21 / 29
「入学式とビデオ」2
しおりを挟む
面会には一度も行っていない。
母親と姉は会いに行ったらしいが、自分には会って話す事も思い付かない。
兄貴自体がそんな事を求めるような人間ではないと思っていたし、其の時の自分には必要性を感じられなかった。
だが出所してから笑い話として聞いたのは、夜の長さが辛く。
就寝時に流れる歌を聴いて泣けたらしい。
実戦としての強さに拘る彼等と、自分の考える強さは異なり。
横暴で強いと言われている者程どこか足りない部分を無理に埋めようとしている気がして、
自分は同じようにはなりたくなかった。
そんな彼等の一員にも力ではない優しき強さを持った人が一人だけいて、
いつも其の人だけは片付けを手伝ってくれたり。
何かしら理由を付けては殴ろうとしてくる彼等から、間に入り冗談で和ましたり。
やれ紅茶を入れろだとか。
やれラーメンを作れという、小学生の自分には無茶な彼等の要求に困る自分を然り気無く助けてくれた。
其の人は彼等の拘る強さの順番では、上位ではなかったが。
体格や力でもなく。
ケンカの強さでもない。
当時の自分は彼等からは弱いと言われるような、そんな優しい人間に憧れていた。
もちろん強さの定義に正解なんてないだろう。
後の自分も彼等と同じような強さに拘っていたし、其の頃は自分と彼等の目指す方向が違ったというだけで。
そんな相変わらずの彼等も卒業していく。
さすがにお礼参りみたいな事は無かったが、
其れでも卒業式には入所していた者の付き添いで警官が数名来ていて。
式が終わると獄中に戻るなんてのが何人か居た。
彼等は競いあうようにふざけ騒ぎ、受け取った卒業証書を校長の前で破り捨てていく。
担任は泣いていたが、こんな状況では何の涙か解らない。
少しだけ安心出来る部分が有るとすれば、そんな彼等も卒業すれば多少バラバラになるという事位だろう。
当然全員が同じ高校には行けないし、すでに働き先が決まっている者もいる。
この一時の卒業も彼等にとっては、これから先に何度も経験する卒業の一つにしかすぎない。
いったい何から卒業したのか解らない位、何度も繰り返されるあらゆる壁の。
大人の世界に近づけば近づく程、腕力なんてのは役に立たないのは言うまでもなく。
本人が望まなくても成長を求められる。
当然すぐに人は変われないから高校中退したり仕事を辞めたりして、
中学の頃と同じように集まり悪さを繰り返す。
少しずつ大人の仲間入りに成功した者だけが会わなくなるようになっていき、其れが全員になるまで。
決して輝かしい訳ではないが駆け抜けるような日々。
其の時は辛く長いと感じていた時間も思い返せば短く感じる。
今では彼等の殆どが自分と同じように結婚していて、仕事をこなし嫁と子供を守る普通の生活を送っている。
学歴がどうとか資格がどうとかの悩みを抱え、社会的に生きる為の強さを探しながら。
勿論そんな日常との闘いは大して自分も代わり映えしない。
生前の自分は長い残業時間で家に居る事は少なかったし、断れない休日出勤で息子の卒園式にすら出れなかった。
仕事は嫌いではないが、そんな会社の体制や待遇には不満が有った。
会社の為に生きているわけではないと。
殆ど使えない有給なのに買い取りも無く消化されるとか、
君は仕方ないよと笑っていたが自分は自分に納得していなかった。
たいして努力しなかった過去や、もう変えようの無い現状に。
死んでしまった今では今更だが、
だからこそこんな姿でも娘の入学式という晴れ舞台に立ち会う事が出来て自分は喜んでいた。
他の家族を見ると二階からビデオを回し手を降る父親や、出来るだけ近づき大きな姿を写真に残そうとする母親。
どの子供達も普段は着ないであろう、綺麗だが動きづらそうな洋服を身に纏い。
誰もが子供達の記念すべき一日を大切に想い、逃さないように真剣なのだ。
君も同じように沢山写真を撮っていたし、そのうえ更にビデオも回している。
一人二役にしてしまった事を悔やむが、自分だって其所に居ない訳ではない。
昼間は気付かれもしないと解っていても全力で手を降り、聞こえないと解っていても大声で名前を呼ぶ。
後悔している暇なんて無い、二度と無い時間は刻々と過ぎていき終わってしまうのだから。
人目が気にならないような子は壇上に並んでいても両親に手を振ったりしているが、
そんな余裕の無さそうな我が娘は緊張して肩を何度も揺らしている。
そんな感じでも新入生の名前を呼ばれた時は、皆と同じように
大きな声で返事も出来ていて入学式は無事に終わっていった。
大きくなるにつれて知りたい言葉が増えていく子供の質問は答えるのが難しい。
子供はどこから生まれるの?とか、不倫って何?とか。
コウノトリがなんて空想的な答えでは簡単に納得はしないし、あまり適当な事も言えない。
きっと自分が子供の頃も同じだっただろう。
其の日の夕方。
我が家では少しばかり豪勢な晩御飯に上機嫌な子供達は、分けあっているのに取り合うような早さで食べ終わり。
逸る気持ちのまま娘は買って貰ったばかりのピンクのランドセルを何度も背負い、
踊るように回転しては自慢気に見せ付ける。
其れを見た自分は大袈裟に手を叩き、娘の成長を祝う。
「もう何回も見たし」
つまらなさそうに息子は口を挟むが「何回見ても可愛いから良いの」
そう言って娘と笑顔を見合わせる君は幸せそうに笑っている。
きっと少しほっとしたのだろう。
突然旦那を亡くし、一人で育てなくてはいけなくなった子供が小学生になったのだから。
子供達の笑顔を見ていると心の底から思う、幸せは分け合うものだと。
怒る事が多いより、笑う事が多い方が良いし。
嫌いなものが多いより、好きなものが多い方が幸せだと思う。
大切な人が幸せを感じている時、其れを見ている人にも幸せを分け合い。
互いに共有する事で、足し算だったのが掛け算のように変わっていく。
自分が今そう感じているように、きっと君も同じ気持ちだろう。
そんな珍しく笑い声の絶えない中「ほら、綺麗に撮れてる」と
君は思い出したように今日録画した入学式を再生する。
家だから亡くなってしまった自分に見せたかったかも知れないが、ランドセルを背負ったまま覗き込む娘が呟く。
「お父さんも早く帰ってきたら良かったのに」
そんなつもりじゃなかっただろう君は回答に困るが、娘は気にもしてなさそうに走り回り追いかけ合っている。
入学式や卒業式。
結婚式や新築祝い。
これから先も記念すべき大切な一日は幾らでも有るだろう。
まだ自分が存在し続けているか解らない大切な日が。
今だけは自分の姿が解りづらくて良かったと思える。
悲しみは自分一人が良い。
分け合う事なんか無く。
再生されたままの入学式からは春の歌が聞こえる。
誰もが想い描く明日の希望を願うように。
歌に乗り娘が自慢気に見せるランドセルを背負う姿は可愛く、大げさに手を叩いた。
どんな風に見えているのか解らない自分の姿を補うように。
いつまで存在出来るか解らない自分のはかなさを代弁するように、
流れ続けるビデオには風に舞い散る桜が映っていた。
ゆっくり大人になってほしい。
たとえ今日散ってしまっても翌年も咲く桜のように。
母親と姉は会いに行ったらしいが、自分には会って話す事も思い付かない。
兄貴自体がそんな事を求めるような人間ではないと思っていたし、其の時の自分には必要性を感じられなかった。
だが出所してから笑い話として聞いたのは、夜の長さが辛く。
就寝時に流れる歌を聴いて泣けたらしい。
実戦としての強さに拘る彼等と、自分の考える強さは異なり。
横暴で強いと言われている者程どこか足りない部分を無理に埋めようとしている気がして、
自分は同じようにはなりたくなかった。
そんな彼等の一員にも力ではない優しき強さを持った人が一人だけいて、
いつも其の人だけは片付けを手伝ってくれたり。
何かしら理由を付けては殴ろうとしてくる彼等から、間に入り冗談で和ましたり。
やれ紅茶を入れろだとか。
やれラーメンを作れという、小学生の自分には無茶な彼等の要求に困る自分を然り気無く助けてくれた。
其の人は彼等の拘る強さの順番では、上位ではなかったが。
体格や力でもなく。
ケンカの強さでもない。
当時の自分は彼等からは弱いと言われるような、そんな優しい人間に憧れていた。
もちろん強さの定義に正解なんてないだろう。
後の自分も彼等と同じような強さに拘っていたし、其の頃は自分と彼等の目指す方向が違ったというだけで。
そんな相変わらずの彼等も卒業していく。
さすがにお礼参りみたいな事は無かったが、
其れでも卒業式には入所していた者の付き添いで警官が数名来ていて。
式が終わると獄中に戻るなんてのが何人か居た。
彼等は競いあうようにふざけ騒ぎ、受け取った卒業証書を校長の前で破り捨てていく。
担任は泣いていたが、こんな状況では何の涙か解らない。
少しだけ安心出来る部分が有るとすれば、そんな彼等も卒業すれば多少バラバラになるという事位だろう。
当然全員が同じ高校には行けないし、すでに働き先が決まっている者もいる。
この一時の卒業も彼等にとっては、これから先に何度も経験する卒業の一つにしかすぎない。
いったい何から卒業したのか解らない位、何度も繰り返されるあらゆる壁の。
大人の世界に近づけば近づく程、腕力なんてのは役に立たないのは言うまでもなく。
本人が望まなくても成長を求められる。
当然すぐに人は変われないから高校中退したり仕事を辞めたりして、
中学の頃と同じように集まり悪さを繰り返す。
少しずつ大人の仲間入りに成功した者だけが会わなくなるようになっていき、其れが全員になるまで。
決して輝かしい訳ではないが駆け抜けるような日々。
其の時は辛く長いと感じていた時間も思い返せば短く感じる。
今では彼等の殆どが自分と同じように結婚していて、仕事をこなし嫁と子供を守る普通の生活を送っている。
学歴がどうとか資格がどうとかの悩みを抱え、社会的に生きる為の強さを探しながら。
勿論そんな日常との闘いは大して自分も代わり映えしない。
生前の自分は長い残業時間で家に居る事は少なかったし、断れない休日出勤で息子の卒園式にすら出れなかった。
仕事は嫌いではないが、そんな会社の体制や待遇には不満が有った。
会社の為に生きているわけではないと。
殆ど使えない有給なのに買い取りも無く消化されるとか、
君は仕方ないよと笑っていたが自分は自分に納得していなかった。
たいして努力しなかった過去や、もう変えようの無い現状に。
死んでしまった今では今更だが、
だからこそこんな姿でも娘の入学式という晴れ舞台に立ち会う事が出来て自分は喜んでいた。
他の家族を見ると二階からビデオを回し手を降る父親や、出来るだけ近づき大きな姿を写真に残そうとする母親。
どの子供達も普段は着ないであろう、綺麗だが動きづらそうな洋服を身に纏い。
誰もが子供達の記念すべき一日を大切に想い、逃さないように真剣なのだ。
君も同じように沢山写真を撮っていたし、そのうえ更にビデオも回している。
一人二役にしてしまった事を悔やむが、自分だって其所に居ない訳ではない。
昼間は気付かれもしないと解っていても全力で手を降り、聞こえないと解っていても大声で名前を呼ぶ。
後悔している暇なんて無い、二度と無い時間は刻々と過ぎていき終わってしまうのだから。
人目が気にならないような子は壇上に並んでいても両親に手を振ったりしているが、
そんな余裕の無さそうな我が娘は緊張して肩を何度も揺らしている。
そんな感じでも新入生の名前を呼ばれた時は、皆と同じように
大きな声で返事も出来ていて入学式は無事に終わっていった。
大きくなるにつれて知りたい言葉が増えていく子供の質問は答えるのが難しい。
子供はどこから生まれるの?とか、不倫って何?とか。
コウノトリがなんて空想的な答えでは簡単に納得はしないし、あまり適当な事も言えない。
きっと自分が子供の頃も同じだっただろう。
其の日の夕方。
我が家では少しばかり豪勢な晩御飯に上機嫌な子供達は、分けあっているのに取り合うような早さで食べ終わり。
逸る気持ちのまま娘は買って貰ったばかりのピンクのランドセルを何度も背負い、
踊るように回転しては自慢気に見せ付ける。
其れを見た自分は大袈裟に手を叩き、娘の成長を祝う。
「もう何回も見たし」
つまらなさそうに息子は口を挟むが「何回見ても可愛いから良いの」
そう言って娘と笑顔を見合わせる君は幸せそうに笑っている。
きっと少しほっとしたのだろう。
突然旦那を亡くし、一人で育てなくてはいけなくなった子供が小学生になったのだから。
子供達の笑顔を見ていると心の底から思う、幸せは分け合うものだと。
怒る事が多いより、笑う事が多い方が良いし。
嫌いなものが多いより、好きなものが多い方が幸せだと思う。
大切な人が幸せを感じている時、其れを見ている人にも幸せを分け合い。
互いに共有する事で、足し算だったのが掛け算のように変わっていく。
自分が今そう感じているように、きっと君も同じ気持ちだろう。
そんな珍しく笑い声の絶えない中「ほら、綺麗に撮れてる」と
君は思い出したように今日録画した入学式を再生する。
家だから亡くなってしまった自分に見せたかったかも知れないが、ランドセルを背負ったまま覗き込む娘が呟く。
「お父さんも早く帰ってきたら良かったのに」
そんなつもりじゃなかっただろう君は回答に困るが、娘は気にもしてなさそうに走り回り追いかけ合っている。
入学式や卒業式。
結婚式や新築祝い。
これから先も記念すべき大切な一日は幾らでも有るだろう。
まだ自分が存在し続けているか解らない大切な日が。
今だけは自分の姿が解りづらくて良かったと思える。
悲しみは自分一人が良い。
分け合う事なんか無く。
再生されたままの入学式からは春の歌が聞こえる。
誰もが想い描く明日の希望を願うように。
歌に乗り娘が自慢気に見せるランドセルを背負う姿は可愛く、大げさに手を叩いた。
どんな風に見えているのか解らない自分の姿を補うように。
いつまで存在出来るか解らない自分のはかなさを代弁するように、
流れ続けるビデオには風に舞い散る桜が映っていた。
ゆっくり大人になってほしい。
たとえ今日散ってしまっても翌年も咲く桜のように。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
白い男1人、人間4人、ギタリスト5人
正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます
女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。
小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
六華 snow crystal 4
なごみ
現代文学
雪の街、札幌で繰り広げられる、それぞれの愛のかたち。part 4
交通事故の後遺症に苦しむ谷の異常行動。谷のお世話を決意した有紀に、次々と襲いかかる試練。
ロサンゼルスへ研修に行っていた潤一が、急遽帰国した。その意図は? 曖昧な態度の彩矢に不安を覚える遼介。そんな遼介を諦めきれない北村は、、
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる