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ある犯罪者の話。

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 俺はどろりとした醜い願望が身体の奥底から湧き出るのを感じた。

 連日の残業でくたくたに疲れていた俺に、電車の席を譲った青年に対して。

 俺は青年を最初、女と勘違いした。真っ黒の髪はいまどき珍しく染めた様子がない。高い鼻、花びらの落ちたような唇。くりくり大きいがどこか鋭さのある目が気まぐれ猫のようだった。意識が高そうな高嶺の花系の美人顔。しかしにこりと笑い、つり革を持ち俺の前に立った青年は従順そうな犬、親しみやさすい可愛らしさを感じさせる。

 俺がその欲望を抱いたのは、青年が何気なく咳払いした時だった。




    「んんっ、ん」

 まるで喘いでいるような、淫らな声だった。

 うたた寝をしてしまっていた俺は思わず青年を見上げる。青年は喉が痛いようで、本当にただの咳払いをしていただけだった。



 俺はその瞬間、青年がその淫らな声で俺のモノを一心不乱にフェラしている映像が脳内に映し出された。俺のペニスで涎を垂らしながらよがり狂う裸体がまるで、見たことがある様に、フラッシュバックみたいに流れたのだ。

 その目は俺の陰茎の大きさに涙をいっぱいに溜めて苦しむだろうか、

その口はもっともっと、と淫乱に挿入をねだるだろうか、

 その喉は俺の熱いスペルマを美味しいと飲み干すだろうか、

 その手を縛って、脚を大きく開いて。

 俺はそれを何故か、全部可能だと確信していた。

 駅に停車し、青年が降りていくのを見て俺はあとをついていく。そこはいつも俺が利用している駅とおんなじだった。


 騒がしい繁華街を抜けると、住宅マンションが立ち並ぶ区域に入っていく。

 青年はまだ俺の存在に気付いていないようだった。時折「飲みすぎたかなぁ」「いっぱい飲まされたもんなぁ」という独り言が聞えてくる。のどの痛みは酒やけだろうか。そのかすれた声さえも、甘く、くらくらする。

エロい咳払いをして青年は歩く。俺はそれについていく。

  ――――………

都心部だというのに街灯がまばらだなと思ったら、公園にさしかかっていた。夜の公園は大人の俺でも気味が悪い。

「ふぅ、しゅんっ!」

 俺の前方で青年が前につんのめって可愛らしいくしゃみをした。俺は少しだけびっくりして体を跳ねさせたら地面に落ちていた木の枝を踏んでしまった。無音の闇夜にパキッという音は大きく響く。今度は青年が身体をびくりとさせた。青年が肩を抱いて恐る恐る振り返るのが分かった。

「来いッ!!!!」

「ゃっ、むぅ!」

 青年が振り返る前に、俺は覆いかぶさり口を塞いだ。

 青年はいやいやと首を振るが声を荒げようとはしない。俺は青年を抱え込んで、犯す場所を探し、公園内に入った。

 公衆便所は汚い。ベンチも今の時期、枯葉を退けるのが面倒くさい。

 ふと目に入ったのが、ジャングルジムだった。

 どうせなら、徹底的に犯してやる。

 俺は青年をジャングルジムの前の地面に投げた。

「ぅっ……ぅ」

 殴り掛かってくるかと思ったが、青年は大人しく倒れていた。泣いているわけでもない。青年は黙っていた。

 うつむいていた青年の顔を、髪を掴んで上げさせる。その顔を見て俺は驚愕した。

 青年は微笑みを浮かべていた。

 拒絶、苦痛、憎悪でもなく。愛しみさえ感じさせるような笑みを浮かべていた。

 てっきり屈辱に耐えた表情をしていると思っていた。しかし青年は正反対の感情を以て俺を見ていた。

 俺は思わず青年をもう一度地面に叩き付ける。唸ったが、やはり青年は黙って倒れる。

 なんだこいつ……

 気持ちが悪かった。今から受ける仕打ちが分かっていないのか。

 まるで、好物を貰うために大人しく待つガキのようだ。

 だがしかし

 気味悪く感じたが俺の欲望がおさまったわけではない。



 俺は再度青年を起き上がらせると、細く白い腕をひっつかまえ、頭の上でジャングルジムに後ろでに縛る。俺がネクタイを使ってキツく縛られる間も青年は一つも抵抗することなかった。

 俺がズボンのチャックをおろし、そり立つオスを出すと、青年は身体を起こそうとする。

 そしていうのだ、

「おじさん、それ、それぇ、…く、はやくぅ…っ」

 涙を流して口をパクパクとさせて。



 なんと……フェラがしたくてたまらないらしい。

 なんなんだ、こいつは……

 あまりに切なそうに泣くので俺が近づいてやると、青年はぐすんと泣いてからゆっくり口を開き、目を閉じて、ぱくんとくわえた。

「ふぅ、んぅ、ぅ」

 その舌技は恐ろしく巧かった。舌先で亀頭を責め、歯も器用に使う。本人はまるで絶品の料理を味わうようにくわえている。赤ん坊が母親の乳首から一生懸命乳を吸っているようでもあり、おしゃぶりをしているようでもあった。しゃぶりながら合間に「おいひい、おいひぃ」と泣いて言う。見れば青年は服越しから見えるほど勃起していた。



 俺が絶頂に達するのはすぐだった。

「うっ…」 

快楽が爆発するとでる白濁を青年は飲む。

ごくんごくんと動く喉は、まるで神の雫を注がれたように神々しくも見えた。

青年は暫く先っぽ舐めたり余韻を味わっていたが、俺が抜くとすごく残念そうな顔をした。その時についた残精もぺろりと舌でなめる。

 青年は視線をもどかしそうに動かす。みぎひだりに、ななめうえ、したに。しかしその視線は何度も俺の股間で止まる。俺がだまっていると、青年は唇を噛み締め、涙をためた上目で俺を見上げてきた。

「……」

 青年は何も言わない。ただ黙って俺を上目づかいに見る。だから俺も黙っている。

 それを見て青年はますます涙を浮かべる。

 ちょっと可哀想に思って近づいてやると、青年は俺のペニスに頬ずりをしてきた。

愛おしそうに顔をするつけてくる。しながら俺をちらりと伺うが、俺は無視する。更に悲痛な表情で青年はペニスにちゅっと口づけをした。そして唾液引く口を開け、

「……れ、ぃ」

「なんだ。聞こえないぞ」

「ぅ……さぃ…っ」

「全然聞こえないな」

「これ、ください……っ!ゅ、受精させてぇ、おれにぃっ、ちゃく、床させてぇっ」









「はぅ、んぅ、んん」

 分かってはいたが青年の尻孔は俺の指をすんなり受け入れた。



 青年は初物ではなかった。

 しかもかなり経験を積んだ手練れ、だ。

 尻の中でにくにくしい蠕動が俺の指をきゅうとしめる。ちぎられそうだった。ペニスを挿入した時の快感への期待が高まる。前立腺とやらをかすめると青年は腰が大きく跳ねた。

「だめ、いやそこ、っあんああああ」

「どうしてかな。君の可愛いここはすごいことになってるよ」

 限界まで張りつめた青年のペニスを、触るとたったそれだけで

「ぅやあああああっ!」

 目を見開いて射精した。勢いよく溜め続けた精液が放たれる。

「ぅ、ぅう…」

 腰をがくがくとさせ、青年は快感に震える。

「指じゃ足りないんだね。エッチな体だな、酔いそうだ。…もっと大きなものがほしいかい?」

 甘い声で囁くと、涙にまみれた顔が嬉しそうに笑うのが見えた。そしてこくり、と頷く。

俺が下肢に手を這わすと、撫でるように指先を遊ばせると青年は面白いようにびくりびくりと反応した。

 俺の主張した長大なものを見て青年はうっとりと目を細める。欲しい、いれて、はやくぅと甘えた声で強請ってくる。なめかしい水音が無駄に闇夜に響いた。

「あぁう、はぅうっ」

 侵入した巨大なものに、青年は縛られた腕をぶんぶんと振る。俺は無視して、じゅぼじゅぼぼと凶器を青年の奥へ沈ませる。

「ぁああっん!ぁん、あぁーっ」

 錯乱しているような、発狂しているような喘ぎ声だった。

 俺が深く大きく動き始めると最早絶叫になった。

「いいっ!あぅうっ!いいよおお」

 青年は号泣していた。頭を壊れるほど振り、絶えず喘ぐ。

 青年の中は極楽だった。肉質が吸い付くように離さない。名器というやつか。俺は痺れた。

「やらぁ、やらょおおっ」

「ここかい? ここが好きなんだね」

 青年は放尿しているように潮吹きを繰り返す。その度にぎゅうぎゅうと締めつげが強くなり、達してしまいそうだ。奥を、もっとこの青年の最奥に到達したい。俺は凶器をぐぐと突き刺す。

「ぅあ、ぅぁんっ、やあああ」

「出すよ。いっぱい受精するんだよ!」

「ひぃぃっ、ああああああんん!!!」

 最奥に到達して漕ぎざ身に動かせば絶頂などすぐだった。

 俺は力が抜け青年の上に倒れ込む。

 青年はぴくぴくと快感に痙攣していた。



 俺がベルトを締めていると、青年は「あの、」と声を掛けてきた。

 俺が振り返ると、ジャングルジムに縛り付けられたままの青年の困惑した顔が見える。

「どうしたんだい?」

「これ…外してください」

「だめだよ」

 俺が地面に置いた鞄の土を払いながらいうと、更に青年は困惑したようだった。


「暫くそうしてるといいよ。


          ――――――また誰かに犯してもらいなさい」



 俺は返事を聞かずに、闇夜へと歩きだした。

 数秒後。

 確かに「はい……っ」という喜々とした声が聞えた。


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