タチバナ

箕面四季

文字の大きさ
上 下
10 / 83
ライラック

違う次元

しおりを挟む
 翌日の放課後、ジリジリうだる暑さにセミも沈黙する校舎を抜けて、私はいそいそと学校の自転車置き場に向かっていた。
 アスファルトが熱でゆらゆらしている。

「泉、何でそんなに急いでんの?」
 背後から声をかけてきたのは橘だ。

「ちょっといろいろありまして」とわざと含みのある言い方をしたら「いろいろ? 何? 何かあんの?」と食いついてきた。

「実はね」
「おおーい、たっちばなー。今日、文化祭の実行委員だよー」

 校舎二階の窓がガラリと開いて、リア充系男女たちが橘を呼んで手を振っている。

 ふわふわの茶髪で子犬ちゃんみたいな他クラスの女子と、サラサラストレートの同クラの河合さんがいる。
 可愛い河合さんと、クラスの男子がよく言っている。
 男子に人気の女子たち。私と違う次元を生きる可愛い女子高生たち。

 知らず知らずのうちに自分の髪を触っていた。ゴワゴワと湿気で膨張している。

「あ、やべ、忘れてた。じゃ、あとでなー」と、私にニカっと笑いかけ、彼らのところへ颯爽と走り出す橘。

 どんどん距離が離れていく。

 もう一度、自分のゴワゴワの髪をぐりぐりと抑えるように撫でつけ、ため息を吐いた私は自転車のスタンドをガチャンと上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

実はこれ実話なんですよ

tomoharu
恋愛
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!1年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎ智伝説&夢物語】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎ智久伝説&夢物語】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【智久】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

和泉杏咲
恋愛
1度諦めたはずのもの。もしそれを手にしたら、失う時の方が怖いのです。 神様……私は彼を望んでも良いのですか? もうすぐ40歳。 身長155cm、体重は88キロ。 数字だけで見れば末広がりで縁起が良い数字。 仕事はそれなりレベル。 友人もそれなりにいます。 美味しいものはそれなりに毎日食べます。 つまり私は、それなりに、幸せを感じられる生活を過ごしていました。 これまでは。 だから、これ以上の幸せは望んではダメだと思っていました。 もう、王子様は来ないだろうと諦めていました。 恋愛に結婚、出産。 それは私にとってはテレビや、映画のようなフィクションのお話だと思っていました。 だけど、運命は私に「彼」をくれました。 「俺は、そのままのお前が好きだ」 神様。 私は本当に、彼の手を取っても良いのでしょうか? もし一度手に取ってしまったら、私はもう二度と戻れなくなってしまうのではないでしょうか? 彼を知らない頃の私に。 それが、とても……とても怖いのです。

処理中です...