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酒場のビール
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ロウソクの明かりに照らされていても、やはり部屋を照らすには足りないものだ。
雪弥は表情のわかりにくい相手の様子を伺ってみる。
ジョナサンは雪弥の身体を支えてベッドに腰掛けさせると、横に自分も腰掛け雪弥が話し出すのを待ってくれている様だ。
『ジョナサン、疑ってたんじゃないの?』
いきなり態度が変わった相手に対して、少し警戒が抜けないみたいだ。ちょっとぎこちなく問いかけた。
するとジョナサンはふっと笑顔をみせた。
『もう、疑ってないさ。少し確かめただけだ。君が無害な事はすぐに分かったから。』
少し首を傾けて、考える様子をみせてから続けて説明する。
『人ってのは、偽っていても咄嗟の反応はなかなか隠せないと思ってな。それなりに訓練されている者だったりすると、殺気を感じたとたん反応するはずなんだ。緊張による筋肉の収縮とか。反撃や抵抗があればと思ったんだが。』
途端、こちらを見てニヤリと笑う。
『用心するんだな。雪弥』
目の奥がキラキラとと輝く瞳。
なんだか、むかつく。それなのに、かっこいいなんて思ってしまった。経験もあって力もある、歳上の男。雪弥はこっちの世界じゃ知らない事ばかりだし、かないっこないんだ。
『それはそうと、なぜ鏡を見たがったんだ?』
ジョナサンは、少し目を伏せてから
今度は真剣な目を向けて聞いた。
雪弥は鏡を手に取った時を思い返して、寂しい様な感覚を覚えながら答える。目線は迷う様に不安をかかえながら、自分の手を見つめていた。
『僕は、』
『僕は、たぶんここの世界とは違う所から来たんだ。』
ジョナサンの瞳が伺うように、言葉をうながした。その目に疑うような負の感情が見られなかったため、雪弥は続ける。
『今まで共に生きてきた人たちと、普通に生活してた世界がなくなってしまったんじゃないかと混乱して。』
上手く言葉にできず、考え混む。
『もし知らない世界に来たら、周りに僕を知ってる人は1人もいないでしょう?』
そうだな、とジョナサンが相槌をくれる。勇気づけられながら
『つまり、僕は自分を、証明できるものを無くしてしまったんだ。僕は、もとの世界は存在すらしていなかった物なんじゃないかって考えてしまって。本当は、夢だったんじゃないかって。混乱してたから』
だんだん声が震えて、声も小さくなってゆく。
また、目線を落としてしまう。
今でも少し、怖くて肩が震える気がする。
すごく不安になる。
ジョナサンは、僕が見つめている 握り込んだ両手に自分の左手をそっと乗せてくれる。一緒に共感してくれている様な姿に、少し安堵する。
『もし、自分の顔すらも変わっていたら。本当に僕が無くなってしまう感じがしたんだ。怖くて。今まで何も考えず平和に生きてきたけど、大切じゃない人生だったって訳じゃないから。』
考えてから、ぐるぐると不安は増すような辛さを与えてくる。一日中、知らない世界をさまよって見たけど元の世界はどうなったんだろう。
そうか、寂しいんだ。と雪弥は思った。
無くしてしまった物に気がついて寂しいのだと。
トサッと優しく頭を抱え込まれる。横にもたれる様な大勢になって、ジョナサンの胸におでこをくっつける。
『少しこうしてるといい。気にするな』
雪弥は少し驚いたが
疲れに、心地よい低音の声が染み込んでいく様だった。あまり干渉して来ない優しさも。
そこには何もかも受け入れてくれる様な説得力があったから、
何も考えずに身をゆだねて、甘えることにした。1人で抱えるには大きすぎたのかも。
心に居座る不安はぐるぐると去ってはくれなかったが、辛くはなかった。
雪弥は表情のわかりにくい相手の様子を伺ってみる。
ジョナサンは雪弥の身体を支えてベッドに腰掛けさせると、横に自分も腰掛け雪弥が話し出すのを待ってくれている様だ。
『ジョナサン、疑ってたんじゃないの?』
いきなり態度が変わった相手に対して、少し警戒が抜けないみたいだ。ちょっとぎこちなく問いかけた。
するとジョナサンはふっと笑顔をみせた。
『もう、疑ってないさ。少し確かめただけだ。君が無害な事はすぐに分かったから。』
少し首を傾けて、考える様子をみせてから続けて説明する。
『人ってのは、偽っていても咄嗟の反応はなかなか隠せないと思ってな。それなりに訓練されている者だったりすると、殺気を感じたとたん反応するはずなんだ。緊張による筋肉の収縮とか。反撃や抵抗があればと思ったんだが。』
途端、こちらを見てニヤリと笑う。
『用心するんだな。雪弥』
目の奥がキラキラとと輝く瞳。
なんだか、むかつく。それなのに、かっこいいなんて思ってしまった。経験もあって力もある、歳上の男。雪弥はこっちの世界じゃ知らない事ばかりだし、かないっこないんだ。
『それはそうと、なぜ鏡を見たがったんだ?』
ジョナサンは、少し目を伏せてから
今度は真剣な目を向けて聞いた。
雪弥は鏡を手に取った時を思い返して、寂しい様な感覚を覚えながら答える。目線は迷う様に不安をかかえながら、自分の手を見つめていた。
『僕は、』
『僕は、たぶんここの世界とは違う所から来たんだ。』
ジョナサンの瞳が伺うように、言葉をうながした。その目に疑うような負の感情が見られなかったため、雪弥は続ける。
『今まで共に生きてきた人たちと、普通に生活してた世界がなくなってしまったんじゃないかと混乱して。』
上手く言葉にできず、考え混む。
『もし知らない世界に来たら、周りに僕を知ってる人は1人もいないでしょう?』
そうだな、とジョナサンが相槌をくれる。勇気づけられながら
『つまり、僕は自分を、証明できるものを無くしてしまったんだ。僕は、もとの世界は存在すらしていなかった物なんじゃないかって考えてしまって。本当は、夢だったんじゃないかって。混乱してたから』
だんだん声が震えて、声も小さくなってゆく。
また、目線を落としてしまう。
今でも少し、怖くて肩が震える気がする。
すごく不安になる。
ジョナサンは、僕が見つめている 握り込んだ両手に自分の左手をそっと乗せてくれる。一緒に共感してくれている様な姿に、少し安堵する。
『もし、自分の顔すらも変わっていたら。本当に僕が無くなってしまう感じがしたんだ。怖くて。今まで何も考えず平和に生きてきたけど、大切じゃない人生だったって訳じゃないから。』
考えてから、ぐるぐると不安は増すような辛さを与えてくる。一日中、知らない世界をさまよって見たけど元の世界はどうなったんだろう。
そうか、寂しいんだ。と雪弥は思った。
無くしてしまった物に気がついて寂しいのだと。
トサッと優しく頭を抱え込まれる。横にもたれる様な大勢になって、ジョナサンの胸におでこをくっつける。
『少しこうしてるといい。気にするな』
雪弥は少し驚いたが
疲れに、心地よい低音の声が染み込んでいく様だった。あまり干渉して来ない優しさも。
そこには何もかも受け入れてくれる様な説得力があったから、
何も考えずに身をゆだねて、甘えることにした。1人で抱えるには大きすぎたのかも。
心に居座る不安はぐるぐると去ってはくれなかったが、辛くはなかった。
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