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33 邪魔者
しおりを挟む王弟殿下であらせられるアレクセイ様の元に嫁いで、私も貴族になってしまう事で。
私が会いたくなくてもまたお会いする事になってしまうだろうなとは、思っておりましたから。
この夜会にエクトル様達がいらっしゃっても、それほど驚きはありません。
ですがどうして貴方は捨てた私に、昔のように優しく微笑みかけてくるのでしょうか。
……私が話し掛ければエクトル様はいつもブラウンの瞳を細めて、優しく微笑んでくれた。
でも貴方は最後。
私を冷たく見下ろしていたでしょう?
「こらこらダフネ、ちゃんとアレクセイ王弟殿下にご挨拶の許可を頂いてからに……」
オクレール伯爵が娘ダフネの無作法を窘める。
アレクセイは許可もなく、男爵夫人であるダフネが話し掛けてもいいような相手ではないからだ。
「あらお父様! 私はもう子どもではなくてよ? アレクセイ様の前でそんなこと、おっしゃらないで。恥ずかしいわ……」
伯爵の言葉に不満そうな表情になるダフネ。
だがやっている事は実際躾のなっていない子どものようであるし、そこに反省の色は見えない。
「も……申し訳ございませんアレクセイ王弟殿下、娘は後できつく叱っておきますゆえ……」
これは不味いとオクレール伯爵は自分の後ろにダフネを隠し、その場を下がろうとする。
このままでは先ほど夜会を追い出された貴族達の二の舞を踏んでしまう事になる。
魔物の間引きの件で、嫌味の一つや二つは言いたかったがアレクセイに喧嘩を売るつもりはないのだ。
「ちょっとお父様、私まだアレクセイ様とお話がしたいの……! そこを退いて下さいませ」
「っあぁ、ダフネ……!」
だが親の心子知らずとはこの事なのか。
ダフネはオクレール伯爵の後ろから出て、アレクセイの隣にいたブランシェをダフネは押し退けるようにして隣に陣取った。
「え、あの……?」
突然押し退けられて困惑するブランシェをよそに、ダフネはアレクセイに上目遣いをして微笑み。
そしてアレクセイの腕に、自身の腕を絡ませて豊満な胸を押し付けた。
今までダフネにこうやって迫られて、落ちなかった男はいないのだ。
「アレクセイ様! 薔薇の庭でお会いした時から、ダフネは貴方にまたお会いしたかったんですよ」
「……退け」
「え? 『退け』? アレクセイ様……えっと……」
きょとん。
ダフネは何を言われたのか理解出来ない。
こうやってダフネが話し掛けてあげれば、今までの男達はみんな頬を緩ませて喜んだ。
だからきっとアレクセイもダフネが好意を寄せていると知れば、そこの地味な平民なんて直ぐに忘れて。
華やかで美しいダフネに夢中になるはず。
それなのにアレクセイには『退け』と、冷たい声で命令された。
「貴族としてのマナーを知らないどころか、娼婦紛いの事をこの夜会で私にするとは……喧嘩を売っているのか? フロベール男爵夫人」
「あの、えっ……と……私は、その」
凍えそうな冷たい目で見下ろされて、ダフネは慌ててアレクセイの腕から手を離す。
そんなアレクセイ達の様子に、夜会にいた貴族達はヒソヒソと噂話を始める。
今まで女の噂一つなかった王弟、それが夜会のど真ん中で痴情の縺れ。
暇な貴族達にとっては面白い話の種である。
そこへ。
「アレクセイ、これはなんだ? 余の所へなかなか挨拶に来ないと思って此方からやって来てみれば……なんだか騒がしいな?」
「……兄さん」
「国王陛下っ……!」
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