タチバナ

箕面四季

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ナツさんとミミちゃん

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 ナツさんと約束したカフェは、緑豊かな国定公園の中にあった。

 冷房と自然風を合わせた心地よいテラス席からは山深い自然の景色が望める。
 からりとした気候で空気も美味しい。
 すぐ近くを小川がせせらいでいる。
 森の木でジュワジュワと、何かの虫が鳴いていた。
 ウキウキしてついつい小ジャンプしたくなる。

 ビデオ通話で話したとおり、ナツさんは物静かなオスだった。
 それにビデオ通話の時にも思っていたけれど……。

 色白の顔に涼し気な目、真ん中をすっと通る鼻。
 いつでも微笑んでいるようなちょっぴり口角の上がった唇。
 大きな二重で甘いマスクのハルトとは違う、彫刻みたいに美しいイケメンだ。
 すごく顔が整っている。これが人間で言うところの美形というやつかな?
 ということは僕みたいにカッコイイってこと。人間版の僕と言っても過言ではない。 
 うんうん。誠実そうでなかなか好感が持てる。

 それにナツさんからは僕の好きな匂いもする。
 同じ匂いはミミちゃんからもしていて、僕はすぐにナツさんとミミちゃんを大好きになった。

 真面目なナツさんは春ちゃんと丁寧に挨拶を交わしたあと、お店の人に僕とミミちゃん用のケージを借りた。

 ペットは飼い主に似ると言うけど、ミミちゃんもナツさんに似て静かで賢そうな子だ。
 さっきからケージの隅でつつましく小松菜を齧りながら景色に目をむけている。

 真っ黒い短毛は健康的な艶やかさで、毛の手入れがよく行き届いている。
 頻繁にブラッシングして貰っている証拠だ。
 ナツさんがミミちゃんをどれだけ大切にお世話しているか、一目瞭然だった。

 やっぱ好きだな、この二人(正確には一人と一匹だけど)。

「そっち行ってもいいかな?」
 僕が尋ねると、ミミちゃんは賢そうな頭をくいっと上げてコクリと頷き、生野菜の近くのスペースを譲ってくれる。気配りのできる優しい子だなぁ。

 僕は「キュキュッ」と、友好の意を示しつつ、ミミちゃんが作ってくれたスペースに収まった。
 しばし一緒に小松菜を齧る。

 小川の方から気持ちの良い夏風が吹いて僕の巻き毛とミミちゃんの黒い短毛を撫でていく。
 静かなミミちゃんは小松菜を上品に食べきると、ケージにふさふさと敷かれた牧草の中からチモシーを選んで、もぐもぐ。

 いいね! ミミちゃんと僕は相性ピッタリだ。

 ミミちゃんから時々立ち昇る匂いもいい。
 心がほわほわする。

「ねえ、ナツさんはどんなオス?」
 いきなりぶしつけかな、と思ったけれど聞いてみることにした。

「そうね」
 ミミちゃんは小川のせせらぎに耳をすませ「いい人」と呟いて、ぽつぽつ話し始めた。
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