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25 変わる立場
しおりを挟む勝手知ったるなんとやらと調子に乗って。
ユリウス王太子と話し込むアレクサンドに何も言わず、直ぐ戻るし……いいよね?
と、一人で化粧を直しに来たのが悪かった。
もう私は敬われるべき王妃ではなく、卑しい下卑た笑いをする男にも見下される廃妃なのを忘れていた。
厭らしい視線に悪寒がする。
この手の輩に関わってはいけないと足早に目の前を通り過ぎようとしたら、腕を掴まれて。
休憩室に無理矢理連れ込まれそうになった。
こんな男がいるから夜会にはエスコートが必要だと知っていたのに、王妃に何かしようとする者なんて今までいなくて実感がなかった。
大声を出して助けを呼ばなきゃいけない、そう頭ではちゃんとわかっていても声が出ない。
そしてこれから自分に起こる事だろう事を想像して、ぞわぞわと鳥肌が立った。
……その瞬間。
「おい! こらっ……てめぇ! 俺の女に何してやがる!? ぶっ殺してやろうか!」
幼い頃絵本で読んだピンチの時にお姫様を颯爽と助けてくれる白馬に乗った王子様とは、似ても似つかぬセリフを吐いて。
呼んでもないのに駆け付けてくれたアレクサンドは、躊躇なく暴漢を殴り倒し。
騒ぎに気付いた近衛に暴漢を引き渡していて。
「え、アレクサンド!?」
「どうして何も告げず一人で会場から出た!? これじゃ俺が一緒にいる意味がないだろ!」
すごい剣幕で怒られた。
「その……ごめんなさい、アレクサンドがユリウス様と大切なお話をされていたから……殿方達のお話を中断させるのはマナー違反だから……その、出来なくて」
「貴女はもう王妃じゃないんだ! 淑女としてのマナーなんかより大事なモノがあるだろ!?」
「あ、そうね……? 私はもう王妃ではなく廃妃。……だからこんな輩に見下されて目をつけられてしまう。それを理解出来ていなかった……ごめんなさい」
廃妃なったから私はもう自由だと言って。
王妃だった頃と廃妃となった今では、その立場がまるで違うと理解していなかった。
なんて愚か。
これじゃ王女の事を何も言えないじゃないか。
「っあ……いや、違っ……! そういう意味で言ったのではなくて……私にとっては何よりユーフェミアが一番大事だから、そんな事は気にせず頼って欲しくて……」
焦ったようにアレクサンドは言い募る。
それが可笑しくて。
「ふふっ、そんな焦って話さなくても! ありがとう、でも……ちゃんと自分の立場を考えて行動します」
以前と立場が違うということは。
もうマナーを気にしなくて良いって事だし?
悪い事ばかりじゃない。
「それに君を廃妃に落としたのは私だから……責任は全てこの私にある」
「あ、そういえばそうでした! じゃあアレクサンドは責任とって痴れ者から私を守ってて下さいね?」
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