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ライラック
7月の朝
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ジュワジュワジュワと、アブラゼミが早朝から大合唱している。
むわんと蒸し暑い七月の河川敷を施設に向かって自転車で進んでいると「まーた髪に葉っぱついてんぞ」と黒のマウンテンバイクが近づいてきた。
「あ、ホントだ……」
(もう触ってこないんだ)
自分で嫌がったくせに、胸がズキンっと痛む。
「あっちぃ。魔物城行きたくねー。ほんっとさー、なんであんなに高齢者は文句が多いんだろ?」と、いつものように橘が愚痴る。
「橘は特にツワモノどもを押し付けられてるもんね」
橘は、大人しめな女子を泣かせた癖強めなおばあちゃんや、酷い悪態に「くそっ」と壁を殴って骨折した男子が担当していたおじいちゃんなどをもれなく押し付けられている。
そのツワモノどもをあっという間に手名付けてしまう橘のコミュ力の高さに、女子のファンも増殖中だ。
「それな」
「え?」
「だから、ツワモノどもの押し付けマジえげつねーって話」
「ああ、そっち」
「? つか、泉の担当のおばあちゃんさ」
「桜井さん?」
「そう。あの人ってなんかちょっと、可愛いくね?」
「え……」
「お前、今えげつねー誤解してるだろ」
むわんと蒸し暑い七月の河川敷を施設に向かって自転車で進んでいると「まーた髪に葉っぱついてんぞ」と黒のマウンテンバイクが近づいてきた。
「あ、ホントだ……」
(もう触ってこないんだ)
自分で嫌がったくせに、胸がズキンっと痛む。
「あっちぃ。魔物城行きたくねー。ほんっとさー、なんであんなに高齢者は文句が多いんだろ?」と、いつものように橘が愚痴る。
「橘は特にツワモノどもを押し付けられてるもんね」
橘は、大人しめな女子を泣かせた癖強めなおばあちゃんや、酷い悪態に「くそっ」と壁を殴って骨折した男子が担当していたおじいちゃんなどをもれなく押し付けられている。
そのツワモノどもをあっという間に手名付けてしまう橘のコミュ力の高さに、女子のファンも増殖中だ。
「それな」
「え?」
「だから、ツワモノどもの押し付けマジえげつねーって話」
「ああ、そっち」
「? つか、泉の担当のおばあちゃんさ」
「桜井さん?」
「そう。あの人ってなんかちょっと、可愛いくね?」
「え……」
「お前、今えげつねー誤解してるだろ」
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