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酒場のビール

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 僕は、意識を無くしていたようだったが

倒れていたわけではなかった。



ゆっくりと意識がもどってきて、気づけば

山のふもとから街を見下ろしていた。

自分の右手は側にあった木に添えられており、

左手にはまっすぐな木の枝を

杖がわりに持っていた。



 街の建物はほとんどが白壁で、クリーム色の温かい印象を受ける。

屋根は赤いレンガのような、

瓦礫に似た形の物で覆われておりほとんどが

暖色系で、少し薄い柔らかい色合いだ。



 肩からは生地のしっかりとした物でできた

深緑色のマントをはおり、腰のベルトには剣が重く結え付けられていた。


『え. . . . . 、さっきまでそこに. . . . . 』

動揺と混乱に思わず独り言がもれる。

ずっと昔から知っている風景のような感覚に、
違和感がある。ぼくは雪弥で、さっきまで

サンダルに膝までのジャージ、Tシャツという
ラフな格好をしていた。


呑気に夏の気候を楽しみ、帰路について。
心地よい風と温かい空気の香りを今も思い出せる気がする。

ぞぞぞっと背中に冷たさが走る。雪弥は今の
状況とのギャップに混乱し、恐怖した。




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