35 / 83
モルモットマッチングサイト
ミミとお姉さん
しおりを挟む
ミミが最初に聞いたヒトの言葉は「この子は売れ残る」だった。
ミミはホームセンターの中にあるペットコーナーの商品だった。
自分がモルモットの中のイングリッシュという、短毛で値段の安い品種であることや、イングリッシュの中でも真っ黒で華やかさに欠けるため売れ残りやすいこと、1年経っても売れ残っていたら殺処分になることなどをペットコーナーの飼育スタッフたちの日々の会話から理解した。
飼育スタッフたちの話どおり、巻き毛や長い毛を持つモルモットたちは次々と売れていき、空になったケージに新たな赤ちゃんモルが補充されていく中、ミミだけは空気のように素通りされ続けていた。
省スペースで飼いやすいペットとしてイヌネコに変わり人気が出ているモルモットの中で、ミミは落ちこぼれ商品だった。
季節が一巡りして、もうすぐペットコーナーでの生活が1年経つ頃、ミミの価値は、とうとう他のモルモットたちの半分になった。
それでも一向に売れる気配がない。
殺処分になるのかな、と、なんとなく諦めていた。
「どうして君の魅力にみんな気づかないんだろう」
ミミのケージの前で首を傾げたのは、今まで見たことのない飼育スタッフのお姉さんだった。
お姉さんは、ミミを慣れた手つきでケージから取り出すと丁寧にブラッシングを始めた。
「私が連れて帰れたらいいのに」
このペットコーナーでは、売れ残ったペットを飼育スタッフやその家族が購入することを禁じていた。
その昔、ここで売れ残ったペットを新人の従業員に無理やり購入させて売り上げをあげていたことが発覚して、メディアにも取り上げられる大問題になったためだという。
「まあ、私には協力してくれる家族も親しい友達もいないんだけどね」
お姉さんは「私も君と同じ天涯孤独なんだ」と笑って「絶対に君の家族をみつけてあげるからね」とミミを撫でた。
有言実行。
さっそくお姉さんは目立つ位置にミミのケージを移動させたり「賢く人なつっこい子です」とカラフルなポップをケージに貼ったりして、ミミが人目につくように工夫した。
それでも効果がなくて、最終手段とばかりにお手製のビラをたっくさん作って、ペットコーナーの前で「家族になっていただける方を探しています。よろしくお願いします」と配り始めた。
ミミはホームセンターの中にあるペットコーナーの商品だった。
自分がモルモットの中のイングリッシュという、短毛で値段の安い品種であることや、イングリッシュの中でも真っ黒で華やかさに欠けるため売れ残りやすいこと、1年経っても売れ残っていたら殺処分になることなどをペットコーナーの飼育スタッフたちの日々の会話から理解した。
飼育スタッフたちの話どおり、巻き毛や長い毛を持つモルモットたちは次々と売れていき、空になったケージに新たな赤ちゃんモルが補充されていく中、ミミだけは空気のように素通りされ続けていた。
省スペースで飼いやすいペットとしてイヌネコに変わり人気が出ているモルモットの中で、ミミは落ちこぼれ商品だった。
季節が一巡りして、もうすぐペットコーナーでの生活が1年経つ頃、ミミの価値は、とうとう他のモルモットたちの半分になった。
それでも一向に売れる気配がない。
殺処分になるのかな、と、なんとなく諦めていた。
「どうして君の魅力にみんな気づかないんだろう」
ミミのケージの前で首を傾げたのは、今まで見たことのない飼育スタッフのお姉さんだった。
お姉さんは、ミミを慣れた手つきでケージから取り出すと丁寧にブラッシングを始めた。
「私が連れて帰れたらいいのに」
このペットコーナーでは、売れ残ったペットを飼育スタッフやその家族が購入することを禁じていた。
その昔、ここで売れ残ったペットを新人の従業員に無理やり購入させて売り上げをあげていたことが発覚して、メディアにも取り上げられる大問題になったためだという。
「まあ、私には協力してくれる家族も親しい友達もいないんだけどね」
お姉さんは「私も君と同じ天涯孤独なんだ」と笑って「絶対に君の家族をみつけてあげるからね」とミミを撫でた。
有言実行。
さっそくお姉さんは目立つ位置にミミのケージを移動させたり「賢く人なつっこい子です」とカラフルなポップをケージに貼ったりして、ミミが人目につくように工夫した。
それでも効果がなくて、最終手段とばかりにお手製のビラをたっくさん作って、ペットコーナーの前で「家族になっていただける方を探しています。よろしくお願いします」と配り始めた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる