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30 怒りの初夜 ダフネ視点

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 私の結婚式。

 みんなに羨ましがられて、盛大に祝福されて結婚するはずだったのに。

 全て台無し。

 平民の癖に私より幸せになるだなんて、そんなこと絶対に許さない。

 アレクセイにエスコートされて大広間に入場したブランシェを、ダフネは睨み付ける。

 その瞳に宿るのは殺意。

 ブランシェが憎くて憎くて仕方がなかった。

 結婚式で盛大に祝われるはずだったのに、列席者を全て奪われて恥をかかされた。

 それに初夜も最悪だった。

『気持ちいいだろ、もうイっていいよ?』

 全然良くない。

 それに何度も何度も聞くな五月蝿い。

 この男絶対に下手くそ!
 
『エクトル様、ちょっと痛い……もっと優しく……』 

 ただ痛いだけ、初めてでもわかる。

 エクトルは下手くそで独り善がりだった。

『チッ……感度悪いな……』

 そして仕舞いには私のせい。

『痛いっ、待って……痛い!』
 
 痛い、痛い、痛い。

『っブランシェ……!』

『は……?』

 でも初夜だから。

 初めてだしこんなものかなと痛みを我慢していた行為の最中に、エクトルはブランシェの名を呼んだ。

 だから思いっきり引っ叩いてやった。

 そして初夜は途中で中断、すぐに謝ってきたけど絶対に許さないわ。
 
 伯爵令嬢の私を、あの平民女の代わりにするだなんてありえない。

 顔がいいから結婚してやっただけなのに、たかが男爵家の嫡男のくせに調子に乗りやがって。

 顔以外何の取り柄もない男が、この私を馬鹿にするだなんてそんなこと。

 許されるわけがないのよ。

 離婚してやるわ。

 それに顔ならアレクセイ王弟殿下の方が良いもの。

 お年がちょっと上で嫌だけど、この男に比べればそれぐらいなら我慢できるわ。

 王家の方だし公爵位だし、聞けば魔塔の魔塔主様だって言うし?

 伯爵家の私なら十分釣り合える。

 それにアレクセイ王弟殿下と私が結婚すれば、お父様が抱える問題も全て解決できる。

 もとはといえば、あの平民女が全部悪いのよ。

 こんな最低男を私に寄越して、自分はアレクセイ王弟殿下の隣で幸せそうに微笑んで。

 平民の癖に全部、この私から奪っていった。

 だからダフネは、ブランシェの姿に見惚れるエクトルの隣で殺意の炎を燃やす。

「……あら? あのブランシェとか言う方、今エクトル様を見ていらしたわ……まだ未練がおありのようでございますわね?」

 あの女はこっちを見てなんていない。

 でも馬鹿みたいにあの女をみて惚けるエクトルには、これで十分でしょう?

「えっ、私の事をブランシェが……?」

 ダフネの言葉にわかりやすく喜ぶエクトル。
 
「でも困りましたわ、エクトル様はぁ……ダフネのものですのに。浮気なんてしちゃ駄目ですわよ?」

 不貞、働いて頂けたら離婚がしやすくなる。

 そしてあの女には醜聞を。

 焼け木杭に火でもつけばいいのよ。

 そしたら私がアレクセイ王弟殿下を貰ってあげる。

 
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