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酒場のビール

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 部屋の少し高い位置に置かれていたランプに、ジョナサンが火をつける。すると暖かい、ロウソクよりも明るい光が辺りを照らす。


今 ジョナサンは向かい合ってイスに、僕はベッドに腰掛けて話をしていた。



しばらく様子を見てくれていたけど
『もう大丈夫』と雪弥が声をかけると、ジョナサンは詳しく何があったのか聞きたがったのだ。
この世界に来た時の事、自分のことを順に話し、それからいくつか問いかけられた。




.......................


『モヤのようなもの?』

『うん、透明だったから、よく分からないんだけど。周囲と自分の間になにか隔たりがある感覚があったんだ。』


雪弥は困ったような顔をしていた。
ジョナサンが考えるように顎に手をやる。
目もとまで来る髪をかき上げて、ふぅ、と息をつくとこちらに視線をやって


『明日またよく考えてみよう。
もう遅いな。遅くまで引き留めて悪かった。

今日はよく休むんだ、何か足りない物があれば言ってくれ。話してくれてありがとう。』


目が合うとふっと優しく微笑む。目元が優しく下がるから、急に親しみやすい表情になる。

この世界に慣れないこともあって、疲れから眠気がおそってくる。

とりあえず、ジョナサンがいい人でよかったな。


ベッドは一つしかなかったので、一緒に使った。

ジョナサンは横向きになると、さっさと目を瞑ってしまう。雪弥は仰向けに横になると、その顔を少しながめてから天井に視線をもどす。

シーツの質感が心地よかった。静かな空間に、耳が何か音はないかと無意識に探ってしまう。こんなに音のしない夜は、元の世界じゃありえない。

ぼんやり瞬きをしながら、木製の天井が味があって良いな、て思ってたら寝てしまっていた。

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