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第一章 二度目の国外追放
12 無償の好意
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騎士達に傅かれ『命に代えましても守る』なんて、ロマンチックに言われても。
『なにいってんの、命は大事にしとけ?』くらいの返事しか、出来なかった。
……それはまぁ。
私がひねくれているだけで、普通の女の子ならきっとあの状況は嬉しいんだろう。
そして、嫌々だが王都に着いてしまったので。
「自由だー! 景気づけに、一杯飲みにいくか!」
と、王都の街に繰り出そうとすれば。
「街になんていけないわよ!? これから国王陛下に報告があるんだから……」
「じゃあ、行ってらっしゃい!」
「なに言ってるの? 貴女も王宮に行くのよ、国王陛下にご挨拶しなきゃ……」
「そういうのはやる気が皆無なので。これをどうぞお納めください」
机の中でゴミと一緒に眠っていた特権の首輪を、エディの手にそっと握らせる。
「……この、クソガキ」
「あはは、男が出てるよ?」
そうして国王への謁見を回避した私は。
現在王都の一番豪華な宿の特別室で、錬金術を行うべく準備中だ。
「まずは……」
簡易的ではあるけれど白い大きな布を床に広げまして、ガラスのビンにインクと私の血液を入れるべく腕をナイフで景気よくスパっと!
……した所で。
後ろで見学をしていたエディに、なにやってるのかと腕を掴まれてめちゃくちゃ怒られた。
「なっ……馬鹿! 貴女なにして!?」
「錬成陣描くために、それを執り行う人間の血液とかを混ぜ混もうとしてるだけだよ。そうしないと出来ないの」
「だからって貴女ねぇ? 腕ちょっと貸しなさい」
「大丈夫だよ? このくらいの傷は別に大したことないし……」
「『癒やせ』」
エディが一言、その言葉を口にすれば。
温かな光が私の腕を包み、傷が消え去った。
「あ、傷が……」
「それがいくら錬金術の為とはいえ、自分の身体ちょっとは大事にしたらどう?」
「……魔法って便利だね、ありがと」
「貴女のエリクサーと違って、足は生えないけどね?」
指にそのインクを付けて錬成陣を描いていく。
ゆっくり丁寧にそれでいて滑らかに、完全に一発勝負のとても繊細な作業。
そして素材は先日のライカンスロープの爪に水や塩、市場で購入した新鮮な薬草などを大きめの鍋に無造作に入れる。
私が適当にぽいぽい入れるので、エディは不安そうに見てくるが手に持った感覚で重さがわかるから問題ないのである。
それにこのライカンスロープを使ったレシピは特に隠匿する必要もないくらい簡単なもので、イクスの錬金術師なら誰でも作れてしまうから見せても問題ない。
「よいしょ……」
鍋を錬成陣の上に置く、そうすると。
「え、それ火にかけるんじゃないの?」
「そんな面倒なことはしない。これは、こうする」
指でそっと陣に触れる。
そうすれば描いたばかりの錬成陣から青い光が溢れ出す、その光は美しく何度見ても心が奪われる。
そして錬成陣から溢れ出した青い光は、霧となって拡散し消え去った。
「綺麗ね……」
「これで錬成は終わり」
そしてその大きな鍋の中には、少量の滑らかな透明の液体が出来上がっていな。
「それで、これはなに?」
「ん? ああ、ポーション」
大きな鍋の中の液体を小さなガラスの蓋つき瓶に入れながら答える、ポーションは早く瓶に入れないと気化して消えてしまう。
「ポーションって?」
「この間私が飲んだエリクサーのショボいやつ?」
「まぁ、すごいじゃない!」
「ショボいやつだよ? 手足は生えないし? 内臓くらいなら潰れてもまぁ治るし、骨バラバラくらいならギリいけると思うけど」
「十分すごいわよ!」
「そ? じゃあ、はいどーぞ? エディにあげる」
「え?」
「……命に代えられても困るし。まぁ最終的に自分の薬で助かったけど、助けてくれたお礼? つまりは賄賂ってやつかな?」
「こんな貴重なもの貰えないわ! それに、そんなのが欲しくて貴女を守るわけじゃ……」
「あー……うん、そういうめんどいのいいから」
ポーションが入った瓶をテーブルに置いて、寝台の中にいそいそと逃げ込む。
「んじゃ、疲れたから寝るー! 晩御飯の時間になったら起こしてねー? はい、おやすみ」
「カレン」
利害関係のみで成り立つ関係の方が気楽でいいし、無償の好意なんてものは私なんかが貰ってもいいものじゃない。
それに気付いてしまった。
自分が好意を抱いてしまっているということに。
怖かったはずなのに、今は恐怖よりもその感情の方が遥かに強くて。
だから私はエディに抱き始めてしまった淡い恋心に、そっと蓋をしてこの感情を忘れることにした。
騎士達に傅かれ『命に代えましても守る』なんて、ロマンチックに言われても。
『なにいってんの、命は大事にしとけ?』くらいの返事しか、出来なかった。
……それはまぁ。
私がひねくれているだけで、普通の女の子ならきっとあの状況は嬉しいんだろう。
そして、嫌々だが王都に着いてしまったので。
「自由だー! 景気づけに、一杯飲みにいくか!」
と、王都の街に繰り出そうとすれば。
「街になんていけないわよ!? これから国王陛下に報告があるんだから……」
「じゃあ、行ってらっしゃい!」
「なに言ってるの? 貴女も王宮に行くのよ、国王陛下にご挨拶しなきゃ……」
「そういうのはやる気が皆無なので。これをどうぞお納めください」
机の中でゴミと一緒に眠っていた特権の首輪を、エディの手にそっと握らせる。
「……この、クソガキ」
「あはは、男が出てるよ?」
そうして国王への謁見を回避した私は。
現在王都の一番豪華な宿の特別室で、錬金術を行うべく準備中だ。
「まずは……」
簡易的ではあるけれど白い大きな布を床に広げまして、ガラスのビンにインクと私の血液を入れるべく腕をナイフで景気よくスパっと!
……した所で。
後ろで見学をしていたエディに、なにやってるのかと腕を掴まれてめちゃくちゃ怒られた。
「なっ……馬鹿! 貴女なにして!?」
「錬成陣描くために、それを執り行う人間の血液とかを混ぜ混もうとしてるだけだよ。そうしないと出来ないの」
「だからって貴女ねぇ? 腕ちょっと貸しなさい」
「大丈夫だよ? このくらいの傷は別に大したことないし……」
「『癒やせ』」
エディが一言、その言葉を口にすれば。
温かな光が私の腕を包み、傷が消え去った。
「あ、傷が……」
「それがいくら錬金術の為とはいえ、自分の身体ちょっとは大事にしたらどう?」
「……魔法って便利だね、ありがと」
「貴女のエリクサーと違って、足は生えないけどね?」
指にそのインクを付けて錬成陣を描いていく。
ゆっくり丁寧にそれでいて滑らかに、完全に一発勝負のとても繊細な作業。
そして素材は先日のライカンスロープの爪に水や塩、市場で購入した新鮮な薬草などを大きめの鍋に無造作に入れる。
私が適当にぽいぽい入れるので、エディは不安そうに見てくるが手に持った感覚で重さがわかるから問題ないのである。
それにこのライカンスロープを使ったレシピは特に隠匿する必要もないくらい簡単なもので、イクスの錬金術師なら誰でも作れてしまうから見せても問題ない。
「よいしょ……」
鍋を錬成陣の上に置く、そうすると。
「え、それ火にかけるんじゃないの?」
「そんな面倒なことはしない。これは、こうする」
指でそっと陣に触れる。
そうすれば描いたばかりの錬成陣から青い光が溢れ出す、その光は美しく何度見ても心が奪われる。
そして錬成陣から溢れ出した青い光は、霧となって拡散し消え去った。
「綺麗ね……」
「これで錬成は終わり」
そしてその大きな鍋の中には、少量の滑らかな透明の液体が出来上がっていな。
「それで、これはなに?」
「ん? ああ、ポーション」
大きな鍋の中の液体を小さなガラスの蓋つき瓶に入れながら答える、ポーションは早く瓶に入れないと気化して消えてしまう。
「ポーションって?」
「この間私が飲んだエリクサーのショボいやつ?」
「まぁ、すごいじゃない!」
「ショボいやつだよ? 手足は生えないし? 内臓くらいなら潰れてもまぁ治るし、骨バラバラくらいならギリいけると思うけど」
「十分すごいわよ!」
「そ? じゃあ、はいどーぞ? エディにあげる」
「え?」
「……命に代えられても困るし。まぁ最終的に自分の薬で助かったけど、助けてくれたお礼? つまりは賄賂ってやつかな?」
「こんな貴重なもの貰えないわ! それに、そんなのが欲しくて貴女を守るわけじゃ……」
「あー……うん、そういうめんどいのいいから」
ポーションが入った瓶をテーブルに置いて、寝台の中にいそいそと逃げ込む。
「んじゃ、疲れたから寝るー! 晩御飯の時間になったら起こしてねー? はい、おやすみ」
「カレン」
利害関係のみで成り立つ関係の方が気楽でいいし、無償の好意なんてものは私なんかが貰ってもいいものじゃない。
それに気付いてしまった。
自分が好意を抱いてしまっているということに。
怖かったはずなのに、今は恐怖よりもその感情の方が遥かに強くて。
だから私はエディに抱き始めてしまった淡い恋心に、そっと蓋をしてこの感情を忘れることにした。
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