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ライラック
橘
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五月の早朝はまだ少し肌寒い。
河川敷の先に聳える介護施設に向かって自転車をこいでいると「うっす、泉」と、燻しブラックのマウンテンバイクが寄ってきて、眠たそうな橘が現れた。
「あ、髪に」と、橘が私の頭上に手を伸ばす。
自分でも驚くほどの瞬発力で自転車ごと橘から距離を取っていた。
私の髪は恐ろしく剛毛で毛量も多くて、縮毛矯正でもサラサラにならない。
おばさんみたいな髪。全然女子高生っぽくない。
橘は一瞬眉を寄せたが、気を取り直したように私の髪を指さした。
「葉っぱ刺さってるぞ」
「え? あ、ホントだ」
乾山のように刺さっていた。恥ずすぎる。
「つかさ、朝からじいさんばあさんの世話辛くね?」と橘が愚痴りだす。
「オレの担当のサザキさんってじいさんさ、昔料理人だったとかで、朝食の文句がえげつねーんだよ。粥は七分粥にしろ、梅干しが酸っぱすぎる、なんだこの水っぽい煮物は、食えるかーつって。なんで老人はあんなに文句が多いの?」
「私に聞かれても。てゆーかそれ、全国の高校生が思ってるよ」
河川敷の先に聳える介護施設に向かって自転車をこいでいると「うっす、泉」と、燻しブラックのマウンテンバイクが寄ってきて、眠たそうな橘が現れた。
「あ、髪に」と、橘が私の頭上に手を伸ばす。
自分でも驚くほどの瞬発力で自転車ごと橘から距離を取っていた。
私の髪は恐ろしく剛毛で毛量も多くて、縮毛矯正でもサラサラにならない。
おばさんみたいな髪。全然女子高生っぽくない。
橘は一瞬眉を寄せたが、気を取り直したように私の髪を指さした。
「葉っぱ刺さってるぞ」
「え? あ、ホントだ」
乾山のように刺さっていた。恥ずすぎる。
「つかさ、朝からじいさんばあさんの世話辛くね?」と橘が愚痴りだす。
「オレの担当のサザキさんってじいさんさ、昔料理人だったとかで、朝食の文句がえげつねーんだよ。粥は七分粥にしろ、梅干しが酸っぱすぎる、なんだこの水っぽい煮物は、食えるかーつって。なんで老人はあんなに文句が多いの?」
「私に聞かれても。てゆーかそれ、全国の高校生が思ってるよ」
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