7 / 40
7 前途多難
しおりを挟む「ですがアレクセイ様、契約結婚って実際のところ……どうすれば宜しいのです? 契約書でも書くのでしょうか……」
お貴族様の契約うんたらかんたらって、ややこし過ぎて平民の私にはよくわかりません。
「契約内容を書面に残すのが一番確かなのだが、他人に見られる可能性があるからそれは出来ない。だから私を信用して貰う他はないな? ただしその契約が駄目になった場合困るのは君の方だから、先にある程度の財産を分与しといてやろう」
そして。
『財産は金貨と土地のどちらがいい?』
と、さもあたりまえにブランシェに聞いてくるアレクセイに迷いは一切なくて。
「え、そ……そこまでして頂かなくても大丈夫です! アレクセイ様は嘘を付くような方ではないと、存じておりますので……」
王族から金品貰うとか、なにそれ怖い。
オジサン避けになってくれるだけで十分です。
まあ王族をオジサン避けにするのも、どうなんだと思わないではないのですけど。
「それは私を信用し過ぎではないか? 人をもっと疑った方がいいぞ、ブランシェ」
こいつ大丈夫か?
アレクセイはブランシェがとても心配になった。
だが魔塔にブランシェがやってきて約五年、仕事は問題なく出来るし馬鹿ではなかった筈で。
「いえ、アレクセイ様は……嘘をつくのが面倒だからと、それを真実にするような方なので大丈夫です」
この人、嘘つくのも面倒とか言うもん。
仕事以外に興味示さない仕事中毒だもん。
それは五年間、アレクセイ様の直属の部下をやっていたブランシェが知った事実。
「ふむ……? 私の事がそこまでわかっているとは、いい契約相手だなブランシェは」
「いや、そこは出来れば……いい結婚相手だとおっしゃって頂けませんか? これでも結婚に夢や希望の一つくらいは一応あるのですよ」
「……そうか、では君はいい妻になりそうだなブランシェ? 女性として愛するつもりは全くないし、愛を求められても仕事が忙しいので困るが……夫としての最低限の義務くらいは果たそう」
なかなかに酷い事を言われたような気がしますけど、夫としての最低限の義務は果たしてくれるつもりらしいです。
きっと私が住む場所の一つくらいは、ご用意してくれるおつもりなのでしょう。
ですがもういっそのこと、魔塔の一室でも貸して頂けるだけで私は問題ないのですけど。
あまりお手数はお掛け致したくありません。
「あーはい。そうですか? では、あまり期待せずお待ちしております」
前途多難。
きっと結婚してはイケナイ男性と私は、結婚しようとしているのでしょう。
でもオジサンと結婚させられて、後妻で継母になる人生よりはよっぽどマシだと思うのです。
ほらアレクセイ様、顔だけはいいですし?
中身は仕事(魔法)馬鹿で、残念な方なんですけど。
悪い人ではありません、仕事中毒ですけど。
たぶん、大丈夫なはずです。
160
お気に入りに追加
1,809
あなたにおすすめの小説

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。
カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。
そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。
ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。
意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。
「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」
意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。
そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。
これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。
全10話
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。
※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。
※小説家になろう様にも掲載しています。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません
みみぢあん
恋愛
祖父の葬儀から帰ったアデルは、それまで優しかった夫のピエールに、愛人と暮らすから伯爵夫人の部屋を出ろと命令される。 急に変わった夫の裏切りに激怒したアデルは『離婚してあげる』と夫に言うが… 夫は裕福な祖父の遺産相続人となったアデルとは離婚しないと言いはなつ。
実家へ連れ帰ろうと護衛騎士のクロヴィスがアデルをむかえに来るが… 帰る途中で襲撃され、2人は命の危険にさらされる。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまで~痩せたら死ぬと刷り込まれてました~
バナナマヨネーズ
恋愛
伯爵令嬢のアンリエットは、死なないために必死だった。
幼い頃、姉のジェシカに言われたのだ。
「アンリエット、よく聞いて。あなたは、普通の人よりも体の中のマナが少ないの。このままでは、すぐマナが枯渇して……。死んでしまうわ」
その言葉を信じたアンリエットは、日々死なないために努力を重ねた。
そんなある日のことだった。アンリエットは、とあるパーティーで国の英雄である将軍の気を引く行動を取ったのだ。
これは、デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまでの物語。
全14話
※小説家になろう様にも掲載しています。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる