タチバナ

箕面四季

文字の大きさ
上 下
30 / 83
モルモットマッチングサイト

ギズモの攻撃

しおりを挟む
 キュインキュインキュイン!

「え? ちょっとギズモ、いきなりどうしたの?」
 警報ベル並みの音量で鳴きだした僕を春ちゃんが慌てて抱き上げた。

 今だ!

 春ちゃんの腕を蹴ってビョンっと、ハルトの顔面目掛けて四脚キック!
 ついでにザリっと爪で皮膚をひっかく。

「痛っ!」とハルトが顔を抑えた。
「ごめん、ハルト君、大丈夫?」

「平気。ちょっとびっくりしただけ。ギズモ君元気だなぁ」
 まだまだ爽やかなハルト。
 どうやら化けの皮を剥ぐには至らなかったみたいだ。

 ハルトの膝の上に乗った僕をハルトが優しく撫でようとする。
 それをすり抜けて、ハルトのすべっとしたオシャレなシャツを齧った。

「あのシャツ、元カノから貰った高級シャツで、ハルトのお気に入りなの」とココちゃんが教えてくれたのだ。
「うわっ、何すんだ! やめろ、この!」

 ハルトの口調がにわかに荒くなった。
 大きな二重が三角に尖る。
 いい感じだぞ。
 フィニッシュはハルトのお腹の部分のシャツをしゃっとまくり上げる。

「ハルトはああ見えて運動が苦手なの。前に人間のメスがハルトの二段腹を笑ったことがあったわ。そしたら顔の形が変わるほどそのメスを殴ったのよ」

 確かにおへそ周りがたるんでいた。
 でもココちゃんが言う程二段腹じゃない。
 こんなの春ちゃんは気にしないよなぁ。と、僕が思った瞬間だった。

「このクソモルがぁ!」

「ギュイ」
 頭の中身が弾け飛ぶ強烈な痛みが走った。

 僕はどしゃっとココちゃんのいるケージの中に落ちていた。
 耳がぐわんぐわんして、目がぐるぐる回る。

 ギズモ!! 何するの、ハルト君! 信じられない!
 いや、これはつい。

 ギズモが悪いのはわかってる。でも、はたくことないでしょ!
 いや、だからこれは。

 これ、お茶代と迷惑料です。それじゃ。
 ちょ、待っ。

 僕はあっという間に春ちゃんの優しい匂いに抱きかかえられた。
 春ちゃんからは、涙の匂いがしている。

「坊や、よくやったわね」
 ココちゃんの労いの声が遠く聞こえる。

「ココちゃんも、一緒に、にげ、よう、よ」
 記憶が途切れそう。
 春ちゃんなら、きっとココちゃんを飼ってくれるよ。
 一緒に僕たちと行こうよ。

「ありがとう。でもね、ハルトの孤独や苦しみを理解できるのは私だけなの。私たちは」

――私たちは家族なの。だから、ずっと一緒にいなくっちゃ。

(そっか、家族なら、一緒にいなきゃね)

 薄れていく意識の中、僕はココちゃんに、声にならない声で同意していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

願いが叶うなら

汐野悠翔
恋愛
人間嫌いの神様、神耶はある日、不思議な人間の少女、葵葉と出会った。 出会ったばかりの少女は何故か神耶に「友達になって」とお願いする。 勿論神耶は葵葉の申し出を断ったが、彼女の強引さに押されて、気付けば「友達ごっこ」に付き合わされる事に。 最初は嫌々付き合わされていた神耶だったが、葵葉と過ごす日々の中で少しずつ神耶の心にも変化が生まれはじめる。 だが、葵葉との距離が近づく中で、神耶は葵葉の抱えるある秘密に気付いてしまって―― 葵葉が抱える秘密とは? 神耶が人間を嫌う理由とは? これは神と人間の少女、種族の違う2人が紡ぐ笑いあり涙ありの恋と友情の物語。 夏秋冬春。4つの季節を追って、オムニバス形式で綴ります。

処理中です...