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ライラック
すれ違い
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大学生になってから一度だけコウタ君に手紙を書いたことがあります。
恋文ではなく他愛のない文章を。
投函してから気持ち悪がられるかも、と、ものすごく後悔しました。
だけどね、それから半年くらい経った頃、私の母が自宅で営んでいるクリーニング代行店に、コウタ君が来てくれたのです。
「さっきカナエが中学生の時に仲の良かった男の子が来てたわよ。ほら、竹中さんのお子さん。いつもはお母さんが来るのに珍しいわね。カナエがいるかなってちょっと気にしてるみたいだった。もう帰ったけど」
ガンっと、鈍器で頭を殴られた気がしました。
ずっと会いたかった人が来てくれて、帰ってしまった。
「なんで呼んでくれなかったのよ!」と、母に怒鳴っていました。
「だってカナエは違う子と付き合ってるでしょ。カナエのためを思って言わなかったのに、なんなの? その態度」と母は怒り返してきました。
母はその当時私が付き合い始めた同じ大学の男の子をえらく気に入っていたのです。
母は自分の都合のいいように私の気持ちを決めつけて、カナエのためにやってあげた、という人でした。
結局、コウタ君と友達に戻るチャンスすら棒に振ったまま、年月は流れ、私も人並みに結婚し、子どもも生まれ、孫もでき、もうすぐ夫のもとへ向かおうとしています。
夫とは恋愛結婚で、家庭円満、子どもも良い子に育ち、孫も生まれ、私の人生は平凡ながら幸せでした。
恋文ではなく他愛のない文章を。
投函してから気持ち悪がられるかも、と、ものすごく後悔しました。
だけどね、それから半年くらい経った頃、私の母が自宅で営んでいるクリーニング代行店に、コウタ君が来てくれたのです。
「さっきカナエが中学生の時に仲の良かった男の子が来てたわよ。ほら、竹中さんのお子さん。いつもはお母さんが来るのに珍しいわね。カナエがいるかなってちょっと気にしてるみたいだった。もう帰ったけど」
ガンっと、鈍器で頭を殴られた気がしました。
ずっと会いたかった人が来てくれて、帰ってしまった。
「なんで呼んでくれなかったのよ!」と、母に怒鳴っていました。
「だってカナエは違う子と付き合ってるでしょ。カナエのためを思って言わなかったのに、なんなの? その態度」と母は怒り返してきました。
母はその当時私が付き合い始めた同じ大学の男の子をえらく気に入っていたのです。
母は自分の都合のいいように私の気持ちを決めつけて、カナエのためにやってあげた、という人でした。
結局、コウタ君と友達に戻るチャンスすら棒に振ったまま、年月は流れ、私も人並みに結婚し、子どもも生まれ、孫もでき、もうすぐ夫のもとへ向かおうとしています。
夫とは恋愛結婚で、家庭円満、子どもも良い子に育ち、孫も生まれ、私の人生は平凡ながら幸せでした。
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