タチバナ

箕面四季

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ライラック

超超高齢化社会の高校生

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 超超高齢化社会の日本では、深刻の極みに達した高齢者介護の人員不足を補うため、文部科学省が高等学校の必修科目に『高齢者介護』を新たに制定した。

 これにより以前は部活動の時間だった早朝と放課後が介護実習の時間に変わり、高校生たちは近隣の高齢者介護施設で朝な夕なに補助業務をしなければならないのだ。

 今年から高校生になった私たちも介護実習が始まって、早ひと月が経過していた。

 老人ホームは月齢の異なる赤ちゃんがいる保育園に似ている。
 食事もトイレも一人でできない人もいれば、ある程度の補助でそこそこ生活できる高齢者もいる。

 高校生が補助を行うのは、そこそこな高齢者たちで、最も不平不満の多い人たちでもあった。

「おい、オレは全粥より七分粥が好きだと言ってるだろ! こっちは年金を国に返上して施設に入ってやってるんだぞ。オレは客だ。客の要望を聞かんとはどういうことだ!」
「でもほらサザキさん、みんなの要望聞いてたら、食事作るおばちゃんたちが大変じゃないですか」

「大変だからなんだ! オレは料理人として一期一会を大切に、お客様の好みに合わせた食事を提供してきたぞ。まったく、これだから」
「それ、めちゃくちゃすごくないですか? カスタマーファーストの鏡っすね」

「ま、まあな。一時は、銀座で小さな割烹の店をしていたこともある」
「銀座ぁ? すげぇ! だから料理に詳しくて厳しいのか。でも、あれっすよね、サザキさんのすごいところは一流料理人だったにもかかわらず、ちゃーんと庶民の食事も食べてくれるところっすよね。調理のおばちゃんたちも、そういう心の広いところが男らしいつって褒めてたし」

「なに? ま、まあ、気になる点はあるが、食えんことはないからな」

 大人しく食事を始めたサザキさん。
「橘さっすがー」と配膳係の派手めな女子たちがひそひそクスクス笑っている。

 コミュ力お化けの橘は、毎朝「だりぃ」「老人って魔物じゃね?」と愚痴るわりに結構上手くやっている。

 全く興味ないであろう老人の話を笑顔でうんうん聞く橘に「橘君って意外と面倒見いいよねー。顔かっこいいし」と女子ファンも増えていく。

(それに比べて私は)
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