【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅

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52 お飾りの妻は

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そんな俺達家族の暮らしは、リーネと俺が出逢ってから十三年が過ぎていた。リーネは二十六(実年齢はたぶん二十五)となり、トーイとイワンもだいたい十四くらい(実年齢はたぶん十三くらい)、カーシャは十(実年齢はたぶん九)になっていた。

そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。

一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。

「僕がリーネを幸せにする!」

堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、

「ありがとう。嬉しいよ、イワン」

笑顔で応えてたりもする。

基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。

で、カーシャはと言うと、

「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」

竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。

「ありがとう! カーシャ!」

礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。

そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、

「あ、マリヤおしっこした」

カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。

「おお、おお」

俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。

マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。

『男じゃなきゃ要らない』

と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、

「赤ん坊、要らないかい?」

ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、

「要らないんなら、貰う」

と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。

ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。

何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。

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感想 223

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みんなの感想(223件)

四葩(よひら)
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千紫万紅
2024.05.11 千紫万紅

再読ありがとうございます!

そうです、実はか弱そうに装ってるだけ。
怒るとめちゃくちゃ怖いアイリスちゃん。
作者のお気に入り✨

感想ありがとうございました。

解除
にゃあん
2023.04.15 にゃあん
ネタバレ含む
千紫万紅
2023.04.15 千紫万紅

こちらこそ完結までお付き合い頂きましてありがとう!

ラファエル公爵似のお子様が出来れば、アイリスの面倒を見てくれるでしょうね( *´艸)
一緒にお散歩したり、日向ぼっこしながら本でも読むのかな……?

感想ありがとうございました!
完結まで長らくお付き合い頂きましてありがとう!
また別の作品でお会いできれば幸いです!

解除
nyathu30
2023.04.15 nyathu30
ネタバレ含む
千紫万紅
2023.04.15 千紫万紅

ラファエル公爵は元々、社交も家の事も自分が全部やればいいと思っておりました。

そして実際に問題なく出来ていて、アイリスが何も出来なくても特に問題は出なかった。

ラファエル公爵がアイリスに求めていたのは、楽しそうに自分の隣で笑っていてくれること。

巣箱の中で小さく丸まって、幸せそうに眠るアイリスを愛でるのがラファエル公爵の癒しとなっている事でしょう(´(ェ)`)

完結させずに2人のそれから……を書き続けても良かったのですが、これ以上書くとR-18になりますのでここで完結と致しました!

感想ありがとうございました!
完結までお付き合いありがとうございました!
こちらの作品は完結となりましたが。
あちらの作品はまだまだ続きますので、そちらでまた感想お待ちしております!

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