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第八話 軽率
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「お前は自分の命を握ってる相手に『友達になりましょう』なんて言われて、簡単に『いいえ』なんて言えるの?」
その言葉に、どこか眠たげだったアンルティーファははっとした。
持ち主登録されたものの意思に反することをすればすぐさま心臓へと強い電気が走り激痛を伴わせ、ひどいと死んでしまう、そんな支配の首輪をつけて持ち主登録しているのに『はい』以外言えるはずもない。これは言葉にしない命令に等しくなってしまうのだと、アンルティーファは気付いた。同時に、フランにとてもひどいことをしている、してしまったという罪悪感が募る。もし本当に友達になりたいのならば、アンルティーファはフランに暗証番号を教えたうえで自由になった彼女に言わなければならないのに。
「……ごめんなさい、フラン。軽率だったわ」
「そうよ、お前は支配者らしく」
「わたし、王都に着いたら必ずフランを自由にするから。そうしたら、またお友達になってくれるかどうか聞くわね」
「なに、言って」
「おやすみなさい、フラン」
言いたいことだけ言うと、もぞもぞ毛布の中を蠢いてまたと小さく寝息を立て始めてしまったアンルティーファに。フランは困惑気味に顔をしかめて星空を見上げた。町で上げる煙のない穏やかな星空は一人でいたときと変わらない、静かに美しい黒い宝石箱をのぞき込んでいるようだった。
その言葉に、どこか眠たげだったアンルティーファははっとした。
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