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18 騒がしい貴族達
しおりを挟む何度自分達が縁談を持ちかけても。
美しいと評判のご令嬢が誘っても、全く見向きもしなかった王弟アレクセイ。
だがそんな男がとうとう結婚を決めたという。
だから暇をもて余した貴族達は、お相手はいったいどこのご令嬢かと興味津々で謁見の間に集まった。
そんな貴族達から向けられる好奇の視線に、ブランシェは晒される。
だけどブランシェは気にもとめず。
にっこりと微笑んで。
「国王陛下、お初にお目にかかります。フォール商会、商会長の娘ブランシェでございます。普段はアレクセイ様の下で働かせて頂いております」
「ふむ……話はアレクセイから聞いているよ、そなたが我が愚弟に結婚を決心させたブランシェか」
だがブランシェのその言葉に、驚きとざわめきが謁見の間に広がった。
王弟アレクセイが連れてきた相手は平民。
いくら臣下に下った身といえど、王家の血を引く人間が平民と結婚するなどあり得ない。
だから謁見の間に集まった貴族達は。
『そんなどこの馬の骨ともわからぬような平民女を嫁に貰うくらいならば、是非うちの娘を貰ってくれ』
『どうしてうちの娘を断っておいて、そんな平民なんかと……』
『まさか王は承認するつもりじゃないだろうな!? いくらアレクセイ様が側妃の子といえど……』
等と、好き勝手に言い始めた。
今は王がブランシェと話している最中だと言うのに、貴族達は騒がしく口々にそんな事を言う。
だからそんな騒がしい貴族達に、国王は。
「お前達、その減らず口を慎め! 今は余がアレクセイの婚約者と話をしている最中だ、黙らんならここから出ていかすぞ!」
そう貴族達を一喝した。
国王に一喝された貴族は罰が悪そうな顔で黙り込む、だが不満そうな顔を隠しもせずブランシェを睨みつけた。
そんな貴族達の様子に国王は嘆息をついて、ブランシェに再び向き直る。
「すまんなブランシェ、気を悪くさせただろう? 余はただアレクセイが選んだ女性を一度この目で見て、話をしてみたかっただけなんだが……」
気遣わしげに微笑んだ国王は、平民のブランシェ相手に謝罪の言葉を口にした。
国王はただ、弟のアレクセイが決めた相手に会ってみたかっただけで。
まさか謁見の間に入る事が許された貴族達が、こんな反応をするとは思ってもみなかった。
だってブランシェは平民だが魔塔の魔法使い。
一人前になれば爵位を得る事ができる特別な人間で、平民だと侮っていい人間ではない。
『アレクセイ様の下で働いている』
その言葉で普通は気付くはずなのに、目先の欲望に目が眩んだ貴族達は気付けない。
「過分なご配慮ありがとうございます。ですが私がどこの馬の骨かもわからない平民というのは事実でございますので……。それに国王陛下にお会い出来てブランシェは光栄でございます」
「そうか、ブランシェはいい子だな? アレクセイ、お前にも嫌な思いをさせてしまったな」
「そう思うのなら、ここに呼ばないで頂けますか? ですがまあ……この私と敵対したい貴族を見つける事が出来たので、それはそれで良かったですが?」
「またお前はそんな物騒な事を……まあ今回は貴族達が悪いから、余は何もいわんが」
「それはよかった。そろそろ誰のおかげで安心して生活できているの理解させなければいけないと思っていたんです。なので先ほど私の結婚を反対した貴族達の領地は魔物の間引き、今期は無しに致しましょう」
「おいアレクセイ? それはいくらなんでも……」
「元はといえばブランシェに会いたいと我が儘言った兄さんが悪いので、口出しは無しにしていただけます? それに何も言わないのでしょう?」
アレクセイはブランシェの隣で、結婚について口々に不満を垂れる貴族達を黙って観察していた。
自分の結婚について少なからず反対する者がいるだろうとは、アレクセイも思ってはいた。
だがこんなにも多いとは。
これは自分達の立場を理解させなければ。
……是非この機会に。
それは仕事量を減らす為でもあるし、ブランシェとの幸せな結婚生活の為には必要不可欠だから。
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