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酒場のビール

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雪弥があわてて返事をすると、男は優雅に笑った。






 しかしその時、武装した胴衣のこすれる音がした。


背の低い男が数名 荒々しい態度でこちらにやってくる。



『"△$×××@#!"』

男ではなかった、ゴツゴツした肌の怪物だ。喋るたび ぶるる、と言うように息の振動で口の器官が揺れ不快な音が生じる。フードの中から正体が現れるとともに何かを喚いて怒っているようだった。店内の明かりに肌がてらてらと反射しているから、肌は湿っているのかもしれない。


雪弥の隣にいた男はマントを翻してくるりとそちらに振り向いた。こちらからはしかくとなって男の表情は見えなかったが


『"●&××#!!"』
低い声で鋭く一言はなって、何かをスッと怪物たちの方に投げる。

結構なスピードで投げられたそれは怪物の1人の右手にしっかり受け取られた。


ガッと上げられたその右腕が少し、空に留まるが

ニヤリと牙が口からのぞいて、腕は下ろされて


握られた金貨に怪物たちは立ち去るようだ。





















 振り返った男の顔はさっきまでと同じく落ち着いていた。

『すまない、もう大丈夫だ。』





男が店主に謝罪を軽く述べてから注文を済ませ、こちらを見つめる。
首を少しかしげながら見つめる仕草が印象にのこる。

『突然声をかけて失礼した』


差し出された手を握り返す。


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