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第19話 今(1)
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翌日の10時。
私の部屋にやってきたのは大夢先生だった。
「佐々木さん失礼します。お身体の調子いかがですか?」
歩夢先生より少しだけ低くしっとり落ち着いた声に、私は少しだけさみしく思う。
私にとっていつもの歩夢先生と会える時間がとっても大切だったと実感させられる。
「大丈夫です」
「それならよかったです。今日は僕、テレビの出演に呼ばれていて、15時くらいに帰ってくるのでそれからご実家に向かいましょう。
それと、最初に来た時と同じマークシートを再度、回答してみてください。これが終わったら、安藤看護師に渡してくださいね。
そのあと、歩行練習などを安藤看護師が計画してくださっていたので、それに従ってください」
「わかりました」
こうして大夢先生は例のアンケートを残して部屋を出て行った。
私はアンケートを見て、ため息をつきながら回答していく。
『いま、不安なことはありますか?
1:ある 2:少しだけある 3:ほとんどない 4:ない/思いつかない』
私はこの質問を〝1〟と答えるしかなかった。
あの時と感じている不安とは違うのに……。
あの時は、漠然と未来が怖かったから、その未来で起こることに不安を感じていた。
でも今は、看護師になれるのか不安なのだ。それ以外の不安は感じていない。
むしろ、なるためにどれくらいの時間と努力が必要だろう、と頭の中で考えてしまうほど本気なのだ。
埋め終わったマークシートを渡すために私はナースコールを押した。
少しして香奈恵さんが部屋にやってくる。
「佐々木さんこんにちは。どうしました?」
「マークシートをお願いしたくて」
「はい。お預かりするわね」
香奈恵さんにマークシートを渡すと、香奈恵さんは腕につけた時計を見てこう言った。
「今日は佐々木さんに自分でご飯を取りに行ってもらおうと思うんだけど、まだ少し早いから、歩夢研修医の病室にでも行きますか?
朝、大夢先生と様子を見に行った時に、『たまにでいいから麗桜ちゃんの顔が見たいなぁ』と言ってたのよ」
まさかの提案に私の心は跳ね上がるようにうれしくなった。
「行きたいです!」
「じゃあ行きましょうか」
私の部屋を出て、歩夢先生の部屋へと歩く中、香奈恵さんはこう言った。
「さっき言った朝の時にね、歩夢研修医がうっかり『麗桜ちゃん』って言っちゃったから大夢先生が怒ったのよ。少し怖くて、でも喧嘩してる2人が見れたのがうれしかったの」
「うれしい……?」
「そう。歩夢研修医は酸素マスクをつけているし、病状は安定していないから……。そういう患者さんが和気あいあいとした会話をしてくれた時って、すごく安心して見ているだけで安心するのよ」
「そう、ですか……」
香奈恵さんの言葉から、歩夢先生とあと何回会えるのか、私は嫌でも考えてしまった。
歩夢先生によって作られた私の〝今〟は、歩夢先生にとって大事な〝今〟なのかもしれない。
吸ってそのままの息をいつ吐けばいいか分からなくなるほど、私は〝今〟の複雑な状況を理解してしまった――。
私の部屋にやってきたのは大夢先生だった。
「佐々木さん失礼します。お身体の調子いかがですか?」
歩夢先生より少しだけ低くしっとり落ち着いた声に、私は少しだけさみしく思う。
私にとっていつもの歩夢先生と会える時間がとっても大切だったと実感させられる。
「大丈夫です」
「それならよかったです。今日は僕、テレビの出演に呼ばれていて、15時くらいに帰ってくるのでそれからご実家に向かいましょう。
それと、最初に来た時と同じマークシートを再度、回答してみてください。これが終わったら、安藤看護師に渡してくださいね。
そのあと、歩行練習などを安藤看護師が計画してくださっていたので、それに従ってください」
「わかりました」
こうして大夢先生は例のアンケートを残して部屋を出て行った。
私はアンケートを見て、ため息をつきながら回答していく。
『いま、不安なことはありますか?
1:ある 2:少しだけある 3:ほとんどない 4:ない/思いつかない』
私はこの質問を〝1〟と答えるしかなかった。
あの時と感じている不安とは違うのに……。
あの時は、漠然と未来が怖かったから、その未来で起こることに不安を感じていた。
でも今は、看護師になれるのか不安なのだ。それ以外の不安は感じていない。
むしろ、なるためにどれくらいの時間と努力が必要だろう、と頭の中で考えてしまうほど本気なのだ。
埋め終わったマークシートを渡すために私はナースコールを押した。
少しして香奈恵さんが部屋にやってくる。
「佐々木さんこんにちは。どうしました?」
「マークシートをお願いしたくて」
「はい。お預かりするわね」
香奈恵さんにマークシートを渡すと、香奈恵さんは腕につけた時計を見てこう言った。
「今日は佐々木さんに自分でご飯を取りに行ってもらおうと思うんだけど、まだ少し早いから、歩夢研修医の病室にでも行きますか?
朝、大夢先生と様子を見に行った時に、『たまにでいいから麗桜ちゃんの顔が見たいなぁ』と言ってたのよ」
まさかの提案に私の心は跳ね上がるようにうれしくなった。
「行きたいです!」
「じゃあ行きましょうか」
私の部屋を出て、歩夢先生の部屋へと歩く中、香奈恵さんはこう言った。
「さっき言った朝の時にね、歩夢研修医がうっかり『麗桜ちゃん』って言っちゃったから大夢先生が怒ったのよ。少し怖くて、でも喧嘩してる2人が見れたのがうれしかったの」
「うれしい……?」
「そう。歩夢研修医は酸素マスクをつけているし、病状は安定していないから……。そういう患者さんが和気あいあいとした会話をしてくれた時って、すごく安心して見ているだけで安心するのよ」
「そう、ですか……」
香奈恵さんの言葉から、歩夢先生とあと何回会えるのか、私は嫌でも考えてしまった。
歩夢先生によって作られた私の〝今〟は、歩夢先生にとって大事な〝今〟なのかもしれない。
吸ってそのままの息をいつ吐けばいいか分からなくなるほど、私は〝今〟の複雑な状況を理解してしまった――。
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