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28 勘違い
しおりを挟む「レオノーレ王女殿下、大変でございますっ!」
はるばるナサリアから、レオノーレ王女の輿入れに伴って追加された侍女が慌てたようにそう報告する。
「いったいどうしたの? そんなに慌ててはしたない、レオノーレ様の前ですよ!」
「その……国王陛下が! あの廃妃を……ご自分の私室にお呼びするところを私……見てしまいました!」
「なっ……そんな事、あるわけないでしょう! レオノーレ様、きっとこれはこの侍女の勘違いでございます! どうか、どうかお気になさらず……!」
その侍女の報告に、一緒にナサリアからやってきたレオノーレの乳母が怒りを現す。
せっかくレオノーレの癇癪を鎮める事が出来たのに、またそんな怒らすような余計な事を言ってまたこの夜会で喚き散らされたら。
もしこのまま王妃になることが出来たとしても、ガーディンの社交界でレオノーレはつま弾きにされて嘲笑の的になってしまう。
それに今でも十分不味い状況なのにこれ以上騒ぎを起こせば、輿入れが無くなるどころか両国の友好にもヒビが入ってしまう。
「ねぇ……それは、ほんとうなの?」
それを聞かされたレオノーレ王女は今にも泣き出しそうな表情で、侍女に問う。
「はい! 勘違いなどではございません! 近衛の騎士が廃妃を呼び出しに来ておりました!」
「っ……フェリクス陛下のお部屋に行きます! 廃妃のくせに……絶対に許せない! 大人しそうな顔をして陛下を誘惑するだなんて……!」
「ああっ……レオノーレ様いけません! 今日は貴女様のお披露目も兼ねたとても大事な夜会なのです、それに許可無くそんな……! ちょっとそこの侍女、あとで覚えていなさい!」
そして激昂したレオノーレ王女は、自分の為に用意された歓迎の宴を抜け出して王の私室へと向かう。
それを見送ったレオノーレの侍女は、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべていた。
……深い溜め息を一つ吐いて。
「……ではもう用が無いみたいですし、これにてお暇させて頂きますね陛下? あ、もう気軽に呼び出さないで下さいね! 下手に勘違いされてもお互い困るでしょう?」
ユーフェミアはめんどくさそうに眉をしかめて、それだけを吐き捨てるように国王フェリクスに告げて。
さっさと立ち去ろうとすると。
「ユーフェミア待って。君に用はまだあるんだ、どっちかと言えばこっちが本題なんだけど……」
「え……なんですか?」
「アレクサンドにさ……宰相に戻るように言って欲しいんだよね? アイツが居ないと無理、過労で死ぬ」
「……どうして私がそんなこと、ご自分でお願いしたらいいじゃないですか? 嫌なんですけど」
「っユーフェミア、お願いっ! 君が戻るように言えばアイツきっと言うこと聞くから! 頼む!」
そう言って国王フェリクスは、立ち去ろうとするユーフェミアの腕を掴み引き留める。
「ちょ、触らないで! ほんと気持ち悪っ……」
「……気持ち悪いって、それ……流石にひどいと思うよユーフェミア? 一応私達元夫婦なのに……」
「酷いのはどっちですか! 夫婦らしい事なんて一度もした事がないでしょ私達! うわぁ、また鳥肌立ってきた……!」
そんな風に二人が小競り合いをしていると。
扉が激しく叩かれた。
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