20 / 35
20 久し振りの夜会へ
しおりを挟む『招待状を貰ったから王宮の夜会に行く』
そう、侍女達に告げれば。
最初こそ侍女達に反対されたが、歓迎の宴当日になれば朝から全身を磨き上げてくれて。
美しく飾り立ててくれた。
久し振りの夜会。
今日の主役は私ではなく王女殿下だから、派手になり過ぎないようにドレスも宝石も控えめで慎ましいものを選んだ。
王妃だった頃は夜会なんて仕事でしかなかったから、心が弾むなんて事は一度も無かったけど。
今はどうしてだかウキウキしている。
たぶんきっと王女殿下を歓迎する宴の招待状を送った人物は、嫌がらせのつもりで送ったのだろう。
それにまさか廃妃となった私が、その夜会に出席するなんて……夢にも思わないと思う。
けど私は、売られた喧嘩は買う質なんだ。
元王妃で前王弟の娘である私に、廃妃となったからといって平民のような生活はさせられない。
そう当たり前の事を説得されてしまい。
私は一生を一人で、このガーディンの貴族社会で生き抜いていくと決めたから。
……そんなつまらない嫌がらせをするような相手に舐められたままでは終われない、貴族社会なんて舐められたら終わりだから。
まあでも?
歓迎の宴に廃妃が行けば、針のむしろだろうけど!
「ユーフェミア様! エスコート役の殿方無しで本当に夜会に行かれるのですか!?」
「ええ、廃妃のエスコートなんて誰もしたくないでしょう? お父様はお忙しいし……お兄様は婚約者の方とご出席なさるだろうし……ね?」
「そんなこと……ユーフェミア様……」
正直どっちも此方から願い下げである。
あの二人に借りは絶対に作りたくない。
いくら廃妃は政略結婚に使わないと宰相が言っていたとしても、あの二人ならやりかねない。
「じゃあ、王宮に行って参りますね、お留守番よろしくお願い致しますよエマ、それにニーナ?」
「はい……ユーフェミア様」
「ユーフェミア様お気をつけて! 何かもしもの事があれば大きなお声で近衛を呼んで下さいね!」
そして馬車に揺られてやってきたのは、少し前までここにいるのが嫌で嫌で仕方なかった王宮で。
豪華絢爛で煌びやかなはずなのに、やっぱり私にここ王宮は輝いては見えなくて。
馬車から降りて、さあ夜会の会場へ!
そう意気込んで、一歩を踏み出せば。
「ユーフェミア様……? こんな所で貴女、いったい何をしていらっしゃるのです!?」
と、驚きを含んだ声で話しかけられた。
聞き覚えのある懐かしいその声音に、振り向けばそこには宰相アレクサンドがいて。
「っ……さ、宰相様? どうして馬車停めなんかに!? この刻限ならもう既に、夜会の会場で王の側にいるはず……」
「……もう宰相ではありませんよ? 辞めましたから」
「え、辞めた!? どうして……」
「私が宰相をやっていたのはユーフェミア様、貴女を手に入れる為……でしたから」
……そういえばそんな事、言ってた。
53
お気に入りに追加
3,833
あなたにおすすめの小説
この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。
※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
※単純な話なので安心して読めると思います。
王太子殿下が私を諦めない
風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。
今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。
きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。
どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。
※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】私に冷淡な態度を取る婚約者が隠れて必死に「魅了魔法」をかけようとしていたらしいので、かかったフリをしてみました
冬月光輝
恋愛
キャメルン侯爵家の長女シャルロットは政治的な戦略としてラースアクト王国の第二王子ウォルフと婚約したが、ウォルフ王子は政略結婚を嫌ってか婚約者である彼女に冷淡な態度で接し続けた。
家のためにも婚約破棄されるわけにはいかないので、何とか耐えるシャルロット。
しかし、あまりにも冷たく扱われるので婚約者と会うことに半ばうんざりしていた。
ある日のことウォルフが隠れて必死に呪術の類のようなものを使おうとしている姿を偶然見てしまう。
調べてみるとそれは「魅了魔法」というもので、かけられた者が術者に惚れてしまうという効果があるとのことだった。
日頃からの鬱憤が溜まっていたシャルロットはちょっとした復讐も兼ねて面白半分で魔法にかかったフリをする。
すると普段は冷淡だった王子がびっくりするほど優しくなって――。
「君はどうしてこんなに可憐で美しいのかい?」
『いやいや、どうしていきなりそうなるのですか? 正直に言って気味が悪いです(心の声)』
そのあまりの豹変に気持ちが追いつかないシャルロットは取り敢えずちょっとした仕返しをすることにした。
これは、素直になれない王子と令嬢のちょっと面倒なラブコメディ。
おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。
石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。
ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。
騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。
ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。
力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。
騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。
死に戻り王妃はふたりの婚約者に愛される。
豆狸
恋愛
形だけの王妃だった私が死に戻ったのは魔術学院の一学年だったころ。
なんのために戻ったの? あの未来はどうやったら変わっていくの?
どうして王太子殿下の婚約者だった私が、大公殿下の婚約者に変わったの?
なろう様でも公開中です。
・1/21タイトル変更しました。旧『死に戻り王妃とふたりの婚約者』
【完結】契約結婚。醜いと婚約破棄された私と仕事中毒上司の幸せな結婚生活。
千紫万紅
恋愛
魔塔で働く平民のブランシェは、婚約者である男爵家嫡男のエクトルに。
「醜くボロボロになってしまった君を、私はもう愛せない。だからブランシェ、さよならだ」
そう告げられて婚約破棄された。
親が決めた相手だったけれど、ブランシェはエクトルが好きだった。
エクトルもブランシェを好きだと言っていた。
でもブランシェの父親が事業に失敗し、持参金の用意すら出来なくなって。
別れまいと必死になって働くブランシェと、婚約を破棄したエクトル。
そしてエクトルには新しい貴族令嬢の婚約者が出来て。
ブランシェにも父親が新しい結婚相手を見つけてきた。
だけどそれはブランシェにとって到底納得のいかないもの。
そんなブランシェに契約結婚しないかと、職場の上司アレクセイが持ちかけてきて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる