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第一話:目覚め
しおりを挟むあのね、私実は気付いてるの
ほら、君がいったこと。
覚えてる? 私は薔薇であなたは百合だって でもね、そんなことはないんだって知って欲しいの 私は百合じゃないし、あなたは薔薇でもない ただそれだけなんだよ だからさ、これからもずっと一緒にいようよ そしていつかまた出会えたなら 今度はきっと違う花を咲かせてみせよう たとえそれがどんなに歪なものであっても構わないから 二人で一つの花を咲かそうよ それはきっととても美しいものに違いないからそして私はB美の前で手を合わせた。
「……ん」
ふと目が覚める。
どうやら私は机の上で寝ていたらしい。
いつの間に眠ってしまったのか分からないけど、外を見るともう真っ暗だった。
時計を確認すると午後7時を過ぎていた。
私は慌てて帰り支度をして教室を出た。
廊下に出ると辺り一面暗闇に包まれていて、窓から差し込む月明かりだけが頼りなく足元を照らしているだけだった。
こんな時間に校舎に残っている生徒なんていないだろうと思っていたけれど、一階にある美術室の前を通ると中から灯りが漏れていることに気付いた。
(誰かいる……?)
私は恐る恐る扉を開けるとそこには一人の女子生徒が立っていた。
彼女はこちらを振り向くと驚いた表情を見せた後、笑顔を浮かべた。
「あら、A子ちゃん!」
B美は私の顔を見るなり嬉しそうな声を上げた。
「まだ残ってたんだ?」
私が聞くとB美は少し困ったような顔をした。
「うん……。ちょっとね」
歯切れの悪い返事をするB美に違和感を覚えながらも私はそれ以上何も聞かなかった。
それから私たちは他愛もない話をして盛り上がった。
だけどしばらくすると話題も無くなって沈黙が続いた。
その空気に耐えられなくなった私は思い切って聞いてみた。
「ねえ、最近何かあった?」
私の問い掛けにB美は首を傾げた。
「どうして?」
「うーん何というか元気がないように見えたから」
私は心配そうに言った。
「えへへバレちゃったかなぁ」
とB美は苦笑いしながら頭を掻いた。
私は「まあねぇ~あれだけ毎日一緒だったのに4日も急に来なくなったら流石におかしいと思うねぇ」
「ごめんなさいね。でもどうしても言い出せなくて……」
申し訳なさそうにするB美を見て私は思わず笑ってしまった。
「いいよいいよ!気にしないで!」
「ありがとう……」
私たち二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「ところでさ、今更なんだけど一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
唐突に私が切り出した。
「いいよぉ~何でも聞いてぇ~」
相変わらず間延びした口調で言う。
「あのさ、B美って元気になった?」
私は真剣な眼差しで聞いた。
「……」
B美は答えなかった。
本当は分かってるはずなのに認めたくない気持ちがあったからだ。
そんなB美の様子を見た私はため息をついた。
「やっぱりね。薄々感づいてはいたけどぉ?w」
私は冗談めかすように言って見せたけど内心では動揺していた。
「なんで、教えてくれなかったの?」と私が言う
「だってA子ちゃんが自分で気付かないと意味無いと思ったからさ。」
「どういうこと?」
私は理解出来なかった。
「つまり、そういう事だよ」
「分かんない」
私は不満げに口を尖らせてみる。
「今は分からなくても大丈夫だよ。そのうち分かる日が来るから」
そう言ってB美は私に近づき私の背中を軽く押し、
「もうすぐ、7時半だからそろそろ帰ろっか。あっもちろん一緒にね!!」
「うん、そうだね。一緒に帰ろう。」
私達は手を繋いで学校を出た。
帰り道、私はふと空を見上げた。
そこには満天の星が輝いていた。
私は立ち止まり、
「綺麗……」
と呟いた。
するとB美が、
「うわぁ、ホントだね!でも、半過ぎたよ!」
「げっ!早く帰らないとお母さんに怒られる!」私は慌てて走り出す。
「待ってよー!」
後ろの方でB美の声が聞こえた気がするけどきっと気のせいだろう。そう思って私は、そそくさと帰宅した。
次回へ続く
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