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67 残された問題
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――数日後。
「『出来れば一度こちらに来て欲しいの、貴女のお父様も会いたがっているし。それに王位継承権の事も……あるしね?』」
と、言い残して。
女王エレノアがアウラに帰国した。
女王の乗る馬車が完全に見えなくなるまでマリアベルは見送る、溜息をつきながら。
「継承権、ですか……」
「帰国したら直ぐにマリアベルのこと発表するって女王陛下は言ってらしたけど、どうするんだ?」
「どうするもなにも。行く以外に選択肢がありませんので一度は行きますが……直ぐに帰って来ます」
その肩書きに相応しい能力など一つもない自分がアウラに行った所で、腫れ物扱いされるだけ。
なので一度は両親に会いにアウラに行くつもりだが、マリアベルは直ぐに帰って来る予定である。
「でも、直ぐに帰してくれるのか?」
「あちらに行っても私はきっと腫れ物扱いでしょうし、引き止めたりはしないと思いますが……」
クロヴィスにこれからどうするのかと問われたマリアベルは、一度アウラに行って直ぐにネムスに帰ってくるつもりだと言うが。
実際問題マリアベルは王位継承権を持つアウラの王女様なわけで、あちらで腫れ物扱いだったとしても直ぐに帰してくれるのだろうか?
「……でも、女王のあの雰囲気は……マリアベルにアウラの王位を継いで欲しそうだったけど?」
今後について話し込んでいると。
レオンハルト第一王子が会話に参加してきた。
「レオンハルト第一王子殿下! お久しぶりでございます、急に侍女を辞める事になってしまい誠に申し訳ございません」
「ああ、それについては気にしないでマリアベル?君が悪いんじゃないのだから。それに久し振りと言っても君が侍女を辞めてから、まだ一週間と経ってないよ?」
「いえ! もう一週間も経ってしまいました。なにかご不便はございませんか? マリアベルはレオンハルト第一王子殿下の事が心配で心配で……!」
レオンハルト第一王子の侍女をマリアベルが辞めさせられてから、まだ一週間しか経っていない。
だがマリアベルにとって侍女を辞めてからのその一週間は、とても長く感じる時間だったのだ。
自分が急に侍女を辞めてしまったから。
レオンハルト第一王子が何か生活で不自由していないかとか、他の侍女が困ってやしないかとか。
ずっとその事が気掛かりで仕方がなかった。
「大丈夫、侍女長が問題なくやってくれてるから。マリアベルは心配しなくていいんだよ? でもたまには君が入れたお茶が飲みたいかな……?」
「それでしたらいつでも! 銀獅子宮に呼んでくだされば、直ぐにお伺い致しましてお茶をお入れ致します」
「ほんと? じゃあ今度、招待するね?」
「はい、お待ちしております!」
にこやかに会話する元主人と侍女。
以前とは立場がだいぶ変わってしまったけれど、五年かけて築いた信頼はなにも変わらない。
「……楽しそうな所悪いけど、結局どうするんだ?」
そんな二人の間に割って入るクロヴィス。
主従として仲が良いだけだと頭ではわかっていても、仲が良すぎる二人につい嫉妬しまう。
「そうは言われましても、正直なところ迷惑と言いますか……私は今の生活に満足しておりますし? アウラの王位継承権なんて……いらないのです」
リリアンを処刑から助ける時にその立場や権利は使えたけれど、そのやんごとなき身分は正直なところ迷惑以外の何物でもない。
その身分のせいでせっかく整った侍女長との養子縁組も駄目になったし、レオンハルト第一王子の侍女も辞めさせられてしまったのだから。
……それにマリアベルは。
自分がアウラの王女だなんて何かの間違いじゃないのかと、未だに信じきれないでいる。
「そういうクロヴィスはこれからどうするの? もしマリアベルがアウラに帰らなければいけないってなったら……」
「それは、どうしような……?」
クロヴィスはその質問に答えられない。
マリアベルと別れるなんて絶対に嫌だし、だからといってレオンハルトを裏切る事は出来ない。
それにクロヴィスはその有能さから、兄達を押し退けてルーホン公爵家の後継者に指名されている。
なのでもしこの国を離れるのであれば、受け継ぐはずだった爵位も財産も全て捨ててアウラに行かなければならない。
それをするにはかなりの覚悟が必要だし、あのルーホン公爵がクロヴィスを手放すとは思えない。
それにレオンハルト第一王子も、側近としても有能なクロヴィスを手放したくなどない。
だが幼い頃からの親しい友人でもあるクロヴィスにマリアベルと別れろだなんて、口が裂けてもそれを言いたくなかった。
それにもしそれを言ってしまえば。
もうクロヴィスとは友人ではいられなくなってしまうし、無能だと毛嫌いする国王と自分は同じになってしまうから。
――数日後。
「『出来れば一度こちらに来て欲しいの、貴女のお父様も会いたがっているし。それに王位継承権の事も……あるしね?』」
と、言い残して。
女王エレノアがアウラに帰国した。
女王の乗る馬車が完全に見えなくなるまでマリアベルは見送る、溜息をつきながら。
「継承権、ですか……」
「帰国したら直ぐにマリアベルのこと発表するって女王陛下は言ってらしたけど、どうするんだ?」
「どうするもなにも。行く以外に選択肢がありませんので一度は行きますが……直ぐに帰って来ます」
その肩書きに相応しい能力など一つもない自分がアウラに行った所で、腫れ物扱いされるだけ。
なので一度は両親に会いにアウラに行くつもりだが、マリアベルは直ぐに帰って来る予定である。
「でも、直ぐに帰してくれるのか?」
「あちらに行っても私はきっと腫れ物扱いでしょうし、引き止めたりはしないと思いますが……」
クロヴィスにこれからどうするのかと問われたマリアベルは、一度アウラに行って直ぐにネムスに帰ってくるつもりだと言うが。
実際問題マリアベルは王位継承権を持つアウラの王女様なわけで、あちらで腫れ物扱いだったとしても直ぐに帰してくれるのだろうか?
「……でも、女王のあの雰囲気は……マリアベルにアウラの王位を継いで欲しそうだったけど?」
今後について話し込んでいると。
レオンハルト第一王子が会話に参加してきた。
「レオンハルト第一王子殿下! お久しぶりでございます、急に侍女を辞める事になってしまい誠に申し訳ございません」
「ああ、それについては気にしないでマリアベル?君が悪いんじゃないのだから。それに久し振りと言っても君が侍女を辞めてから、まだ一週間と経ってないよ?」
「いえ! もう一週間も経ってしまいました。なにかご不便はございませんか? マリアベルはレオンハルト第一王子殿下の事が心配で心配で……!」
レオンハルト第一王子の侍女をマリアベルが辞めさせられてから、まだ一週間しか経っていない。
だがマリアベルにとって侍女を辞めてからのその一週間は、とても長く感じる時間だったのだ。
自分が急に侍女を辞めてしまったから。
レオンハルト第一王子が何か生活で不自由していないかとか、他の侍女が困ってやしないかとか。
ずっとその事が気掛かりで仕方がなかった。
「大丈夫、侍女長が問題なくやってくれてるから。マリアベルは心配しなくていいんだよ? でもたまには君が入れたお茶が飲みたいかな……?」
「それでしたらいつでも! 銀獅子宮に呼んでくだされば、直ぐにお伺い致しましてお茶をお入れ致します」
「ほんと? じゃあ今度、招待するね?」
「はい、お待ちしております!」
にこやかに会話する元主人と侍女。
以前とは立場がだいぶ変わってしまったけれど、五年かけて築いた信頼はなにも変わらない。
「……楽しそうな所悪いけど、結局どうするんだ?」
そんな二人の間に割って入るクロヴィス。
主従として仲が良いだけだと頭ではわかっていても、仲が良すぎる二人につい嫉妬しまう。
「そうは言われましても、正直なところ迷惑と言いますか……私は今の生活に満足しておりますし? アウラの王位継承権なんて……いらないのです」
リリアンを処刑から助ける時にその立場や権利は使えたけれど、そのやんごとなき身分は正直なところ迷惑以外の何物でもない。
その身分のせいでせっかく整った侍女長との養子縁組も駄目になったし、レオンハルト第一王子の侍女も辞めさせられてしまったのだから。
……それにマリアベルは。
自分がアウラの王女だなんて何かの間違いじゃないのかと、未だに信じきれないでいる。
「そういうクロヴィスはこれからどうするの? もしマリアベルがアウラに帰らなければいけないってなったら……」
「それは、どうしような……?」
クロヴィスはその質問に答えられない。
マリアベルと別れるなんて絶対に嫌だし、だからといってレオンハルトを裏切る事は出来ない。
それにクロヴィスはその有能さから、兄達を押し退けてルーホン公爵家の後継者に指名されている。
なのでもしこの国を離れるのであれば、受け継ぐはずだった爵位も財産も全て捨ててアウラに行かなければならない。
それをするにはかなりの覚悟が必要だし、あのルーホン公爵がクロヴィスを手放すとは思えない。
それにレオンハルト第一王子も、側近としても有能なクロヴィスを手放したくなどない。
だが幼い頃からの親しい友人でもあるクロヴィスにマリアベルと別れろだなんて、口が裂けてもそれを言いたくなかった。
それにもしそれを言ってしまえば。
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