから移動になったのか。
一つの事象に様々な憶測や仮定をしてしまうのは、研究職の思考の癖だ。
いったん気になりだすと、あれはどうだろう、いやこっちだろうかと、とことん気になる。
彼女が慣れた手つきで取り出したのは、真っ黒い毛玉だった。
小さなブラシを手に取って、その毛玉にブラッシングを始めた。
それは真っ黒くろすけを二個並べたようなずんぐりした生き物だった。
頭に二つ飛び出た三角の耳がなければ生き物かどうかわからないような何かだった。
なるほど売れ残りそうだと納得し、僕の中の好奇心が一区切りついて、昆虫コーナーに気持ちが向いた時だった。
振り返ってみると僕と同じくらいの二十代と思しき女性スタッフが小動物用のケージの前で首をかしげていた。
「どうして君の魅力にみんな気づかないんだろう」
なんだ、動物に話しかけていたのか。
納得したあと、ふと興味を惹かれた。
女性スタッフのつぶやきから、どうやらケージの中にいるのは売れ残っている動物のようだ。
あのケージは犬、ネコではない。
小動物。
小動物と言えば、ウサギやハムスターなど見た目の愛らしさがウリのはず。
そんな中で売れ残るというのは、一体どんな生き物なのか。
「おいで」
ケージの扉を開けながら女性スタッフが優しく呼びかけている。
慈しむように。愛おしそうに。
彼女はこれまで見たことのないスタッフだった。
新卒入社にしては時期がズレている。中途採用? アルバイト? もしくはホームセンターの違うコーナーから移動になったのか。
一つの事象に様々な憶測や仮定をしてしまうのは、研究職の思考の癖だ。
いったん気になりだすと、あれはどうだろう、いやこっちだろうかと、とことん気になる。
彼女が慣れた手つきで取り出したのは、真っ黒い毛玉だった。
小さなブラシを手に取って、その毛玉にブラッシングを始めた。
それは真っ黒くろすけを二個並べたようなずんぐりした生き物だった。
頭に二つ飛び出た三角の耳がなければ生き物かどうかわからないような何かだった。
なるほど売れ残りそうだと納得し、僕の中の好奇心が一区切りついて、昆虫コーナーに気持ちが向いた時だった。
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