先生、私は間違っていますか……?

雨宮 苺香

文字の大きさ
上 下
13 / 29

第13話 出かけたい

しおりを挟む
「じゃあ、出かけましょうか」


 翌日の昼前、歩夢あゆむ先生が私にそう言った。もちろん、私の健康を確認してからだ。
 私はベッドから降り、病室から出ようとしたとき、私は膝から崩れ落ちた。
 ――足が震えて立っていられないのだ。


麗桜うららちゃん……!? 大丈夫!?」


 歩夢先生は私の隣に膝をついて私の顔を覗く。
 どんな顔をしていたのだろう。
 歩夢先生の次の言葉から、今の自分が一体どんな状態なのか不安になった。


「顔色が悪いね……。調子悪かったのかな、ごめんね」


 悲しそうな歩夢先生の顔に「そんなことないです」と言いたかった。でもそれを言う前に、歩夢先生は私の体を持ち上げた。

 !?!? お姫様抱っこされている……?


「せんせっ……!?」

「今ベッドまで運ぶから」


 そう言って歩夢先生は私の体をベッドまで運び下した。


「麗桜ちゃん、どこか悪い?」

「ううん」

「じゃあ、何か不安なことあった? 外はまだ怖い……?」


 外。外か……。
 私を殺した場所。世界で幸せみたいな顔をした人たちがあふれている場所。成功が確立されていない場所。……歩夢先生に会えない場所。
 考えた。外のこと。
 嫌だ。気持ち悪い。怖い。怖い。怖い怖い怖い……。


「はい……」


 私の頬に暖かい水が流れた。


「そっか。そうだよね。
 ごめんね、気づいてあげられなくて」

「いえ……。私もこんな風になるとは思っていなかったので。
 すみません」


 私が涙を袖で拭くと、歩夢先生は私の頭を撫でた。


「謝らなくていいんだよ。麗桜ちゃんはすごく頑張っているし、僕が麗桜ちゃんと外に出たかっただけだから。
 だからもっと回復して、怖くなくなったら一緒に外に出よう?」

「……はい」


 涙がまた流れた。せっかく拭いたのに、さっきよりも多く流れて、あごから掛布団の上にしたたれた。


「じゃあ、約束。指切りしよう」


 歩夢先生が差し出してきた小指に、私は手を伸ばし小指を重ねる。


「また挑戦しようね。今日はゆっくり休んで」

「はい。ありがとうございます」


 涙でびちゃびちゃになった顔に、歩夢先生がティッシュペーパーを渡してくれる。


大夢ひろむ先生に今の現状を報告してくるからゆっくりしてて。また戻ってくるから」


 私は「はい」と言いながらティッシュペーパーで顔を拭き、ふぅ、と一息ついた。
 窓の外に出てみたい、歩夢先生と一緒なら、と思いながら――。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...