タチバナ

モルモットマッチングサイト

ギズモ

　春ちゃんは今、僕のお嫁さんを探すため『モルちゃんの家族を見つけてハッピーに。モルモットマッチングサイト　アオハル』に夢中である。

　モルモットマッチングサイトには、ペットのモルモットの月齢、性格、見た目がわかる写真を載せるモルちゃんプロフィールと、飼い主の年齢、性格、見た目がわかる写真を載せる飼い主様プロフィールがあり、気になる相手には直接メールやDMを送ってやり取りする仕組みになっている。

　このところずーーーーーっと、春ちゃんはマッチングサイトにハマっている。
　仕事から帰ってくると、「ギズモー、ただいまー」とケージから僕を取り出し、お腹の上に僕を乗せてベッドの上に寝っ転がり、頭の上に手をかざしてマッチングサイトを開く。

「ねえ、この子とか美人じゃない？」

　春ちゃんは、空を握るような仕草をして、僕が見えるところでパッと手を離す。
　すると、僕の目の前に巨大メスモルの写真が現れるのだ。

　僕と同じアビシニアンという種類の体中につむじがあるメスとか、短毛のメスとか、僕と同じ茶色と白が混ざった毛色のメスとか、モップみたいに長い毛のメスとかを、それはもういろいろ見せられた。

「ええ？　この子もダメ？　ギズモって意外とこだわり強いんだねー」

　きゅっ、きゅきゅ。
　だからなんども言ってるじゃない、春ちゃん。写真のメスは匂いがしないんだよ。
　匂いがないのに好きかどうかわからないでしょ。
　それよりおやつちょうだい。

　僕がキュイキュイ鳴いておやつをねだると「ギズモは花より団子だねー」と笑いながら、春ちゃんがキッチンの冷蔵庫を開ける。

　ぶわんっと広がる新鮮な野菜の美味しい匂い！

　キュインキュインキュイン。

　写真のメスよりも断然魅力的。

　僕は興奮してけたたましく鳴きながら、ベッドの上で小ジャンプを繰り返した。

「はいはい。ちょっとお待ちー」と春ちゃんは笑った。