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決断

　春ちゃんが行くと言った時、私は、もうタイムリミットなのだと悟った。

　それでも、何も起きないかもしれないという淡い期待を捨てきれなかった。
　不安で不安で仕事に行けるような状態じゃなかった。
　ギズモを抱きながら、春ちゃんを待ち続けた。

　結局、悪い予感は的中していた。

　べろんべろんに酔っぱらった春ちゃんに「あたしだって幸せになりたい」と言われたとき、私は、自分が最低なことをしていたんだと悟った。

　優しい春ちゃんがずっと別れを切り出せなかったのは、私のせいだ。

　これまでつきあってきた女の子たちもそうだった。
　決定的な何かがあるわけではないし、たぶん私のことを嫌いでもない。
　けれど、時が経つにつれて、この人は生物としての正しい恋愛相手ではないと気づくのだ。
　私がいつも惹かれる女の子は、男女のどちらとも恋愛出来るタイプの子たちだった。

　別れたい。でも理由が理由なだけに私には伝えにくい。
　だけど出産には期限もある。それに相手だって見つけなければならない。

　彼女たちはみんなそうやって悩んで、絞り出すように「ごめんなさい、子どもが欲しいの」と泣いて、離れていった。


「あたしだって幸せになりたい」と言わせてしまうくらい、私は春ちゃんを苦しめていたのだと思った。
　自分の欲望のためだけにあと少し、もう少しと、関係を引き延ばし続けてきた自分の行為がどれほど春ちゃんを苦しめていたのか、やっと理解したのだ。

　これ以上、春ちゃんを苦しめないように、春ちゃんの前からきれいさっぱりいなくなろう。

　酔っぱらってお風呂にも入らず眠ってしまった春ちゃんを見ながら決意した。
　本当にこれが最後だからと、サンタクロースと神様に許しを乞いながら、朝まで春ちゃんの隣にいた。

　やっとの思いで、家を出た。

……なのにできなくて。