タチバナ

箕面四季

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ライラック

違う次元

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 翌日の放課後、ジリジリうだる暑さにセミも沈黙する校舎を抜けて、私はいそいそと学校の自転車置き場に向かっていた。
 アスファルトが熱でゆらゆらしている。

「泉、何でそんなに急いでんの?」
 背後から声をかけてきたのは橘だ。

「ちょっといろいろありまして」とわざと含みのある言い方をしたら「いろいろ? 何? 何かあんの?」と食いついてきた。

「実はね」
「おおーい、たっちばなー。今日、文化祭の実行委員だよー」

 校舎二階の窓がガラリと開いて、リア充系男女たちが橘を呼んで手を振っている。

 ふわふわの茶髪で子犬ちゃんみたいな他クラスの女子と、サラサラストレートの同クラの河合さんがいる。
 可愛い河合さんと、クラスの男子がよく言っている。
 男子に人気の女子たち。私と違う次元を生きる可愛い女子高生たち。

 知らず知らずのうちに自分の髪を触っていた。ゴワゴワと湿気で膨張している。

「あ、やべ、忘れてた。じゃ、あとでなー」と、私にニカっと笑いかけ、彼らのところへ颯爽と走り出す橘。

 どんどん距離が離れていく。

 もう一度、自分のゴワゴワの髪をぐりぐりと抑えるように撫でつけ、ため息を吐いた私は自転車のスタンドをガチャンと上げた。
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