先生、私は間違っていますか……?

雨宮 苺香

文字の大きさ
上 下
1 / 29

第1話 枯れた世界

しおりを挟む
 2020年冬。私は生きている。生きて生きて息して恋している。

 しかし、半年前。夏だったあの頃は私の半分が死んでいた。枯れかけていた……。
 そう、日本も。



 ──────



 日本を枯らしたのはある病気だった。


 発症場所:日本(1例目死亡日:2018.11.11)

 症状:初期はうつ病と同症状であり、気持ちが沈み、生きることに対しての嫌悪感に包まれる。
    生きることを諦めた途端、病状は急激に悪化。極端に無気力化が進み、枯れるように静かに死へと向かってしまう。


 病名:うつびょう


 この病気は未だ、解明されていない。ましてや治る方法も解明出来ていないのだ。
 ただ1つ言えることとすれば、人が死んでいる。
 死んで死んで死んで死んで、世界が雨に打たれている。



 ──────



 うつ枯れ病が流行したと考えられる要因として、急激な世界恐慌が挙げられていた。
 景気が悪くなり、失業者が増え、大人たちがうつ病になりやすかった。生活が不便になると、少しでも稼ごうとバイトや内職を増やし、質のいい睡眠は取れなくなる。そして脳が休まらないことにより、よくない事ばかり考えてしまう。
 そう、テレビの中の人が考察を広げていた。
 もっと早くに考察してくれればよかったのに……。

 うつ病は精神病。だから死ぬことはない。身体は元気である。
 以前の甘い考えのせいでこの世界が壊れた。そう言っても過言ではない。
 亡くなってしまった人達はたまたまだ、と半年ほど放置され、悲劇の連鎖がしばらく続いていたから──。

 でもある医師が連鎖を断とうと立ち上がった。


「人が死んでいるんです。そこには何かしらの理由がきっとあるはずです……!」


 1年ほど前の言葉。世界を動かした彼は河野こうの 大夢ひろむという精神科医であった。その日から昼のニュース番組にひっぱりだこな有名な先生だ。テレビで彼を見ない日はないだろう。
 彼はうつ枯れ病の原因解明のために仕事をしていて、都内の総合病院で働いている。
 それだけじゃない。
 私のでもあったのだ。

 そう、私はうつ枯れ病患者である。

 ここまでこんなにも意志を持って話している私は無気力ではない。うつ枯れ病患者の私がなぜこんなにも元気かって? それはね、たぶん恋をしたから。恋をしてしまったから……。
 でもその相手は大夢先生じゃない。


 ──私はふと時計を見上げた。
 もうすぐ10時になる。私の好きな人がこの部屋にやってくる時間だ。私は深く息を吸った。
 嘘を、つかなくちゃ……。




 ******



 足を運んでくださった皆さん、ありがとうございます! 雨宮苺香です🍓
 今作は「先生、私は間違っていますか……?」というタイトルで恋愛作品を公開させていただきます。
 「私はいつか、先生みたいに……。」と同じ世界観を書いていますが、全く違った内容で書いていきます。

 作品は「私はいつか、先生みたいに」と変わらず、世界を困らせているあの病を意識し、世界の暗さを表現しながらも、そこから少女がどう生き、どんな選択をするのか。それがどんな結果をもたらすのか、という世界に縛られない生き方を描こうと思っています。
 まだまだ感染が爆発している感染症。
 精神病は感染せずとも、世界が暗ければしていくものです。

 だからこそ私は、世界を少しでも照らしたい。
 若き私が立ち上がることで周りの人々が1歩前に歩き出すような、そんな物語を創りたいと思います。

 私なりにメッセージを込めながら、毎日更新していくので、どうぞ最後までお付き合いください*.+゚
 また、「私はいつか、先生みたいに……。」と比べながら、そして楽しんでもらえたら嬉しいです🌸
 お気に入りの登録や感想もお待ちしております! モチベーションにも繋がるので気軽によろしくお願いしますね!!
 (更新時間:しばらくは20時前後と21時前後になります)

 それでは続きをお楽しみください!
 ↓↓↓

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

処理中です...