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エピソード4 流す
しおりを挟むこの感情の行き所に私は迷っていた。
気づいていたけど見ないふりが出来ていた少し前。考えちゃう頭を友達とか勉強とかで上書きできてたんだけどな。
きっと季節のせいだね。
寒いから人肌が恋しくなるんだろうね。
お店のせいだね。
バレンタインの特設コーナーが私の頭を恋愛脳にさせるんだろうね。
季節のせいにして感情を流して〝こんな時期か〟と悩みながら材料をかごに入れる。
友達とのチョコレート交換のために友チョコは作るけど。
友チョコを〝けど〟って否定して君の顔を浮かべて、それなのに本命チョコを渡すことを考えると胸がぎゅっと詰まる感覚がする。
どうしようか考えながら、ラッピングのコーナーでクリアバックと1つだけ箱をかごに入れた。
君が毎日しているマフラーと同じ色の箱は深みのある青色をしていて、お母さんになんてごまかそうなんて考えながら会計を済ませる。
お菓子作りは少し苦手だ。不器用だからチョコレートで汚れるし、形は歪になっちてしまう。
でも今年は、せめて君に渡すチョコ――箱に入れる分は綺麗にできたらいいな。
そんなことを考えながら、本命チョコを渡すつもりでチョコレートを流す私がいた。
――隠し味にこの恋を溶かして。
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