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8 婚約
しおりを挟むそして私ブランシェ・エルマレは。
本日めでたくも職場の上司であるアレクセイ様と、婚約する事に相成りました。
その婚約自体は、アレクセイ様が何処かから持ってきた書面に名前をサインするだけというとっても簡単なお仕事でした。
『魔塔のお仕事もこんなに簡単なら、どんなに素敵なことでしょう!』
と、アレクセイ様に言ったら叱られました。
冗談が全然通じないお堅いお方です。
そして肝心の結婚式はまだ未定。
王族の結婚には国王陛下の了承が必要らしく、今度王宮に謁見に行くと告げられました。
「私、平民なのですが!? 王様に謁見なんてそんな大それた事してもいいんですか……?」
国王陛下への謁見って、いったい何をするのでしょうか?
平民の私には想像する事すら出来ません。
「何も問題はない。婚約の許可は既に貰っているし、兄は私の結婚相手を一番最初に見てみたいだけだから……面倒な……」
「いや、でもですね……?」
「それに謁見の為のドレスは此方でもう用意している、だから今日の業務が終われば私の屋敷に来て試着してもらう予定だ」
あ、やっぱり謁見ってドレス着るのですね!?
でも今の私がドレスを着てもきっと似合わない。
最近あまり眠れませんでしたから目元にはくまが出来てしまって、肌はガサガサで髪もパサパサ。
そんな自分の姿を見るだけで気が滅入ってしまう。
よくこんな私にアレクセイ様は契約ですがご自分との結婚を提案されたなと思う次第です。
「あれ、でも……アレクセイ様って、王宮に住まれているんじゃないんですか? 王様の弟君ということは王子様ですよね、あれ……王弟殿下? あらら?」
アレクセイ様はもう王子様っていうお年ではないはずですが、どうなんでしょ?
「私はもう王宮には住んでいないよ、継承権も放棄してしまっているし。そして今の肩書きは公爵だね」
「あ、そうなんですね……?」
私はてっきり、アレクセイ様は王宮で暮らしているものだとばかり思っておりました。
まあ上司のプライベートなんて一切興味ありませんでしたから、それは仕方ありません。
でも昨日婚約破棄を愚痴って、今日婚約の手続きだなんて仕事の早い上司です。
この方はよっぽど周囲に結婚はまだかと急かさせるのが、嫌だったのでしょうか?
色々と気になる事は多々ありますが、私はアレクセイ様に言われた通りに行動するだけです。
平民の結婚とお貴族様の結婚は違い過ぎて私にはよくわかりませんから、アレクセイ様に全部お任せです。
うちの上司、使える上司で本当に良かった!
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